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J1リーグ 1st stage 第2節 ジェフ市原 『冷たき雨に打たれる』 フワフワと上がったボール。 「へんなタマだ・・・。」 「えぇっ!?」 おもわず口に出たほどの妙な弾道。ゴールポストを超え、反対側のサイドへ。目測を誤ったのか、お見合いしたのか、見送る榎本のすぐ横でヘディングされる。危機一髪。 さらに、その直後。浮き球の処理を誤る。そこを中距離から打ち込まれた先制点。劣勢ながらもチャンスもあった寒く冷たいゲームは、ミスから始まった失点で市原のものとなる。 気分はUAEだ。朝から降る雨。気温は3℃。 冷たく肌刺す寒気に震え、息は白く湿りがち。濡れたピッチに選手達は何度も足を取られて転倒する。 「しっかり!」 その声援が虚しくなる慌てふためきぶり。2日前に国立競技場で見た茂庭の守備のように、迷い無くクリアが効果的。だが、試合が進むにつれて悲鳴が増える。 「げっ!」 「逃げるな!!」 「勝負しろ!!!」 ルーズボールが獲れない。出足が遅い。激突で倒れるのは、いつもトリコロールだ。競り合いに負ける。昨年と同じだ。オシムの走るサッカーに圧倒される。特に、ボールを奪われると、一直線にペナルティアリアの前まで進入を許す。複数の選手が一気に走り込んでくるため、中西一人の中盤守備では止められない。安や久保も懸命に追うが、なにしろ攻めが早い。これぞダイレクトプレーのお手本だ。すると、松田か中沢が前に出て一対一の対応で勢いを止めなければならない。すると、中央突破か、もしくは中央に意識が寄った残り3人のトリコロール守備陣をあざ笑うかのように坂本か村井が、そう、彼らは必ず走り込んできているのだ。サイドを奥深くまでえぐられる。どこか自信なさげで距離が遠い隼磨の前からクロスがねじ込まれる。とにかく耐えるしかない。マルキーニョスが、羽生がサンドロが、一直線に中央に走り込んでくる。その姿には迫力があり勢いは絶えることがない。 トリコロールの攻めは散発だ。 ミリノビッチの記憶は鮮明。組み立てられないからといって、久保の頭にあわせるボールを最終ラインから放り込むこともできない。強さに、はじめから勝負は回避。闘いようがない虚しい45分。 後半が始まる。試合開始早々に脚を痛めたドゥトラがいない。 「だめなだら直ぐに交代しないと。これで欠場が長引いたらたまんないよ。」 上野が入り左は中西に。これで中央の守備も早めのチェックで潰せるだろう。前半は、どこにいるか解らなかった遠藤が、開始早々にナイスシュート。 「よし!!」 「どんどん撃ってけよ!!」 なんとか反撃できるだろう、と思った矢先にカウンターから逆襲をくらい失点。これには無言になる。小さく寂れたスタジアムの反対側仮設スタンドの前で宙を舞う黄色いユニフォーム。力無く同時に口から出た言葉は 「マルキーニョスかよ。」 いけると思えたのは、たったの2分間だけだった。ここからは声援と罵声が交錯する。 「いけ!」 「あぁ。」 「もっと強く踏み込め!!」 「何で負けちゃうんだよ!!」 「ちゃんと競れよ!!」 前半は目立たなかった遠藤は、競り合いに負けてトリコロールのゴール裏にインパクトを与える。上野は大きなバックパスを数本。これでは2年前に逆戻りしてしまう。市原の運動量は衰えず、攻撃にも守備にも出足が違うため余裕がある。 代表落ちのショックなのか、久保の動きにキレが無く、中央で体を張るわけでもサイドへ流れるわけでもない。安も居場所を見つけられない。ボールを得ても孤立していてる、いや、市原守備陣の寄せが早く、自分で抱えるしかない状況に追い込まれている。 「真ん中で勝負する気がないのが見えてるから市原もやりやすいよ。」 「中央がサイドからクロスまちなんだもんな。これじゃ怖くない。」 「で、サイドにパスを送ってるっていうか回させられてるだけじゃん。」 「そんなとこから入れても効果無いぞ!!」 相手の準備ができていないタイミング入れるからこそ効果の高いはずのアーリークロス。だが、入れる場所がアーリーでも時間はスローリーで守備陣形がしっかりできているのであれば、これほど守備側にイージーな優しいクロスはないだろう。 