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J1リーグ 2st stage 第3節 名古屋グランパス戦 『五輪から帰ってきた夜』 横浜は肌寒く雨。夏休み最後の日曜日は、冷たく暗い天気に覆われていた。名古屋は極めて強力な台風で大荒れの天気のはずだった。しかし、台風は進まず停滞し、天気は曇り。蒸し暑さに汗が吹き出る。 「今日は過ごし易い方だよ。」 ある名古屋在住の人のコメントによれば、今年の名古屋は湿気の中を泳ぐような気候なのだという。 拍子抜けのアウエー。 私たちは覚悟をしてきた。だが、それは、見事に裏切られた。トリコロールの選手紹介で、ほんと起こらないブーイング。まったく予想外だ。那須への激しいアウエーの洗礼を覚悟していながら何も起こらない。那須を守ってやる、という意気込みも肩すかしだ。 「名古屋の人ってオリンピックに感心ないんですかねえ。」 「何言ってんだよ。本当は、あのメインスタンドの屋根もここまで伸びていて、ここにマラソンランナーが登場してきてもおかしくなかったんだから・・・。」 「ダメですよ。名古屋では、その会話は禁句です。みんな、名古屋の人は、来年に『あぁ万博良かったね。』って全てを終わらせようとしているんですから。」 試合は圧倒的にトリコロールが支配する。左サイドはドゥトラが完全に制圧し、ポゼッション率も高い。ジョンファンの2つのシュートを楢崎はキャッチすることが出来ない。 「惜しい!」 「楢崎獲れないぞ!!」 「もっと低く!脇を狙え!!」 「リバウンドを狙って行けよ!!」 スリッピーなグランド状態では何が起きるか予想できない。 ドゥトラのドリブル突破からクロスが入る。巻き込むような弾道を予想したが、ディフェンダーの股間を通りコースが変わる。着いていけない名古屋ディフェンダーがゴール前で体重を押さえきれずに転倒し、ボールは久保に収まる。コースを見極めて狙ったシュートはゴールネットを揺らす。 収まった瞬間に確信していたゴールは現実に。喜びと共に笑いも。 すると、すぐにメールが入る。 「転倒したのは秋田」 こういう情報はすぐに入る。 「秋田!お前、なに故郷に錦を飾ってるんだよ!!」 「さぁ、追加点を狙って行けよ!!」 ウエズレイは怖いがマルケスは上手い。 派手なオーバーヘッドシュートや無理な体勢からの難しいコースへのシュートなど、ウエズレイのプレーは目立つ。怖い。だが、いつも、マルケスにやられるのだ。地味だが堅実。ドゥトラの僅かなクリアの誤りを、ダイレクトでコースを狙って決めてきた。これにはしばし沈黙。 「なぜ、もう一歩踏み込めないんだ!」 と叫んでみたものの、帰宅してビデオを見てみれば、間合いを詰めることなど不可能なタイミングでの絶妙のシュートだった。頭を抱える。時間の経過を待つことなく、気を取り直して声援を送る。ここまでで、大きな問題はなかった。これは、個人技にやられただけだ。試合は十分に支配しているのだから。 決定機を大切にしなければならない。 ゴール前に撃ち込まれるクロス。名古屋ディフェンダーを振りきってファーサイドへ進入した奥は全くのフリー。見事にゴールかと思われたが、シュートは派手にゴール裏へ、岐阜方面へ飛んでいった。いつでもゴールは奪えるはずだ。名古屋の攻撃は散発的。時折、鋭いカウンターに気をつければよい。 危険なシーンもいくつかはあった。例えば、やはりカウンター。那須を加えたディフェンス陣で時間を稼ごうとする。だが、左タッチ際に海本が走り込んでくる。人数が足りない。プレッシャーをかけてスピードを緩めることもできない。交わされればシュートを撃たれる。左に海本は余るからパスを出されても決定機が生まれてしまう。さぁ、どうする。止められるか。海本も前のスペースへパス。 「あぁ、やられた!!」 もう、海本と榎本との間に障害はないのだ。だがホイッスルが海本を止める。 「オフサイドかよ!」 「助かったぁ〜。」 「馬鹿馬鹿馬鹿ぁ!」 なんとも間抜けなオフサイドだ。タッチ際からならラインは十分に見えるはず。そして、パスの出し手もドリブルのスピードを緩めていないのでタイミングを見誤る様相はナシ。だが、海本はオフサイドとなった。普通であれば「馬鹿連発」の罵声は周囲に反感を呼ぶモノだが、あまりの間抜けなオフサイドに笑いが起きるのを堪える。だが、周囲を囲んで陣取る地元客は冷たい視線をこちらに送る。 この試合は絶対に勝てる。楽観のムードがハーフタイムを包む。まさか、後半開始早々に大きな転機があるとは誰も想像しなかった。 後半は奥へのバックチャージで幕を開ける。倒したのは井川。広島からやって来た無名のディフェンダーだ。その後、ほんの僅かな時間をおいて、久保が井川に迫る。大の仲良しの久保を倒されたことへの報復のムード。そして、次のプレーで久保は前線からボールを追い回す。献身的なプレーに見えスタンドを湧かせるが、それは勘違いだった。派手ではないが3つめのチャージは明らかなレイトで、しかも脚を狙ったモノ。派手ではないが意図が見える。