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![]() 第8節 浦和レッズ 残り時間がわずかになって、坊ちゃんからのスルーパスを左サイドから豪快にドゥトラが蹴り込んでファーサイドのサイドネットが揺れた。お次は、Jリーグ史上最多60,000人を包み込んだスタンドの、ほんのわずかな青い部分が激しく縦に揺れた。直接対決に勝利。 「本命降臨」 試合後に各地の結果がアナウンスが流れる。注目の読売-札幌は札幌が勝った。残留争いの当事者、読売は勝ち点を伸ばせなかった。 「よ〜し!」 「いいぞ読売!!」 読売負けに喜ぶマリノスサポーター。しかし、すぐにK林さんが気が付いた。 「なぁ、浦和のファンも喜べよ!読売負けたんだぞ。」 「人ごとじゃないぞぉ!」 「浦和!!お前たち、もう敵じゃないぞ。今日から仲間だ!」 「なかま、なかま、な〜か〜ま〜」 階段を上がると鉄道警察がどんと構える浦和美園駅からまんぞうスタジアム(正式名:なぜかしらねどさいたまんぞうスタジアム)までは約20分の距離。事前情報の通り、途中には店はおろか自動販売機が2つあるだけ。全く何もない広野のスタジアム。すぐ脇の小川の向こうの茂みは蛇が発生しているらしい。入場は2カ所から。つまり開門前に並ばない限りは隔離入場はナシ。しかも、おざなりなボディーチェックもどきは行われているが、ワールドカップを想定した緊迫感は何もナシ。ノーチェック、ノー荷物チェック、ノーチケットチェックで入場に成功。井原並。 入ってみると、ビジター用の座席は約1,000席。2本のロープで浦和側と仕切られている。そこでヨンチョルが発見したのは、2本のロープの間の3列の座席。そこに貼られている紙には、こう書かれていた。 『養護学校』 横浜側と浦和側の境界の緩衝帯に養護学校の生徒を入れるというのだ。史上最凶の配置。 「いいんですかね?こういうの。」 「たぶん、世界初の試みだな。」 「人間の盾になれっていうことですかね。」 「怖いこと考えるな、浦和の運営は。」 試合開始が迫る。場内に一斉に3色のシートが掲げられる。ところが、ゴール裏の一部を除いて無言。ただ掲げているので、不気味なムード。しかも、すぐに選手が出てくるわけでもない。 「気色悪い。」 「新手の宗教みたいだ。」 「ねぇところで、ゴール裏に文字みたいの出てるけど。」 「崩れてて読めないな。」 「文字詰めが甘すぎる。」 と焦らされていたが選手が入場。スタンドが一斉に揺れる。フラッグがはためく。浦和の応援だけは、J初年度の、全てのスタンドで揺れるフラッグの印象を、いまだに保っている。 試合開始まで、ほとんどのマリーシアのメンバーは、ある程度の不安を持っていた。そんな不安をかき消したいがために、浦和の選手紹介で「井原」「路木」「城定」が紹介されるたびに 「頼むぞぉ〜!」 「信じてるぞぉ〜!」 の声を叫んだ。フェンス一枚を隔てたメインスタンドの浦和ファンは怪訝そうにこちらを見ていた。そりゃぁそうだ。彼らはエリアは選んだだろうが、私たちの近くの席を好んで取ったわけではない。 そんな面々が、おいおい、と言い出したのは開始早々の最大のピンチが去った後、左サイドの攻防、というか、攻に転じれば、いくらでも前に行かせてくれるじゃないか。浦和はボールについては来るがノーチェックで下がるばかり。しかも、ルーズボールへの動きが緩慢で、浦和ペナルティエリアの外のボールは、ほとんどがマイボールになるじゃやないか。 「おぉ、なんだこれは。」 「マジか?行けちゃうよ。」 「なんで?またマイボール。」 「うわっ!」 