maliciaのプロフィールはこちらへ
J1リーグ 1st stage 第14節 柏戦 『待ち人が来た』 開聞を前に、アウエー側の「F」ゲートには長蛇の列ができている。日差しは幾分緩くなってきているとはいえ、そうとうな暑さだ。念入りに荷物検査を行い、ゆっくりと列は進む。突然、スタンドの中から黄色い歓声があがる。爆発的な音量が屋根に響き、外に飛び出してくる。続いて、少量の指笛を使ったブーイング。外の列でも、歓声があがる。 「磐田が負けたぞ!」 整列の間、何度速報を見ても0-0で動かなかったカシマスタジアムはロスタイムに決勝点が入った。 「よしっ。」 だが、まだ、五分五分にも達していない。トリコロールが残すは柏と鹿島。磐田は広島だけだ。 アウエーの圧迫感は、まったくない。 スタンドに入って驚いた。アウエー側は、すでに、ほぼ7割の入り。ホーム側はガラガラだ。アウエー自由は完売らしいとは聞いていたが、これほど出足が速いとは思わなかった。時が進むにつれて、混雑は一層増してくる。運営スタッフがトラメガで声をかける。 「1人でも多くのお客様が、お座りになれますようにお詰めください。」 そうか、そうなのか。 「おい、ついに、運営側も、ここが立ち見席としては機能していないことを認めたようだぞ。」 さて、選手が入ってくる。拍手で迎える。試合前のウォーミングアップだ。柏の選手が入ってくると、ホームのゴール裏に横断幕が現れる。『ホームで意地を見せろ』。激しい文字だ。 そうか、そうなのか。 「おい、ついに、あいつらも、柏の葉をホームと認めたぞ。今まで、聖地日立台がホームだって主張していたのに。」 「残留争いになって、細かいこと気にしていられなくなったんだよ。」 「今までは、毎年、優勝も残留も関係なく中位だったから、あんなことやっていられたけど、最下位だから、もう、気にしていられないでしょう。」 そうか、柏は必死に向かってくる。最下位とはいえ、油断のならない相手のはずだ。 落ち着かない立ち上がりは、まさに残留を目指すサッカーの姿。 まったくボールが収まらない。的確なパスも繋がらない。ただ、中盤をボールが行き来する。何年か前に見たような、何のクリエイティビティも感じないサッカーに巻き込まれる。ペースを掴まなければならない。そんな中で最初のチャンスを掴んだのは山崎。安のヘッドから裏に抜けてのシュートは緩く残念だったが、ゴールに迫る。キャッチした南には野次が飛ぶ。 「さぁ、南さん、見せ場ですよ!!」 「投げろ!南!」 両サイドは勝てる。攻めに心配はない。 徐々に支配を強め、ペースを掴む。特に、右はハユマが広島戦に続いて積極的に仕掛ける。迷いなく勝負する。これならば大丈夫だ。ストレスの溜まる試合にはならないだろう。時折、柏にボールを奪われるもののすぐに奪い返す。まったくシュートは撃たれない。 こんなハユマを待っていた。 皆が期待していた。やっと、その姿が現れた。柳の長いクロスボールを、走り込んで左脚のアウトサイドで合わせる。前へ出てきた南の横をころがっていくボールを凝視する。ボールがゴールマウスへ吸い込まれるのを確認して、喜びを弾けさせる。欲しかった先制点が獲れた。 ここからが今のトリコロールだ。 気が緩む、はずなのが今までの我がクラブ。だが、そんな気配はない。 「もう一点獲りに行けよ!!」 そんな声援に「そんなことわかってるよ。」と言い返したいのではないかと思える波状攻撃。守りも手抜きがない。特に右サイドは、玉田だろうがゼ・ホベルトだろうが、高い位置で中澤、遠藤(柳)、ハユマらが3人で囲み、あっと言う間に奪ってしまう。 「いやぁ、凄い。」 囲んでサイドへ押し込んでいく様を見て、ため息のような喜びの声を漏らすトリコロールのゴール裏。