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J1リーグ 2st stage 第6節 ヴィッセル神戸戦 『誰のための闘い』 ある人は、引き揚げる審判団にブーイングと罵声を浴びせる。退場者が二人。失点にはならなかったがPKが一つ。それは、サッカー場では、ごくありふれた光景だ。 ある人は、落胆の表情が見える選手達に拍手とねぎらいの声援を、そして「次こそは勝て!」と檄 激励の声を飛ばす。残された9人の選手は懸命に闘った。11人の神戸から9人でも、あわやのシーンを二つも見せた。 ある人は、そのどちらも出来なかった。失点は、横浜名物「奥がかっさらわれてカウンター」と日産伝統「セルフジャッジ」から。PKだって、とられ方が悪すぎる。頑張りは見えたとはいえ、受け入れがたい引き分けだった。 試合は予想通り優位に進む。ドゥトラが不在で縦にドリブルで勝負できない代わりに、二列目から遠藤や上野がマークの網をかいくぐってサイドに進出。中央では坂田とジョンファンは奥と絡む。ここ数試合で評価が急上昇のハユマは、積極的なドリブルでアクセントとなり神戸に混乱を呼ぶ。 彼は不運な男として一部には知られている。 本田は名古屋からレンタルできているゴールキーパーだ。神戸は本田と山本の二人のレンタルGKでやりくりしている。選手紹介で拍手を浴びた磐田からレンタルの味方・山本に注目が集まりがちだが、本田もなかなかの逸材だ。失点を重ねるが、ほとんどがどうしようもない状態からのシュート、つまり、責任を問えないゴールなのだそうだ。 この日も、その不運ぶりをいかんなく発揮。二つのループシュートがネットを揺らした。その直後のフリーキックではジョンファンが蹴る位置に立っていたこともあって 「これで壁が逃げてゴールに入ったら、本田の不運ぶりはもの凄い。」 という声が出た。 前半は上々の内容。試合の大半は、反対側のサイドで行われた。こちら側で驚きを与えてくれたことといえば播土の二つのプレー。一つは振り向きざまの鋭いシュート。ジョンファン並のクイックターンから、見事な弾道のシュートを放ってきた。そして、ヘディングでの競り合い。空中でボールと競り合わないタイミングで腰あたりに衝撃を受けた播戸はバランスを崩し、ゴールキックとなった。あれは、ヒヤリとした。PKでもおかしくなかった。それと、もう一つ、オフサイドによくひっかかるトルコ人だと思ったら平瀬だったことも付け加えておこう。 笑顔のハーフタイムはあっと言う間に終わり、長く苦しい後半が始まる。 あまりに長いので割愛する。 左サイドを栗原と播戸が絡み合って進む。かなり速いタイミングで副審が旗を揚げてタッチをアピールする。播戸は、栗原の後ろから抱え込むようにボールを手で奪おうとする。負けているので、すばやくスローインしたいキモチは当然だ。栗原は、ボールを抱え込む。首を絞められたように感じた栗原が報復。これはダメだ。報復の場合は、当然、退場。播戸にも、当然、警告が出た。 優勝を争い、リードをしている中での、実にばかげた行為を栗原がしてしまったのだが、スタンドは静かな反応だった。 「あ〜栗原だからなぁ。」 その程度のことだったのだ。神戸の攻撃は跳ね返すことが出来るムードがあったし、そこまでの奥谷さんの判定にも、大きな不信がなかったからだ。いや、一つあった。前半に、奥に対して「ストッキングを上げなさい。」と指示していた。それは無理だ。 ところが選手の側は、少し様子が違っていたようだ。危険なセルフジャッジは何度も見られた。特に奥は倒れ反則をアピールし続けた。中にはカードを要求するが、警告どころか反則ではない、という場面まであった。奥のアピールは終盤まで繰り返された。つまり、それは逆を言えば、ある程度の一貫性があった奥谷さんのジャッジを奥が最後まで理解できずにいた、ということを皮肉にも示してしまっているともいえる。 栗原の退場直後から、短い時間だがタックルが荒くなる。 「これじゃ、奥も退場になるぞ。」 「中西が、すでに一枚もらっているのが気になる。」 もう一人の退場は防がなければならなかった。 フリーで放った那須のヘッドは明後日の方向へ跳ぶ。試合も思わぬ展開へ。 奥がボールを奪われるとカウンターを浴びる。ここまでは脚を引っ張っていたかに見えたホージェルからのクロスに、播土が見事に合わせる。ハシェックは点の穫り方を知っていた。