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ゼロックススーパーカップ トリコロールは帰ってきた。数々の栄光に輝く舞台となった、この国立競技場に新ユニフォームのマリノスが登場したとき、なんともいえない感慨が湧いてくる。リーグチャンピオンとして堂々たる入場だ。 賞金がかかっているとはいえ、プレマッチ。仕上がり具合を確認すると共にリーグ開幕を祝う気持を盛り上げる。そんな試合の前にいきな演出があった。リーグ、天皇杯、それぞれの優勝シーンを大型ビジョンに上映しようというのだ。リーグ序盤のゴールシーンが映し出された時点で、トリコロールのゴール裏は、もう大喜びだ。ここまま、数秒待てば、山西が目測を見誤り、久保のヘッドがゴールネットを揺らすシーンが見れる。ゴールの度に映像に合わせて歓声があがる。そして、磐田のユニフォームが映し出されたときに、誰からともなくうなり声が始まる。 「オォーーーーーーーーーーーーーーーーオレ!」 大拍手。直接叩きのめした相手を前にして、こんな大きな画面で歓喜のシーンを見ることが出来る喜び。 だが、その後は見たくない。磐田の優勝を見たくないのもあるが、なにしろ惨敗の天皇杯だ。 「終了!」 「見たくない!」 「っていうか天皇杯を無かったことにしろ!」 という言葉が飛び交うが、そこに拍手と笑いと歓声が起きる。2本のトリコロールのビッグフラッグが大型ビジョンを隠そうとしているのだ。もちろん、下のほんの一部が隠れるか隠れないかの無駄な抵抗。ほとんど影響がないレベルだ。どっと湧く。磐田のゴール裏もブーイングする(奥へのブーイングと比べれば数分の一くらいの音量だ)。遅れて飛び込んできたシミズポもたった一人。素直に随って旗を降ろす。シミズポも笑っている。なんともサッカーらしく、そしてプレシーズンらしい余興を終え選手は入場してきた。 攻めが遅い。これは、ボランチの中西の展開力のせいなのか、安が下がりすぎていて、しかも久保がどっしりと中央にかまえなかったせいないなのか、磐田の中盤の守備が勝っていたせいなのか、とにかく、昨年のようなダイレクトプレーもダイレクトのパスも見られない。どうしても、持ち直すことが多い。特に前半は思うように攻められない。 3バックには相性がよい。それだけだろうか。 序盤に目立ったのはユキヒコだ。試合開始早々に入れたクロスは精度を欠いたものではあったが、積極的な意気込みが感じられた。手薄なサイドを攻め上がり何本もクロスを入れる。ゴールライン付近までえぐるプレーもある。左サイドから奥がカウンターで攻め上がったときには、フリーの右サイドを疾走しゴール前に現れる。これは、昨年の序盤の勢いがあったときにユキヒコだ。 「いいぞ!」 「今日は良いじゃんユキヒコ!!」 素直に賞賛の声が飛ぶ。 守備でも貢献する。波戸との藤田のマーク受け渡しが上手くいかず、藤田に持ち込まれるシーンで、ギリギリの守備をしたのは波戸ではなくユキヒコ。リーグも期待が持てる。 反対に藤田は、一人で異次元だ。レベルが違う。ちょっとしたボールの動かし方だけでも唸らせるものがある。この男が戻ってきただけで磐田の戦力は数段アップだ。ただし、その攻めさえ堪えれば、裏のスペースは絶好の攻めどころ。それだけに、波戸の守備に物足りなさを感じた者も多い。 幻のゴールはあったものの前半は緩い。 「時間が進むが遅いなぁ。」 何度か漏れた言葉。真剣勝負のタイトルマッチでないこともあるが、ワクワクするような展開や、素早い攻撃が見れなかったことも原因だ。だから、中西の守備の寄せの早さを誉めたり、松田の相変わらずの身体能力の強さを確認したり、遠藤の10番っぽいドリブル(取られることが多いが)に注目したり、という小さな喜びを感じるくらいであって、大きな歓声をあげたり、驚きに飛び跳ねたりということがめったにない。ユキヒコのクロス、安の左上隅を狙ったシュート、その他になにがあったか。 「見せ場だぞ!山西!!」 なにないフリーでボールを持つ山西に決定的なパスミスを促す声が飛ぶ。 