そして、提示されたカードに、なんら抗議の姿勢を示すことなく久保は無言でフィールドを去る。久保が後半に見せたプレーは、わずかに2分だった。 ため息が漏れる。 「なにやってんだよっ!」 と、コンクリートの地面を踏みしめる。だが、フィールド上には10人しか残されていないのだ。 「しょうがねぇよ、10人でガンバレ!!」 負けているわけではない。 名古屋は攻めてこない。有利な11人はトリコロールが奥深く攻め入るまでは静かに待つ。鋭い攻撃はカウンターのみだ。目立つのは前半から続く派手な反則。脚払い、大外刈り、裏投げ・・・次々と決まる。 「一本!!」 かけ声が、おもわずこぼれる。大田さんはカードを提示する。 「一本と指導の合わせ技って何?」 連発する大技に芸術点を加えれば、この試合は名古屋の大量得点で大差だろう。だが、このスタジアムではオリンピックは開催されない。そしてディフェンダー陣は弱気だ。特に井川は、なんでもないボールをタッチに逃げる。 「お前、そんなプレーもタッチに逃げるのかよ!!」 「人数が多いチームには見えないなぁ!」 「相手は弱気だぞ!ガンガン行け!!」 スタンドのボルテージは上がる。 だが、マルケスが二つ目の大仕事。 マルケスに左サイドを突破され、難しいタイミングでのクロスが入る。中澤も競るがウエズレイがヘッドでポストへ。リバウンドは不運にもクライトンの足元に。決められる。あっけなく失点。 直後に、動きが重くフリーキックも大宇宙開発の奥をあきらめ選手交代。中西も下げてフォーバックに。サンチョルと坂田を投入。名古屋は当然のこと井川を下げる。 「畜生、ねらい所だったのに。ネルシーニョ。気が付いたか。」 「とにかく突っ込んで行け!こんなチームに負けるんじゃねぇぞ!!」 人数の少ないトリコロールに攻めさせてカウンターを狙ってきた名古屋。一見、頭脳的な戦術にも見えるが、ディフェンス陣の対応や派手なファール、そして見どころのない中盤のパスなどが怒りに火を着けていた。さらに、何度も繰り返される間抜けなオフサイド。こんな名古屋に負けてはならない、と。 柳と上野のダブルボランチ、それは那須がいるから出来ること。 さらには、残り時間が僅かになってユキヒコを投入。積極的にボールに絡んでいた田中だが、じょじょに動きが落ち、終盤は攻めるどころか守りに追われつつあった。攻めれば裏を狙われる。そこで、逆にユキヒコで攻勢に出ようというのだ。大歓声で迎えられるユキヒコ。 期待は裏切られ続ける。期待が大きすぎたのか。 ボールがボランチ収まる。右サイドを見る。スペースがあるが、選手はいない。左サイドで手詰まりになる。右サイドには誰もいない。 「ユキヒコ!てめぇ、どこ行っちゃってるんだ!!」 「サイドだ!サイドに開けユキヒコ!!」 だが、この日のユキヒコはボールタッチしても中へ、逆サイドにボールが出ても中へ絞るばかり。たまりかねてジョンファンが流れるがタイミングが悪くボールは来ない。動きが落ちて田中が下がったのだが、これでは代わりの選手が入ってこなかったも同然だ。 「ユキヒコ!頼むからサイドに開いてくれ!!」 「あぁ〜サイドに誰もいない!」 「ごもっともです!!!!!」 残り時間が少なくなる中で、フラストレーションが溜まり続ける。 幸運にも右サイドでのフリーキックを得る。笛が鳴った瞬間から声援はユキヒコに送られる。 「さぁ見せ場だぞ!!」 「サイドはイイから、このキックだけは決めてくれ!!」 「ビシッと撃てよ!!!」 「頼んだぞ!!!」 ボールはファーサイドへ。だが、五輪帰りで動きの鈍いサンチョルのヘッドは力無くゴールキックへ。坂田も2つの決定機に壮大な宇宙開発と当たり損ねのシュートと精彩を欠き、選手層が厚いながらも疲れが目立つ。またもや松田のシュートであわやの場面も生まれたがゴールは遠い。ジョンファンのフリーではなったヘッドはワンバウンドでゴールを強襲するがコースが悪く楢崎の正面だった。 試合後、スタンドの前に現れた選手達に贈られる拍手。これまで見たことがないスピーディーなパス回しで試合は支配し演出した。退場者が出ては仕方がない面がある。 「ユキヒコ!お前、何しに来たんだ!サイドに張ってなかったら、お前の武器が活かされないだろ!」 それは、大きすぎた期待への裏返しの声だった。誰もがユキヒコのクロスからのゴールを夢見た。 「なんかよぉ、ユキヒコの印象が、あまりに悪すぎるから忘れがちなんだけど、本当は、久保の退場が全てなんだよなぁ。」 「まぁ、いつでもロスタイムに点が獲れるってわけじゃぁないよなぁ。」 「当然、期待したんだけどさぁ。」 寒さに凍えた市原臨海での敗戦以来のリーグ戦勝ち点0試合。夏の終わりにトリコロールは仕切直しの節目を迎えた。
今日のポイント ●反応も良くミスが目立たなかった榎本。 ●上手く捌いた大田さん。 ●すっかりカウンターだけのチームになっていてつまらない名古屋。 ●盛り上げようがない名古屋の選手紹介。 ●少林サッカーで選手入場とは驚いた。 今日のお値段
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