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J1リーグ 1st stage 第1節 浦和レッズ 『油断のささやき』 いつもそうだ。浦和戦は勝っても負けても、そうなのだ。失った勝ち点2。そうだ、いつもそうなのだ。大げさな言い方をすれば、浦和戦に浦和の選手もサポーターも不要だ。浦和戦は、トリコロールの自己との闘いなのだ。 一気呵成に試合開始直後に攻め込まれる。攻撃的で面白いサッカーを標榜するだけに迫力がある。トリコロールはゴール前に釘付け。だが、自力で、それを押し返す。素早い切り返しから放った久保の一本のシュートが流れを引き戻す。すると、また始まるのだ、いつものように。 「敵だけど、お前らいい加減にしろよ!!!」 K林さんが叫ぶ。我慢ならない。かすかにプレッシャーをかければトラップミス、パスミス。繋げるボールも、安易にタッチへ逃げる。ロングスローが相手ボールに。これがプロなのか、頭を抱えてしまうようなレベルのプレーのオンパレードだ。だからプレーが切れる。 「勘弁してくれよ。」 「こんな展開だと、テンポが掴めないから、やりたいサッカーが出来ないよ。」 選手能力の差が如実に現れる。熱狂的な浦和サポーターが不憫に思える。 時折、前を向いて突破してくるエメルソンと流れてくる永井に注意さえしておけばよいのだ。山田は勝負しないから、前に2人立てば、それで問題ない。ボールを下げる。 「なんだそりゃ!」 「これだからダメなんだよ、ジーコジャパン!!」 「お前、また熱でもあるのか!!」 左サイドのアレックスは自由に動くのは解るが中途半端なポジションで、何をしようとしているのかが理解できない。 「なんで通訳がいるんだ!」 「ディフェンダーらしいプレーしろよ、ディフェンダーらしい!!」 とにかくジーコジャパンには恨み辛みが山ほど貯まっているから、飛び出す言葉は辛辣だ。 さらには 背中にはFUSOの文字。 「リコール!!」 ちょっとのミスでも 「またお前か!ジーコジャパン!!」 逆に、オフサイド崩れで浦和がチャンスになる。松田が手を挙げてアピールするが、どうみてもオンサイドだ。 「松田!何の手だぁ!?」 「しょうがないんだよ、松田はトルシエジャパンだから。挙げちゃうんだよ。」 だが、さすがに、山田にゴールライン際まで持ち込まれたのはまずかった。 ぎこちない試合。本来ならば王者の実力を2004年シーズンの開幕に見せつけるための絶好の機会、いやJリーグにおける義務である。だが、それが出来ない。昨年の開幕は圧巻だった。実力ナンバーワンの磐田が、その力を見せ、それを上回る攻撃力をトリコロールが発揮した。磐田は最低限の義務を果たした。だが、この日のトリコロールからは伝わるモノが無い。清水は動いた。松田のフィードも的確だった。久保の跳躍力も脅威を見せつけた。だが、ボール運び全体が噛み合っていない。 浦和の左サイドは不思議だ。攻撃力を見せるわけでもない。かといって、守備に重点を置いているわけでもない。松田や中沢がロングボールで再度チェンジを兼ねた大きなパスを深い位置に蹴る込めば、まず間違えなく通る。なぜか通るのだ。そして中へドリブルして様子をうかがう安。素早く振り抜くとネットが揺れる。 「すげっ!!!」 「うっ!!」 息をのむ。確かにネットは揺れたのだ、内側から。 「これは凄い!」 「美しい!!」 「よしやった!!!」 沸き立つスタンド。この日は浦和サポーターがゴール裏を全面的に占拠すべく押し掛けたが、予想に反して1階スタンドは埋まらず座席は余裕たっぷり。その反動で、トリコロール側の自由席はびっしりすし詰め。通路のイスも使われイスがないところは立ち見。最上段も立ち見の列がつながる。そのスタンドが、安の見事にコントロールされたグランダーのシュートに揺れる。 アレックスがアウトサイド気味のトーキックでゴールマウスをかすめるシュートを放ったが、しばらくの間、浦和は沈黙。エメルソンもサイドでしかも中盤に戻ってボールに触れる。王者のサッカーとは、待って受け止めていなすサッカーではないはずだ。こういう、相手の状況を見て、一気に勝負をかけて木っ端みじんに粉砕できる試合運びを持ってこそ、王者のサッカーであり「常勝」を印象づけるサッカーのはずだ。だが、しかし、本当に悔やまれる。そのような勝負所を感じてプレーした選手が、どれほどいたことか。前半から続く途切れ途切れのサッカーに、すっかり合わせてしまっている。長年見慣れてきた相手に合わせるサッカーだ。特に、中西が、まだ攻撃面ではフィットしておらず、ワンタッチ多かったり、周りを見る時間をかけたり、と、ダイレクトプレーが出来ない。昨年であれば、那須がフィットしていなかった序盤は、岡田監督が現実に合わせた戦術を採用したため「とにかく、まず前線の久保に当てる」というシンプルな約束事で課題をクリアした。