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J1 YAMAZAKI NABISCO CUP G-A サンフレッチェ広島戦 『ニューヒーローへの道』 リーグとチャンピオンズリーグを控え、代表や女子代表の試合を終え、ナビスコカップは静かにやってくる。両クラブ共に若手メンバーが多い。いつぞやのベストメンバー問題は、今の過密日程の中では古い記憶と化している。 「広島のメンバーわかんねぇ。」 「3人しか知らないぞ。」 「林、外池、服部かぁ。」 「あとは誰なんだよ。」 「うちもメンバー落としてきたな。」 「阿部は、今日ダメだったらレンタルだな。」 「金子も頑張らないと。」 「あれ、第四の審判が砂川さんだって。」 「おいおい、審判もベストメンバーじゃないのかよ!!」 大橋が仕掛けている。ユキヒコとドゥトラは格の違いを見せている。だが、阿部の行方が解らない。久保、安の存在感は絶大。彼らと比較される阿部は不幸だ。だが、ポジション争いは厳しいもの。存在感すら消えてしまっていては、ゲームに得点が感じられない。 「今日は我慢比べだ。『つまんねぇ』って最初に言ったヤツが負けだぞ。」 差し込んでくる春の柔らかな日差しが、一層、雰囲気を柔らかくする。広島の緩慢な両サイドのスペースを使って優位に試合は展開する。ドゥトラから河合へのクロスには「黄金のホットライン!」の声が飛ぶ。城南戦での戦慄のゴールはインパクトが十分で、試合前の選手紹介でも河合への歓声が最も大きかった。 ミスが重なる。 全くのフリーで栗原がハンド。フリーキックのケアが遅れ、あっと言う間に失点だ。 「あ〜。」 「お前、得点するのは良いが、パフォーマンスするのかしないのか、中途半端な行動がむかつく!!」 名も知らぬ広島の選手が得点し、コーナーフラッグへ走るが、先をちょっと握っただけ。ポーズをとるわけもなく、喜びの表情を浮かべてから自陣へ戻っていく。 失点したものの、慌てた悪いムードはない。 そのうち同点に追いつくだろうという楽観的な雰囲気。このムードは長く続くととてつもない重圧に繋がる。だが、チャンスは突然やってくる。大橋とボールを追う広島の名も知らぬ選手がオーバーヘッドキックを空振りし大橋はゴールへ一直線。中央には2名のトリコロールが詰めてきている。もう、これはもらった。シュートを撃つか。いや、大橋は中央へ。ここで凍る。信じられない出来事だ。ワントラップ。広島のディフェンダーが距離を詰める。かわすわけでもなく間一髪で放ったシュートがゴールに飛び込む。喜びと共にホッとする。ゴールしたのは阿部。 「なんで止めちゃうかなあ。」 という会話もありつつも、まずは同点だ。 安定感が膠着を呼ぶ。 松田、栗原、河合の『第2の身体スリーバック』は広島を寄せ付けない。クロスバー直撃のシュートには肝を冷やしたが、他は、未然にピンチを防いでいる。攻撃陣は山崎と遠藤が加わり、仕掛けが増える。前半は、セレッソ戦で見せたような、バックラインから中盤で細かいパスを繋ぎながら様子をうかがって、ディフェンスラインが前に出てきたところでロングパスを流し込むという戦術に終始するところが多く、アグレッシブな姿勢に欠けて見えた。中央に怖さもなかった。だが、山崎がいるだけでムードは変わる。中央を警戒し、ますますサイドは手薄になり制圧。ユキヒコが中へ絞ってシュートする場面も出てくる。 得点の気配が危ぶまれた退場。 広島の名も知らぬ選手がゴール前でファールをし、カードを受ける。さらに、笛が鳴った後に大きくボールを蹴り出したからか、何かを言ったからか、もう一人の広島の名も知らぬ選手がカードを素早く受ける。これが2枚目だった。なんとも馬鹿らしい退場。 「こんな緩い試合で退場になるなよ!!」 