本日2度目の修正で清水トップ下を諦める。 ユキヒコの投入でワイドな攻めを狙う。だが、しばらくはやられっぱなしだ。 「逆サイド来てるぞ!!」 「2枚フリーだ!」 攻めの手綱はゆるまない。 「しかし、良い攻めだなぁ。」 「凄いサイドチェンジだ。」 「こんなやられっぱなしの試合なんて、金返せだ。」 「いや、この市原のサッカー見せられるだけで、十分にチケット代の価値あるぜ。」 やられながら、むかつきながら、キレながらも感心する。そうでも思わないと、この寒さの中での応援は悲しい気分になる。フィールドもスタンドも、ますます気分はUAEだ。 「お前ら、ホントに格好悪いぞ!ちゃんと勝負しろ!!」 「つまんねぇぞ!つまんねぇぞ!つまんねぇぞ!お・か・だぁ〜〜〜〜〜〜!」 叫びがでる。さすがにこのとき岡田監督も、このままでは変化がないと考えていたのか、あまりにも精気を失っている久保を交代。叫びの直後に坂田に変える。 初めてムードが変わった瞬間だ。 登場した坂田がボールを奪う。ゴールに向かってスピードアップ。やっとトリコロールのゴール裏が湧いた。これに刺激されてか、全体に勢いづく。隼磨も自身を取り戻したような突破を見せる。交代直後から積極性に溢れたユキヒコのサイド攻撃に隼磨が絡んでコンビネーションで崩す。坂田と3人で「怖さ」のある攻撃が、最後の最後になって 始まる。 腕時計を見たのは何度目だろう。 「まだ時間はあるぞ!!」 腕時計のストップウォッチで時間を確認する。市原臨海のスコアボードはゴール裏からは見えない。時間を知るのは、メインスタンドの壁に掛かる丸い普通の時計からだけだ。工事中の小規模なバックスタンドの風景もあいまって虚しさがいっぱいの試合も、少し望みが見えてくる。なんとか1点を期待しよう。サイドからのボールが入れば安の特徴も活きる。けっしてやさしくないボールも俊敏な身のこなしで枠にシュートを放つ。昨年の序盤を思わせる気迫に溢れたユキヒコが、長いボールに追いついてクロスを入れる。 「よくやった!」 「よし!!!」 「・・・・・え〜・・・。」 中央には誰も走ってきていなかった。誰もユキヒコが追いつくとは思わなかったのか。 「台無しじゃねぇか!!」 「ニアに来てれば良いボールだったぞ!!」 「みっともねぇぞ!!」 「ちゃんとサッカーやれよ!!!」 松田は頼もしく見える。 奮闘した。何度も市原の攻撃を跳ね返す。前節に続いて、流れの中で攻撃参加も的確。特に、勝負所を発見した際のトップギアの入り方は凄い。迷い無く一直線にドリブルで切り込み、スペースへパスを流し込む。戻るときも昨年や一昨年のようなダラダラした走りではない。松田は復活した。だが、斜め後方からのスライディングは相手の両脚をさらった。だが、誰が彼を責められようか。 3つめの失点。勝ち点0は濃厚。 だが、望みはある。この劣勢の中でも1得点をあげさえすれば光明は見える。だから歌声も声援も手拍子も鳴りやまない。冷たい雨は止み、幾分か気温も上がった。最後の10分間は、トリコロールのサッカーが微かに見えた。 有料となった駅行きのバスの列で落ち込む我々に声がかかる。 「去年のことを思い出してみなよ。市原アウエーと浦和ホームに勝ち点0だったんだよ。順番が違っただけだよ。勝ち点1あるだけで、まだいいじゃん。」 まったくの気休めだがリーグは始まったばかりだ。昨年の土台を一部壊してチャレンジするのは、次のステップに登るためだ。ここは信じるしかない。 東京駅に向かう京葉線の車内は落ち込んだムード。舞浜でディズニーリゾートを満喫した笑顔が波のように車内に押し寄せたとき、あまりに雰囲気の悪い私たちの一角を自ら感じ、お互いに顔を見合わせて堅い笑いが出た。 今日のポイント ●オシムサッカーの神髄を見る。 ●頑張るチームとの対戦にめっぽう弱い遠藤。 ●この試合のユキヒコならレギュラー間違えナシだ。 ●改装しても収容人数はあまり増えそうにない市原臨海。 ●選手交代の度に「阿部を代えてやってくれ!」の声が飛ぶがフルに使ったオシム。 今日のお値段
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