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J1リーグ チャンピオンシップ第一戦 浦和戦 『5日間のハーフタイム』 4分間のロスタイムは榎本がなかなか立ち上がらなかったこともあって4分30秒の追加タイムを刻んでいた。やっとのこと岡田主審がホイッスルを鳴らし、第一戦は終了した。1-0。僅差ではあるが大差でもある。経験は度胸の積み重ねともいえる。そして落ち着きの度量とも。ただ一人、スタジアムナビゲーターが 「横浜F・マリノスの今年のホームゲームは、これで全て終了です。みなさん、ありがとうございました〜。」 と、自分の仕事を終えた開放感で脳天気に絶叫する中、スタンドのサポーター達は、その声を耳に入れないフリをし、来るべき第二戦への展望に頭を働かせ始めた。 この試合は不要な試合だ。無くて良かったのだ。 この試合さえなければ、こんな長い列に並ぶ必要はなかったし、来週は日曜日に天皇杯の応援をすることができた。自らの撒いた種で、余分な2試合をこなさなければならないのだ。トリコロールのサポーターの大半は、落ち着いた様子。対する浦和サポーターは、やっと巡り会えた夢の舞台の期待に胸を膨らませ、朝からテンションが高い。その浮かれたキモチを沈めようと赤黒のビッグフラッグに「GO TO ASIA」という奇妙な英語を記した。 まずはロングボールを坂田がピタリとコントロールする。 「よし!」 幸先の良いスタートで試合に入る。大型の浦和ディフェンダー陣をスピードで攪乱する、その先制攻撃は、予想外の決定機を呼び込む。 清水のシュート。これを闘莉王が弾いて見失い、坂田が走り込んで左脚のシュート。満員のスタジアムが揺れて絶叫する。だがネットは揺れていない。早くも訪れた際どい場面に体勢を崩して前へ倒れる。膝を叩く。地団駄を踏む。 「惜しい!!」 勢いづくトリコロールは短いパスを小刻みに繋ぎ、ロングボールを3バックのサイドへ放り込む。坂田と清水は走り込む。特に坂田は、この一年で上手くなった。簡単にボールを奪われないし、大きな相手と競り合いながらもマイボールにする技術と体力が身に付いた。 「良いぞ!!良いぞ!!」 「ガンガン行け!!」 浦和は初体験に緊張している。 ナビスコカップとは比べモノにならないのだろう。あきらかに浦和の動きは堅い。その緊張を解きほぐすために、コーナーキックをセットするアレックスはリフティングを行い、背中にボールを乗せる。だが、これは、緊張していることを6万4千人に自白しているようも同然だ。ブーイングを浴びせる。 「緊張してるか通訳!?」 アレックスだけではない。同じジーコジャパンの山田もシュートは宇宙開発。パスも回らない。期待の内舘が、まず警告を受ける。続いて山田も危険なファール。試合のリズムはトリコロールが握っている。 トリコロールは普段着のサッカー、いやファーストステージのサッカー。 ドゥトラの鋭く早いフリーキックがゴールを襲う。まさかのコースを抜けてきたため、誰も触ることはできず、惜しくもゴールにはならなかったが、坂田に続いて2度目の際どいチャンスだ。沸き立つトリコロールの声援。上野はキックフェイントを織り交ぜてボールを動かし、ヒールキックでも確実に繋ぐ。オシャレだ。松田もぶれのない弾道で中盤にボールを供給する。そして、またロングボール。 決戦らしい試合展開だ。 派手なゲームが好きな浦和サポーターにはお気に召さないだろうが、ホームアンドアウエーの醍醐味は「1-0」+「0-0」にある。3度目のチャンピオンシップだ。戦い方は知っている。 「3人以外でも攻めて来やがれ浦和!!!」 攻めてこない、いや攻められないのだ。高い位置でボールを奪われる場面はない。浦和のエメルソン、田中、永井と、他の選手達の間には、明らかに空間がある。オフト時代の分業サッカーに逆戻りしている。坂田と清水が追い、中西が寄せて、松田と中澤で奪い取る。奪えば、浦和の3人の後ろに広がるスペースで奥がフリーでボールを受けてトリコロールの攻撃陣が前に出る。浦和は「坂田に両脚タックルを飛ばしたものの倒すことすらできずにかわされて得点を許した」内舘、「昨年は水戸でプレーしていたことを忘れさせている」闘莉王、「ベッカムを無用に挑発してプレミアリーグをクビになった」アルパイの3人が必死に守る。内舘は別にして、2人は実力者だ。だが、それだけでは足りずに、山田もアレックスも守備に奔走する。ボールを持っても攻めには時間がかかる。 後半になると内舘の姿は消えていた。 トイレにも行けない大混雑のハーフタイムを終え、トリコロールは最初の5分間を圧倒的に押し込む。前半同様に、素晴らしいスタートを切る。ところが榎本がゴールキックをタッチに蹴り出してしまい盛り上がるアウエーゴール裏。