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J1YAMAZAKI NABISCO CUP 準々決勝 浦和レッズ戦 『続く遙かに長い道』 豪雨が敗者を叩きつける。勝てる試合だった。だが、この顔ぶれでは限界でもあった。敗退・・・それは単なる負けではない。だが、リーグ戦、天皇杯よりもワンランク落ちるリーグカップの一戦でもあった。選手が引き揚げていくのを見届け、梅雨の満員電車のような混雑のスタンド下のコンコースに入った時、複雑な心境を表すかのごとく、活気があるともうなだれているとも言い難い小さなざわめきが揺れていた。 「もしかすると、スポンサーに早くもお世話になるかもよ。」 指さした先にはバックスタンドの広告看板「日本管財」。ゴール裏の大型映像には、炎に包まれて現れては消えるレッズのエンブレムが映されている。客の入りは悪い。ホーム側のゴール裏も両隅は空席だ。トラメガで何ごとか演説する声が聞こえてくる。 「何言っても嘘に聞こえるな。」 怪我人が多く、代表にも主力3人を提供している不安はあるが、浦和相手には格を見せつけてやりたいという願いがある。だが、運の悪いことに、浦和も三都主が代表で不在だ。きっと、迷うことなく突破を徹底的に全方位から狙ってくるに違いない。試合はきっと攻め合いだ。 先週の瑞穂と違い、那須にはきちんとブーイング。選手入場時には赤、黒、白の3色のフラッグがスタンドを染める。だが、空席が目立つため、美しさも迫力も今ひとつ。雨の影響もあるのか、アウエーの圧力としては期待はずれだ。ぎっしりと狭い幅に押し込められたトリコロールの密集とは対照的。こちらは旗振り隊のフラッグが最前列に入りきらず、最上段にもビッグフラッグが陣取る。だが、最上段まで空席が無くなったため、最上段のビッグフラッグのいくつかは振ることができない。選手入場をマフラーやフラッグがひしめき合って迎える。 慎重な立ち上がり。お互いに様子見から隙をうかがう。 ともに左サイドのキーマンを欠き、慎重なボール回しからスタートする。むやみな前線からのプレッシャーもかけない。しかし、そんな時間は短い。前へ前への姿勢が見え始める。浦和のボール回しはスムーズだということがわかる。というより、前へ預けて縦にドリブルだ。トリコロールは、小さなほころびが時折見える。中央で、ふっと顔を一瞬見合わせるような、僅かなズレ。それが、スタンドからも判る場面が数えるほど。ほんの僅かなことであって、ミスとは言えない小さな出来事なのだが、おそらく浦和の選手達も見逃してはいないだろう。浦和は原とボランチの間スペースを攻撃の起点に定めているようだ。 徐々にスピードアップ。流れが両者を行き交う。 「止めちゃえよ。浦和なんて勢いを止めれば問題ないんだから。」 一気呵成に攻め込んでくる浦和を止めて、隙を突いた逆襲で得点し、その後の試合を試合して追加点をあげるのが、対浦和の勝ちパターンだ。とにかく、勢いをまずは止める。しっかり受け止めて、スピードアップした攻撃で逆襲。とくに、右のハユマからサイドを使ったコンビネーションを縦に使う攻めが冴える。中盤でのテクニックは断然上なので、細かなスペースをワンタッチ目で突き破って、身体を相手に預けながら進路を作り前へ進む。スペースへの走り込みを繰り返す浦和とは対照的な攻めの激突。どちらかが一方的に押すのではなく、短時間のゲーム支配が繰り返し両チームを受け渡される。動きの速いゲームになる。 セットプレーはトリコロールの十八番。 浦和が縦への突破を繰り返すのであれば、トリコロールが特徴を見せたのはセットプレー。ジョンファンの直接フリーキックはトリコロールのサポーターでさえ驚いた。長い距離を低く押さえた地を這うような弾道がゴールの隅を襲う。楢崎であれば典型的な獲れない高さだ。惜しくも、これは得点にはならなかったが、奥の蹴った曲線は手を弾いてコースを変えて、ゴールポストに跳ねて再び向きを変えてゴールネットを揺らす。これこそがアウエーの快感だ。静まるスタジアムに響くのは少人数のトリコロールの歓声のみ。さぁ、あと2点獲れば、後半はフェンスを隔てたメインスタンドのレッズファンが試合終了を待たずに帰る。楽しみだ。 ペースを確実に握り始める。だが、散発的に起こるエメルソンへのスルーパスに肝を冷やす。中西がセンターにいる理由の一つはエメルソン対策。左サイドは原に任せるしかない。ところで、急に気になることが出てきた。 「ねぇ、さっきから山瀬って消えてない?」 「そういえば絡んでいないね。」 「え?山瀬って出てたの?今日はいないのかと思った。」 「消えてるけど、ここってとこで出てくるから注意が必要だよ。」 と言って3分もしないうちに山瀬が飛び出してきて失点。 「あぁ、ホントに出て来ちゃったよ。」 「わかっててやられるのは悔しいなぁ。」 「ちょっと躊躇したよなぁ。」 「あのお見合いの隙に出て来るんだもんなぁ。」 これは痛い失点だ。左サイドからのボールをお見合いでやられる、となると、どうしても左サイドからの攻めにナーバスにならざるを得ない。