後半にはいるとトリコロールがこちらに攻めてくる、はずなのだが、ゲームは向こうで進む。 「ちっとはこっちでやってくれよ。」 そんな声が飛ぶが劣勢だ。だが、得点は思わぬ事で生まれる。 「故意ではなかった。」 そう福西はインタビューで答えた。故意の方がまだ良い。無意識に、あのような肘打ちをするようであれば、あまりに危険だ。テレビではきちんと映っていなかったし、磐田側からでも解りにくかったであろうが、トリコロールのゴール裏からはよく見えた。ちょうど、プロレスでロープに振って戻ってくる相手に水平に出した肘をぶつけていくような鋭角的なエルボーパット。ディックマードクやダスティーロデスが得意にした、『毒針殺法』というやつだ。このあまりに凄い角度の肘打ちには、私たちの反応は、ブーイングとか歓声とかではなかった。ただプっと吹き出してしまったのだ。その後は、驚きの声。 「お前、何やってんだよ!」 「明日ハッスル2に出るのか?」 「そんなの無いだろ。」 「ジーコジャパンで教わったのか!?」 「いいもの見せてもらっちゃったなぁ。」 ユニフォームを突きだしゴール裏に誇らしげに笑顔でアピールする。 奥は磐田では見せなかった歓喜のパフォーマンスを、磐田戦で見せる。何度目のことだろう。因縁を力に変える選手。PKは芸術的。ゴール裏から見て左サイドの枠の外に向かっていき、カーブをかけて戻ってくる。サイドネットをかすってゴールイン。 「美しい!!」 ため息が出るような弾道だ。その美と磐田の沈黙、そして奥の笑顔がトリコロールのゴール裏を、ただの一点ではない興奮の歓声に変える。頭上に掲げた両手を握り突き上げる。主将であり磐田のゴール裏の憎しみを背負った男のための歌を歌う。 ここから試合は少し荒れる。好調だったのはそこまで。リードした後で、同じく磐田出身の清水を入れるという岡田監督らしい嫌らしい采配をするものの、ブーイングはナシ。 「おい!ちっとは清水も相手してやってくれよ!!」 そして、今年は期待が大きい大橋。だが、この大橋が見事なブレーキぶり。勝負できずボールを下げる。コントロールも精度を欠く。登場の時の期待が大きかっただけに失望も大きい。大橋に求めることは昨年とは何倍もの違いがあるのだ。 らしさといえばらしさまで。 呆気なくパスミスを奪われて一直線にゴールを奪われる。得点者の発表は福西。 「またお前かよ!」 ファールに荒れる松田。ため息。そして少しの罵声。もう慣れたものだ。大切な局面で、スタンドがヒステリックなムードにならなかったのは、それまでの松田が持ち前の身体能力を活かした守備で予想以上の復活を遂げていたという安堵と、ダメなら栗原がいるという安心感からだ。 この日は抜群の安定感を見せていた榎本。2つの直接フリーキックも好セーブ。あれだけ大きく間を空けて2人の選手を入れさせる、それを2回も繰り返して作る壁に、逆に信頼感を見る。その榎本の見せ場になるはずのPK戦だが主役は別だった。 福西が外したとき、最高潮のボルテージ。 「よし!いいぞMVP!!」 「こうなったら、絶対に誰も外すなよ!!」 だが、その期待を裏切る遠藤の蹴ったボールは左上隅をかすめて外れる。 「なんで、外しちゃうんだよ!」 「10番だからって、そんな難しいとこ蹴るなよ!」 「外し方はプラティニ級だ。」 大きく仰け反る。 そして誰もが不安になり当たり前のように止められた久保。 榎本の2つのセーブは方向がピッタリだけに惜しかった。 トリコロールが帰ってきた。ゴール前にやってきた選手に檄が飛ぶ。来週からは本番だ。 「ちょっと全体に重かったかな。」 「久保は心配だなあ。」 「ユキヒコよかったじゃん。」 でてくる言葉は、リーグ開幕への期待に膨らんでいる。 今日のポイント ●守備への対応は早くてさすがだった中西。 ●最後はやっぱりドゥ頼み。 ●インフルエンザを感じさせなかった中沢だがやや重めの動き。 ●スピード感にかける重い試合。 ●ゼロックス初得点。 今日のお値段
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