試合展開が予想外となったためか、期待はずれの威圧感だった浦和サポーターが最も湧いた場面の一つだ。だが、そのようなことは大したことではない。 「そんなので試合の流れが変わると思ったら、大間違えだぞ!!」 平川が入るが浦和の攻撃に変化はない。 「やっぱり、そのまま最終ラインに入っているみたいですよ。」 といって、アレックスと平川が併走してサイドアタックする場面もない。ただ「不慣れな男」が最終ラインに加わっただけだ。アレックスは前半同様に守備に回る。苛立ちを明らかにしながら私たちの目の前のタッチ際にいることが多い。 そのアレックスが猛然と両脚タックルを飛ばす。奥が、上手くかわしたため、脚にかかったのは微かな接触であったが、当たろうが当たるまいが、あのタックルを仕掛けた時点で反則だ。奥が立ち上がる。だが、微かに当たっただけのアレックスが立ち上がらない。寝ている。脇腹のあたりを押さえて立たないのだ。 その時、昨年の最終節で芝生に横たわった山西の姿が脳裏に浮かんだ。 あまりに見苦しいジーコジャパンの通訳の愚行に怒りが沸騰する。 「どこが痛いんだ!!」 「汚ねぇぞ!さっさと立ちやがれ!!」 「痛いわけないだろ!!」 「嘘つき!!」 「嘘付いてるんじゃねえ!」 「汚ねぇな、三菱グループは!!」 「背中にUSOって書いてあるぞ!!」 「見苦しいぞ!」 なかなか立ち上がらないアレックスだが、その長い時間にマシンガンのように尖った言葉が連射される。休むことなく、皆が叫び続ける。やっと立ち上がったアレックスだが、ボールからの距離が近い。ブーイング。 「絶対に決めろ!!」 「ここで決めろ!!」 フリーキックは跳ね返される。だが、コーナーキックのチャンスが続く。 「ぶち込め!!」 線と線の交差する場所、そこからゴールまでの一直線が、あらかじめ糸で引かれたようにくっきりと見える。松田が後ろに下がり、すれ違って前へ現れた河合。私たちは飛び上がる。絶叫する。凝視する、その先のゴールネットが、少し遅れて激しく揺れる。その時、背もたれ付きのシートは意味を成さなくなっている。整然と座席の前で賞賛の拍手をすることは難しい。誰もが、同じようにトリコロールを愛する仲間と、手に手を取り合い、抱き合い、喜びを分かち合うことを望むからだ。 反撃を試みる浦和。パンチングをミスし、リバウンドからピンチが広がる。ネコブロックも出た。だが、耐える。そして前線に待つ坂田へ。さらに坂田が耐える。ボールをキープしてトリコロールのリズムを取り戻す。不運にもエメルソンはシミュレーションで警告を受ける。試合の流れは完全に掌握できている。 安易なクリア、ハイボールに競りに行かない。浦和は疲弊している。 「獲りに行け!!今の浦和ならば追加点が獲れるぞ!!」 「しっかり競って攻撃しろ!」 檄を飛ばす。ここで得点すれば、試合巧者と賞賛されるだろう。ここで浦和に合わせては、いや、それがトリコロールなのかもしれない。オフサイドが怪しくなる。中盤でのプレッシャーがかかりにくくなり、エメルソンも悪くない状態でボールを受けるようになる。この時間の守備は紙一重。狙い通りに獲ったオフサイドではない。 「中盤、負けるな!」 「しっかり!!」 応援歌の合間に声援が飛ぶ。 苦しい時間は長くは続かない。浦和は冷静さを失ったままだ。トリコロールは左サイドからパスを送る。オフサイドフラッグを逆サイドの副審があげる。動きが止まる浦和の選手。だが、岡田主審は、その前のスローインを指示。動きが止まったままの浦和。そこで、オフサイドラインの遙か前方にる選手に素早くスローイン(もちろんスローインだからオフサイドはない)。トリコロールらしくない抜け目のない攻撃も、過去のチャンピオンシップの経験から学んだのだ。ロスタイムの4分も危なげなく経過する。 さぁ浦和レッズよ、悩むがイイ。アレックスは必要な選手だったのか、スリートップは本当に過去にも機能していたのか、アルパイは、このままでは退場してしまうのではないか、闘莉王はオーバーラップすべきなのか。営業マンは成績がガタ落ちになるほど、経理職員は桁を間違えてしまうほど、浦和レッズサポーターは、このインターバルを悩むがイイ。 5日間のハーフタイムの後、土曜の夜に結果は必ず出るだろう。もちろん勝つのはトリコロールだ。
今日のポイント ●運動量豊富だった奥。 ●キレのなさは変わらなかったドゥトラ。 ●ロスタイムに50メートル近くボールを追走しタッチに出した坂田。 ●試合後も静かだった街。 ● 試合開始前にボールボーイにブーイングした浦和サポーター。 ボールボーイは残り時間が少なくなったところで ボールをなかなか戻さないという逆襲に出た。 今日のお値段
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