一人少ないトリコロールを相手にコーナーキックで二人を残している神戸を見たとき 「バカじゃねぇのか。」 という声が飛んだが、そのときは、小島がケガをして動けないからだった。トリコロールが引くと、攻め手を失ってバックラインでボールを回す様を見て、ハシェックは後ろの人数を、すぐさま減らして和多田を投入する。フィールドには緊迫感が走る。気が抜けない展開となる。坂田が全力でボールを追い回し、スローインに追い込んで大拍手を浴びる。人数は少ないがまとまりのあるトリコロールの自由席全体が、手拍子で後押しする。この時、フィールドの選手もスタンドも、全員が勝とうと思っていた。 だが、一人だけクラブの勝利を考えない男がいた。 その男がフィールドに入ってくるとき、ジョンファンをメインスタンドは拍手で送った。 「飛べないなぁ。」 状態は悪いようだ。回復の様子が見られない。一度もヘディングで勝つことはない。つま先を伸ばして前へ長い脚を放り出して進むドリブルもない。 そのうっぷんを晴らす一撃は左サイドで爆発する。 副審のジェスチャーを、そのまま信じれば、右脚で蹴り上げたことになるが、副審は左右の脚までは気にしていなかっただろう。奥谷さんの見ていないところで事件は起き、退場となる。それは、ボールよりも遙かに後ろ。二人の選手が交錯するときに脚が絡んだように見えた。脚を払うようだった。ハシェックはベンチを飛び出し声を張り上げ、副審が旗を揚げる。赤い紙が見え、久保はフィールドを去る。 試合再開。ボールは本田に戻される。ここで、16000人とは思えない、最大音量のブーイングが始まる。まだリードしているので、このブーイングで本田が素早く前線にボールを送り込んでしまわないかと、少し心配もあったが、これは、ゴール裏のみならず、スタジアムに足を運んだ全員の素直な反応だ。トリコロールは9名。敵陣ではボールを追わない。自陣に相手を誘い込んでからプレッシャーをかける。だが、このプレッシャーが弱い。 「ここから!」 「コース塞いで!!」 ブーイングの響き渡る中、声も飛ぶ。だが、プレッシャーが弱い。コース限定も、今ひとつ。ところが、マリノスの力、完全制覇の力、ブーイングの力なのか、神戸は臆病なプレーを続ける。ペナルティエリア付近までは入るものの、そこからは躊躇しながら、ゆっくりとパスを回す。勝負から逃げている。 「よし、イイ感じだ!」 ところが、初めて縦にグランダーで入ったボールをハユマが倒してしまう。(真後ろからだと那須が腰で押したように見えたが、倒したのは脚をかけたハユマ。那須と見誤ったのか、那須が抗議したからなのかは不明。) 「バカ!!何やってんだ!!」 「なんてこと、してくれるんだ!!」 その声は一瞬で口から多数弾け跳ぶが、ここからは勝負。榎本への声援、コール、願い。 ・・・ 炸裂した喜び。叫びは国立の上空に巻き上がり涙をも弾けるが、まだ先は長い。 このPK阻止で「勝てるかもしれない」という想いが再び熱を帯びるが、逆に神戸は落胆するのではなく「縦に勝負すれば獲れるかもしれない」という想いを強くしたに違いない。神戸の攻撃は激しく、そして、リスクを背負うモノに変わる。 常勝は、まだ伝統にはなっていない。 だが、もう一つの伝統は、脈々と生き続けていた。セルフジャッジ。一瞬の空白を逃さなかった。そして、ディフェンスの対応も甘くニアに撃ち込まれる。和多田の超高速シュート、とはいえ、榎本はまったく動けない。狭い方のゴールポストにあたってゴールに弾け跳んだ弾道と共に、勝ち点2は逃げていった。 試合後に席を立てず、呆然と座り続ける。 「岡田は久保を甘やかしすぎなんじゃないのか。」 「信頼感を告げるために出し続けるって方法はあるだろうけど、これじゃぁ、あんまりだ。」 「久保は、もう、今はエースじゃないんだから。」 「エースは坂田で良いんだよ。」 「うちのエースは坂田、久保はジーコジャパンのエースでイイだろ。」 会話は弾まない。一言一言の間には空白の重い空気が流れていた。 今日のポイント ●中央の守備で奮闘した中西。 ●ドリブルで勝負をかける中西を挟み撃ちした神戸ディフェンス。 カードナシは、明らかに誤審だ。 ●9人になって決定機にシュートまで持ち込んだ上野、遠藤。 安永は自ら肘打ちでチャンスを失う。 ●フィードは冴えた榎本。 今日のお値段
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