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J1YAMAZAKI NABISCO CUP G-A 読売戦 『熱帯夜の油断』 アウエーの試合にもかかわらず、新宿行きの京王線は敗者でいっぱいだ。幸い身動きがとれなくなるほどの混雑ではない。この日の観客は12000人ほど。もし寿司詰めだったら、一つや二つのトラブルも起きていただろう。まぁ、読売のホームゲームでは、そのようなことは、トリコロールが優勝を決めるセカンドシリーズ最終節を迎えでもしない限りは難しいことだ。また、その場合は勝者でいっぱいの車内なのだから、トラブルは起こりようがない。 「いやぁ酷い試合だったなぁ。」 「マリノスといい、昼間のK-1の曙といい、攻め手がなくて酷いもんだ。」 「そんなに酷かったんですか、曙。」 「あぁ、今日のマリノス並に酷かったよ。もう、曙はやめた方がイイね。」 「そりゃぁやめた方がイイですね、見てないけど。」 乾いた笑いが車内に響く。 右サイドをえぐられ、逆サイドへ放り込まれるクロス。競り合いながら押さえきったかに見えるが、読売左サイドの(偽)相馬が脚をめいっぱい伸ばし、シュートは反対側のサイドをかすめる地を這う弾丸。僅かに枠を外したがギリギリ。 「なんで見送ってんだ!!」 このボールに榎本は無反応だ。 「油断するな!!」 「ちゃんと反応しろ!!」 おそらく、シュートが来るとは思わなかった。安心していたのだ。 山崎とウベダが交錯し山崎にカード。スローで見るとウベダのファールに見えるが、山崎はボールを完全に待ち、走り込んできたウベダを察知して慌てて身体を預けているので、どちらに判定が転んでも仕方ない。ここは切り替えが必要だ。そして直後、右サイドで山崎が倒れる。これも微妙。だが、判定なのだからしかたがない。そのまま持ち込まれるボールは小林慶行が余裕で持ち込みミドルシュート。見事にネットを揺らす。 「あれは獲れない。」 「でも、反応しろよ。」 「いや、あれは無理でしょう。」 「それよりも、なんでドリブルさせるんだ。」 「あんな判定で気を抜くからだ。油断なんだよ。」 伝統の読売戦は、前節に続いて伝統の気の緩みでの失点で流れを奪われる。 すぐに目を覚ます。 右に降ったボールをダイレクトで上野がシュート。グランダーのボールは惜しくもポストの左。あきらかにスピードアップして得点を狙いに行く。 「惜しい!!」 「いい流れだった!!」 「どんどんシュートを撃って行け!!」 声援もヒートアップする。 盛夏のため息、ドゥトラのカード。 戻りオフサイドの判定に不満を示してドゥトラがボールを大きく蹴る。あのタイミングで蹴ればカードは当然。嫌な予感がする。あまりに順調な滑り出しが余裕を生み、その後に失点。さらに苛立ちからのカード。ボールは回るがシュートは少ない。特に、中央の山崎と清水に強さがないため、逃げの展開から隙をうかがう攻めに終始する。ある程度はやむを得ないが、中央に怖さがない。となると、上野や柳が前に出てくる攻撃になる。 「すぐに点を獲らないと、ズルズル行くぞ。」 「踏ん張って、シュートに持ち込め!!」 「読売に連敗なんて許されないぞ!!」 明らかに選手個々の力量には差がある。勝って当然の力の差がある。だが、先制された上に、この暑さ。前半のうちに追いつかなければ苦しくなる。そんな読みを、ゴール裏の誰もが持っていたはずだ。 焦りもあるだろう。最終ラインの前でドリブルを止める選手がいない。危険を察知して飛び込んできたドゥトラが止める。だが、明らかなファール。 「あ〜やっちまった、退場だ。」 「こりゃダメだ。」 選手も抗議のしようがない明らかな警告対象のファール。 「いまのカードは仕方ないけど、さっきのカードがムダだった。」 失点は免れたが反撃のキーマンを失った。 追い打ちをかける信じられない出来事が目の前で起きる。 「壁が足りないんじゃないの?」 「絶対に逃げるなよ!!」 「しっかり押さえろよ!!」 三浦アツはいない。蹴るのはおそらく米山。となればストレートなボールのはずだ。壁の左を3名分ほど大きく空けて視界を確保する。読売の選手は目隠しに、その空いたスペースへ選手を入れてくることもなく、壁が逃げなければ、ストレートに飛んでくるボールは押さえられるかに見える。そのための壁の位置の指示を榎本は行い、ポジションを自ら取ったはずだからだ。だが、ボールはネットを揺らす。しかも、そのスペースを予想通りに飛んできたストレートボールで。 「な〜にやってんだ。」 「信じられない。」 「なんだこりゃ。」 「素人かよ。」 「どういう壁の指示してんだよ。」 「反応が遅すぎるだろ。」 「見えるように空けてるのに、なんで、あんなに反応が遅いんだよ。」 「まさか、ボールが見えない場所に立っていたんじゃないだろうな。」 「これなら河合が真っ直ぐ蹴っても入るな。」 「だ〜めだ。」 「これじゃ、ドゥトラが退場になってまでして止めた意味がないじゃないか。」 前半の終了直前に意気消沈の失点。しかもドゥトラを失っている。 柳に賭けるしかないだろう。 後半開始と同時にユキヒコが入り、柳がトップに。予想の範囲だが、45分で2点を取り返す意気込みだ。選手達の動きも違う。スピードアップ。猛然と攻め込む。 だが平野のクロスに中央の小林大吾がフリー。 あっけなく3つめの失点。フリーにしたディフェンダーも問題だが、またしても反応が遅れる。榎本は前へ出てクロスをパンチアウトしようとするが間に合わず、空中で身体を伸ばして小林大吾のシュートコースを消しに行こうとする。だが、小林大吾はテクニックのある選手。止められるはずがない。余裕でシュートはゴールへ飛び込む。前半のドゥトラのシュートに対する読売の高木の反応のように、ゴールラインと垂直に縦へパンチアウトするはずが、出遅れて途中から横へ身体を伸ばしているわけだ。単に出遅れたか、平野のクロスの弾道を舐めきったのか、どちらかだろう。 一気に苦しくなるが、安永や大橋の投入で選手の動きは持ち直す。最後の5分は猛攻をやっと見せる。だが、完敗。惨敗であり、許し難い読売への連敗。試合終了まで、大橋のクロスや遠藤のドリブルに声援は途絶えなかったが、試合後の選手を迎えるゴール裏は拍手とブーイングが半々。情けない姿を目の前にしながらも、予選リーグ突破を賭けた来週の決戦、大勝の望みを託す。 「やっぱり、このメンバーだと苦しいなぁ。」 「何言ってんだよ、読売よりも、ずっといいメンバーじゃないか。」 「油断だよ油断。サッカー舐めたらダメだ。」 次は最終節。最終決戦に油断はありえない。 今日のポイント ●久々に見た清水のチェーシング。 ●退場までの左サイドの攻めはテンポよく楽しかった。 ●アルディレスらしい采配。エムボマ、飯尾を順に入れて、真綿で首を絞める拷問へ。 ●負けている終盤に乱闘を仕掛けた榎本。状況を理解していない。 ●河合のファールは一発退場でもおかしくなかった。 今日のお値段
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