「これで守備を固められちゃったら、ますます得点のチャンスがなくなっちゃうよ。」 相手あってのサッカーだ。広島のもしっかりしてもらわないと困るという声が出始める。そして特にトリコロールは相手に合わせるサッカーが伝統なのだ。これはまずい。 「相手が減っても、攻めも守りも、何ごともなかったように淡々と進んでいないか。」 ムードは変わらない。その時、上空から一羽の鳩がバックスタンドに舞い降りてきた。 「あっ、波戸が帰ってきたよ。」 ユキヒコ、大橋、山崎へとボールは渡り、流れに抵抗することなくスムーズな軌跡を描いてボールは左隅に流し込まれる。山崎のゴールだ。チャンピオンズリーグでも素晴らしいゴールを決めている山崎は、金の取れるプレーヤーになりつつある。 「キレイ!!」 「よし決めた。」 満面の笑顔で、この貴重なゴールを喜ぶ。しかも、お膳立てしたのは、今日のキーマンだった大橋で、ロングボールは、このところ好調なので、すっかり信頼を取り戻したユキヒコだ。良いメンバーでゴールした。 さすがに広島も前へ出る。主将の松田が落ち着いてオフサイドを取る。坂田も加わり、何度も揺さぶりをかける。復活した遠藤のシュートはヒットせず、遠藤の身体だけがゴールへ飛び込む。最後は大きなパス回しで危なげなく時間を費やす。そして試合終了。層の厚さを見せつける結果となった。 前半からの膠着状態を山崎が打破してくれた。試合後は山崎の話題に花が咲く。ヒーローインタビューが始まる。声はフジテレビの青嶋アナウンサーだ。 「あれ、青嶋って、今朝までイタリア-スペインの実況してなかった?」 「大変だなぁ。帰ってないのかな。」 「おいおい、阿部だってよ。」 「お〜い!山崎だろ。」 「山崎だろ。スポンサーの意向も考えろ。山崎ナビスコカップだぞ!!」 阿部にも今日のゴールをキッカケに浮上してほしいが、なにしろ山崎のインパクトはハートを捉えていた。期待通り、阿部の後には山崎のインタビュー。 「山崎をニューヒーロー賞にしよう。」 「よし、俺も山崎を応援するぞ。」 インタビューを終え、阿部と山崎がスタンドに向かって走ってくる。歓声で迎える。 「山崎!よかったぞ!!」 「山崎!次も頼むぞ!!!」 「阿部!お前じゃないぞぉ!」 阿部には可哀想だが、今まで過度な期待の反動が来ていた。2年目であるのにもかかわらず、どうも何年も低迷していたかのような印象が着いてしまっているのだ。ゴール裏から沸き起こる山崎コール。 「こりゃ、ヤマザキナビスコの社員が、ここにいたら大変だ。すぐに報告だよ。『社長、スポンサーになって12年目。ついに我が社の社名がサポーターからコールされました。』って。」 鳴りやまない山崎コールに、控えめに合いの手を入れ始める。 「山崎!!!!」 「ナビスコ!」 「山崎!!!!」 「ナビスコ!」 「よし、ニューヒーロー賞を取らせるために応援歌を歌おう。これで、スポンサーの後ろ盾も完璧だ。」 「OREO OREO OREO YAMAZAKI OREO OREO OREO YAMAZAKI OREO OREO OREO RITZ !! OREO OREO OREO RITZ !! OREO OREO OREO YAMAZAKI RITZ !! 」 笑顔でスタジアムをあとにできたのは、山崎と阿部のおかげだ。 今日のポイント ●『フィールドのチップスター』山崎ナビスコ。 ●チャンピオンズリーグ同様に阿部と山崎がゴール。 ●連携はイマイチだったがキャッチとキックはノーミスだったエノテツ。 ●副審が脚を痛めたので砂川さん副審で登場か、と一瞬盛り上がり。 ●試合前に、しなり旗をお立ち台で振り回していたマリノス君。 今日のお値段
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