だが、この日は、課題は解消されない。 「ちょっとは競れよ!!」 後半開始直後の数度のハイボールの処理で、今日の試合運びは等分改善されないことを知る。競り合わず、相手の処理ミスを狙う消極的な待ちの姿勢が、あまりに目立ったからだ。ハーフタイムでは何も改善されていないのだろう。 「まずい状況だよね。」 「こういう試合は、往々にしてやられる。」 「だいたい、試合前に永山へのメッセージビデオでデラクルスが出てきた時点で、今日は縁起が悪いんだ。」 「ラザロニが出てこなかったことだけでも、まだ救いだ。」 「良いシュートを一発ズバーンと撃って、大きく流れを変えないと。」 だが、思いきりの良いシュートは滅多にない。ゴールまで撃てる場面でパスを選択してチャンスを逃すことも目立つ。考えすぎだ。難しくサッカーをやりすぎている。そして、浦和との力量の差で余裕を持ってプレーしすぎているのだ。勝負を決める迫力がない。 そうしているうちにやられる。予想通りだ。 これもいつものことだ。油断してやられる。不運ですまされない。エメルソンへの腰の引けた寄せが、その象徴だ。やられるべくしてやられた。浦和の問題ではない。己の心がまっすぐではないからなのだ。 ワンボランチで中盤での相手ボールへのアプローチが遅れるのは前半と同じ。最終ラインを窮地に押し込む。土壇場の一頑張りはさすがだ。堅守は評判通り。それだけに悔やまれるのだ。 当然、ここからは浦和ペース。そして上川さん。 終盤になると、ボールの行き来が激しくなる。ファールも増える。カード乱発型の上川さんが、押さえ気味のジャッジに徹している。前半から新ルール「負傷者の対応」で迷いが見える上川さん。このルールに基づいてジャッジするのは非常に難しい。そのせいか、終盤の荒れかけた状況で、カードをバランス良く出して調整に入る。ところが出ない場合もある。 ボールが通り過ぎた後に危険な接触プレー。 「ファールだろ!!」 「カード出せ!」 「いや、流した。プレーに関係ない場所だから。」 「切れたら出すだろう。」 「忘れるなよ。」 しばらくゲームが進む。 「忘れるなよ。」 ゲームが切れる。 「カード!!」 「カード!!!」 「カ〜ド〜!!!!!!」 「出ねぇのかよ!」 ペナルティエリア境界線の内舘のファールもそうだ。抜ければGKと一対一の場面で後から倒した。 「PKじゃないにしても退場だろ!!」 「黄色じゃなくて赤出せよ!!」 「赤だよ赤!!ユニフォームと同じ色ぉ!!!!」 ボールを蹴った後に榎本が永井のスライディングで蹴られる。その前にエメルソンが中沢との接触で倒れたがファールを取ってもらえなかったことに苛立ちと抗議の意味を勘ぐられてもおかしくないタイミングでのスライディングだ。 「カード出せよ!!」 「カードだろ!」 「カード出すの、ほんとは得意技だろ!」 「どうせ見てないんだろ。」 「見てないならファールかどうかわからないんだからフリーキックじゃないだろ!!」 「だいたいあんなことして、エノテツだったら、お前命無いぞ!!」 だが、下がりながらドリブルする奥に突っかかったアレックスにカード。 「今のはカードじゃねぇだろ!!」 今度は安が流し込んだクロスをキャッチに行く都築の顔に久保の脚が当たる。久保にカードが出る。 「じゃぁ、さっきの永井は何なんだ!!!」 どちらに有利だとかではなく、破綻だ。 気の毒だが最優秀審判にしてはお粗末だ。 終盤に攻勢をかけるが、あと一歩が足りない。 積極的な攻撃の中で、安全策に走る田中は非難を浴びる。序盤は自信満々にオーバーラップしクロスを入れた田中だが、終盤はバックパスと守備での手抜きが目立つ。清水は右サイドではなく自由なポジション、だから田中の前にはスペースがあったのだが。前半のプレーを、これからは期待したい。 大きな収穫もある。松田の復調。守備面はもちろんだが、前後半で一度ずつ見せた、スピード感溢れるオーバーラップは、タイミングも的確、そして気迫溢れるプレー。これなら文句なし。榎本も安定した。今年はやれる。 それでも勝てない。あと一点が獲れない。試合終了の瞬間のため息。落胆。微かにブーイング。勝たなければならない試合を落とした。スタジアムをあとにし、帰る足取りの重いトリコロールのサポーター達。逆に、浦和サポーターは勝利したかのような明るい表情だ。その表情は新横浜の街はもちろん、中華街も席巻していた。 今日のポイント ●五輪予選を挟んで浦和と市原。どうみても勝ち点6もらわないと不合格だろ。 ●ワンボランチにして逆に存在感が薄かった遠藤。 ●見せ場は多かったが、その大半はミス絡み。 ●ますますワールドカップ予選を不安にした通訳と発熱の両サイド。 ●結局、今年も想鐵待ち。 今日のお値段
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