泥臭い守備ではなく、逆に美しさすらある。特に松田のインターセプトから始まった24分過ぎの連続攻撃。一気に奪ってやるという迫力。一度ボールを失ってもすぐに取り返す粘り。さらに立ち直って、真っ直ぐにゴールへ向かう。油断するどころか、全ての選手が鬼神のような迫力で走り回っている。ドゥトラの右脚もあれば、ゴールライン際からの山崎の弾丸クロスも。アイデアも豊富だ。安がディフェンダーをかわしきろうとしてボールを奪われる。 「シュートを撃てよ!!」 声援を送る。すると、柳が弧を描いてゴールへ向かってくるミドルシュートを放ちゴールを脅かす。南のファインセーブで得点には到らないが、迫力あるシーンは途絶えない。遠藤が裏へ抜けて戻したパスに走り込んできたのはハユマ。見事にコントロールされた低い弾道のシュートは、またもや南に阻まれる。 「良いシュートだ!!!」 素晴らしきトリコロールを堪能する。 気落ちしたのか、ミスを連発しボールが何度もタッチを割る。柏ボロボロの状態でハーフタイムへ。 市原臨海と同じ、小さくて見づらい掲示板には街角に流れる字幕ニュースのように『鹿島1-0磐田(終了)』という文字が流し出される。表示が終わると、読み上げるように冷静に声に出す。 「い・わ・た・しゅうりょう」。 されにJ2の結果も表示される。最後に現れたのは『甲府2-1札幌(終了)』という文字。 「さ・っ・ぽ・ろ・しゅうりょう」。 緊迫が走る、戦慄の立ち上がり。油断はできない。 前半はカード乱発型の上川さんにしては判断基準が甘く、カードが出なかった。ところが、後半、最初のトリコロールのチャンスに、突然出た。しかもレッドカードが。安の突破を追いかける渡辺が、もつれて倒れたように見える。ホイッスルが鳴る。突如現れた赤いカード。スタジアムが静まる。なぜなら、前半の終了間際に、同じような場所で上野がドゥドゥに、後ろからブルドッキングヘッドロックをお見舞いしたにもかかわらずカードが出なかった記憶が新しいからだ。まさか赤が出るとは思わなかった。 「えっ、まじかよ。」 「やった。」 もちろん、喜ぶ。だが不安にもなる。遠く反対側のゴール前で何があったのか、よく見えなかったからだ。 「こりゃぁ、怖いなあ。油断できないなぁ。」 「本当に赤なのかなぁ。」 「いや、何か、とんでもないことがあったと思わないと、不安で見てられないだろう。」 「例えば、とんでもない汚いことを良いながら突っ込んだとか。」 帰宅後にビデオを見ると、渡辺が両手で抱えたまま押し倒していた。赤と言えば赤でも間違えではない。 このチャンスを柳がツーステップのフリーキック。 「これもか!!」 またまた南がパンチアウトして防ぐ。今日は、何点止められているのだろう。もはや、前半のような、ボールをゴールに自ら投げ込むことを期待した野次は飛ばない。 「当たってきちゃったぞ。」 調子の良いときの南の反応は難攻だ。 次のコーナーキックは、重い音を残して終わる。安のニアからのヘッドはポストに当たりゴールキックに。追加点は遠い。 前半ほど楽ではない後半になるかもしれないと思っていると、守備に入った山崎に、いきなり赤!!と見えたが、上川さんは慌てて出し直して黄色だ。 「今度は何だよ!?」 「間違えるなよ!怖いじゃねぇか。」 「あれでカードかよ!?」 「なんで、さっきの赤とバランスとってんだよ。」 「カードが少なすぎるってハーフタイムに言われたのか?」 上川主審の特徴である『バランス』。これは危険だ。 「気を付けろ!カードもらうなよ!!」 ここからは開き直って柏ペース。 トリコロールが手を抜いたわけではない。だが、柏はがむしゃらに攻める。