中央もギクシャクする。しばらくすると、それも落ち着いてくるのだが、なんと、今度は永井とエメルソンの二人にやられる。 「いやぁ〜ついていない。」 「あれじゃ、逆取られちゃったらもうダメだ。」 不運にも、浦和にとっては幸運にも、ディフェンダーに当たってコースが変わったボールはエメルソンの走り込むコースに落ちてきた。しかも、その位置は、トリコロールのディフェンダーのちょうど中間。中西はエメルソンとは違って、モーションの逆を取られてしまった。一瞬、またしてもお見合いに見えたが、これでは仕方ない。諦めるしかない失点だ。 「しょうがない、すぐに取り返せ!」 「大丈夫だよ!浦和のプレッシャーが最後まで続くわけないんだから。」 「迷わないで思いっきりやれ!!」 口々に叫ぶ声援は、次第にコールへと嗣ぐねられていく。 終わってみれば前半は1-2。 だが終わってみれば、失点後もペースを取り戻し攻める時間も長くなる。 「いや、十分だって。なんとかなるって。」 幸運だったのは、失点直後に左サイドをブッチぎられたものの永井のシュートはクロスバー直撃で失点にならなかったこと。不運だったのは、ノーファールの激突でサンチョルがアルパイに壊されてしまったことだ。 抜群の存在感を見せる男。 「さすがにプレミアでレギュラーだった男は違うな。」 ハイボールではジョンファンも、まったく歯が立たない。坂田の突進にも怯まない。特にヘッドの競り合いは特筆モノだ。アルパイは、自分できちんとヘディングをヒットさせる気がないように思える競り合いがある。高く飛ぶわけでもなく、ファールをもらわない程度に飛んで、身体を巧みにトリコロールの選手に当てるのだ。バランスを崩してボールはこぼれる。そこへ浦和の選手がフォローに入る。実にクレバーで体力温存の守備だ。 「こりゃぁ巧すぎる。」 「ベッカムグッズも全然効かないだろうなぁ。」 「格が違いすぎる。」 さすがに諦め気味だ。 「アルパイのいないところから攻めろよ!!!」 予想通り、浦和のプレッシャーは薄くなってくる。パスが繋がるようになる。シュートを撃てば、しばらくはトリコロールのペースで支配できるようになる。また、ペースを奪われ時間を交換し続けるのだが、トリコロール優位な時間は長くなってくる。複数でプレッシャーをかければミスでボールがもらえるようになる。 「さぁ、チャンスだぞ!」 「浦和が浦和っぽくなってきてるぞ!!」 「相手はビビッてるからガンガン行け!!」 ところが失点は突然だった。 前半からエメルソンには、数多くのスライディングタックルを決めていた。中にはペナルティエリア内でのものもあり、かなりの勇気があるプレーを繰り返していた。だが、遂に、脚がかかってしまったようだ。サッカー専用スタジアムとはいえ、詳細は見えない反対サイドでの出来事だ。普通であれば、この失点で意気消沈してしまうところだが、トリコロールは違った。いや、浦和が違ったのかもしれない。 ポジションを変え、ディフェンスラインを上げ、前がかりになるトリコロール。エメルソンが絶妙の位置でフリーでボールを受ける。 「まずい!」 再び失点の覚悟をするが、エメルソンはシュートをヒールで魅せたのだ。 「よし!これなら、まだ行けるぞ!!」 「エメルソンは遊び始めた。これなら一人少ないも同然だ。」 「チャンスは十分にあるぞ!」 これまでは脅威だったエメルソンが、逆に安全パイに変身した。浦和はボールを奪っても効果的な預け場所を失う。さらに、トリコロールが優位な展開になる。ここまでくると、完全に、いつもの浦和になる。 「これなら獲れるぞ!」 「浦和っぽいぞ!」 いつ得点できてもおかしくないほどのポゼッションだがシュートは少ない。アルパイのせいだ。それに闘利王もブレーキが壊れていないらしく(背中は「ふそう」なのに)堅実に守る。壁は高い。 もう少しだ。あと一歩なのだ。 奥のゴールよりも、さらに沈黙の深い坂田のゴール。揺れるのはトリコロールだけ。しかも、喜びの揺れと言うよりも、さらにもう一点へのために身を乗り出して叫んで揺らぐ。それよりも時間の経過に焦り始める。序盤よりも、まったく脆くなったとはいえ、浦和の守備は崩壊しない。三菱グループは、これをブッフバルトのサッカーと吹聴しているようだが、このサッカー構築の大半はエンゲルスのように思える。この中盤のアグレッシブな守備は。三菱グループは認めないだろうが。 試合は終わり浦和美園の駅に向かう。半分くらい過ぎたところで、重い口を開く。 「駅って、こんなに遠かったっけ?」 「いや、なんか遠くに感じる。」 「そっかぁ。負けて帰るの初めてだからだ。」 今日のポイント ●トーナメントに入ったのに活躍した浦和の「予選専用キャプテン」。 ●三都主不在で迷い無く前に突進した浦和攻撃陣。 ●久しぶりに見た気分になる黒ユニフォームの審判団。 ●進歩が著しい浦和のサッカー。 今日のお値段
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