トリコロールは受け身になる。しばらく我慢。そして、一瞬のチャンスでカウンターのカタチができる。 「よし行け!!」 声援のボルテージが高まり、左サイドで安が坂田にボールを託す。突破しシュート。阻まれてもう一度、坂田がシュート。 「またか!!」 南に跳ね返されるが、ボールがこぼれた先、ゴールの右には、さっきまで坂田と左サイドで併走していたはずの安がいた。 「えっ?安?」 冷静にゴールへ流し込み、立ち見席は立ち見席らしく、トリコロールの激しい波を打つ。待望の追加点は、試合のペースを完全に掴むのに十分な時間帯で入った。 柏は開き直った。攻めに勢いが付く。 一人少ないながらも、柏は追いつめられた逆境の底力を見せ始める。人数の少なさを感じさせない攻撃。受け身に回るトリコロール。決定的なピンチにまでは到らないが、攻めの時間はなくなる。2失点目で応援拒否の柏サイドは静かなまま。トリコロールの応援歌が流れる中で柏は攻める。 ここで柏に流れを掴ませまいと、ドゥトラが、わざと相手の前にドリブルで進入してファールをもらうなど、試合運びには冷静さが垣間見える。だが、序盤の鬼神の動きがスタミナを奪ったのか、めっきり運動量が落ちる。突破に対して、完全に囲むまでに手間がかかる。一人は抜かれるのを覚悟しなければならない。 失点は仕方ない。柏の努力の結果だ。 久保投入でとんでもないプレーが出る。そして玉田。 右サイドに上手く飛び出して南との一対一。だが、南の絶妙のワンフェイクでシュートの機会を逸する。角度が無くなり、南は、しっかりと久保の前を塞ぐ。普通なら、走り込んできた二列目の選手へのパスだ。ドリブルで少し位置を変える。南が脚を伸ばす。その瞬間に、なんと、久保は南の僅かに空いた脚の間を弾丸シュートで打ち抜こうとする。惜しくも南の脚がボールを阻んだためにゴールにはならなかったが、久保の魅力を十分に発揮したプレーだ。エースの怖さの印象が残る。 逆に玉田は孤立している。柏が全体に前がかりになったので、高い位置でボールを得るチャンスは増える。だが、その後のドリブルは止めることができる。玉田が一気呵成にドリブルで抜きにかかる。と 「まずいぞ!ここから早い!!」 だが、一人二人とトリコロールの選手が集まり、5名が玉田を取り囲み、あっさりとボールを奪ってしまう。 「大丈夫だ、玉田なんて怖くない。」 「そうだよ。久保あっての玉田なんだから。玉田だけなら大丈夫だ。」 上野のミドルシュートは、南に弾かれてクロスバーに当たる。得失点差を詰めることは、難しいようだ。残り時間はキープで逃げる。もう贅沢は言えまい。運動量は落ちている。それは手抜きではない。前半の、あの素晴らしいプレーの数々が、オーバーワークだったのだ。ついている。気負い無く自然体で勝ったに見えるが、この難しい試合はスタミナを多く消費してきた。19時開始だったのは幸運だ。そして、相手が柏だったことも。 磐田が磐田らしさを失いつつある今、もっともオリジナリティの活きたサッカーを魅せているのはトリコロールだ。内容も運もある。優勝の資格は十分すぎる。 「さぁ優勝だ。」 「まだ五分五分だ。」 でも、信じている。この一週間は優勝への準備にあてよう。まずは、土曜日に仕事にならないように万全の仕事をすること。それが、僕らの闘いの第一歩。そして、最終節のスタジアムはトリコロールのパラダイスだ。 「僕らは常勝への道を確実に歩み始めた。」 そう、大手を振るって言えるまで、あと数日。 今日のポイント ●ドゥトラ対波戸。この結果が横浜での左右の力関係。 ●タッチと南、GK対決。 ●欠場して高島屋にいたリカルジーニョ。 ●失点は中澤を信じすぎ。あのボールに頭は届かなかった。 今日のお値段
|