と信じられない光景に声を上げると、浦和ゴールキーパーの西部が不用意に、しかも手から行かずに脚で前に出てきてブリットがシュート。入ってしまった。 「うぉ〜!〜!〜!〜!〜!〜」 「やったぁわKLK おいB`おH`CおうおH!!!」 「すげえ〜〜!!」 と跳ねて身体をぶつけ合って大騒ぎ。それまで、座ってバカ話をしたり、「足元じゃなくてスペースへ!」などと小うるさい野次が飛んでいたはずなのに、得点したとたんの、この怖いくらいの暴れように、メインの浦和ファンは恐れをなしていた。 その後も、ボールが回る。ルーズボールは必ずマイボールになる。躊躇やお見合いの連続で、難なくゲームを支配した。序盤から浦和サポータにはフラストレーションの溜まる展開だ。向こう側のコーナーキックには、ひときわ大きなブーイング。 「さぁ、坊ちゃん!あんなに応援してくれてるぞ行け!」 浦和は、7バックで挑んでいるはずだが、まったく機能していない。戦線から城がボールを奪い取る。 「路木をプレゼントしたのには訳があるんだよ!!」 「行け城!!守備的フォワード!!!」 「点も獲れ!」 「なんだよ浦和の戦術ってのは。チッタだかピッタだかどいつもこいつも・・・今度はハッダやるぞ!」 とムードは最高潮に。だが、油断するのがいつものパターン。下手にボールを持てるので、ゆっくる時間をかけていてパスミスをさらわれる。それを繰り返すたびに、流れは浦和に傾いていく。なにしろエメルソンがいるのだから。冷や汗をかいたのは小原の不用意な緩いパス。特に川口へ戻すパスは、川口を見ずに、事前に頭に入れたポジションの感覚で蹴っているから速い球で蹴れない。そのためにエメルソンにパスをさらわれそうになる。以前に、数馬も同じようなプレーで何度もピンチを招いているので、これは指導者側の問題かもしれない。 浦和の攻撃はピッタとエメルソンがフロンターレにいたときの戦術そのまま。多人数で守って前線に送ってエメルソンが一人で決める。そのエメルソンを見事に完封したシーンがあった。立て役者は波戸・・・というのは普通のシーンで、もっと凄かったのは坊ちゃん。エメルソンは右(浦和側から見て左)のゴール前深くにまで入ってくると独特の動きがある。セオリーを無視ししたエメルソン独特の動き。ドリブルで右後ろ側に下がりながら弧を描いて中に入ってくる。ペナルティーエリアの角あたりまで戻ってきたら、素早く右足を振り抜いてシュート。この動きでJ2では何点も取ってきた。ディフェンダーは縦を切るし、当然、ゴールにまっすぐ突っ込んでこられても困るので、身構えるのだが、下がりながら中へ入ってシュートしてしまうので。が、そこはサッカーマニアなん坊ちゃんのこと。味方ディフェンダーが正面でエメルソンの勢いを止めると、戻ってきた坊ちゃんは、ペナルティーエリアの角のところに立つのだ。ひょろりとさりげなく立っているだけなのだが、それだけでエメルソンは下がってこれなくてどん詰まり。左脚では強いシュートは撃てない。さすが坊ちゃん。絶対に速報J2見てるな。 この日の坊ちゃんは不調のまま。ロングパスやセットプレーに切れはなかった。浦和がマンマークをつけてきたこともあって、真ん中にいるときよりも、サイドに流れてパス交換したり、前線で城よりも前の位置でボールをもらう体勢でいる方が、マリノス全体としてはポジション取りのバランスが良かった。そこで大活躍するのは、1点目のスルーパスを供給し、奮戦した永山だった。耳を裂傷し包帯を巻いた永山が守りに攻めの起点に中盤で大車輪の活躍をする。出血が激しく、途中交代かと思われただけに、その姿は感動的。そいういえば、もう一人の主役・布瀬主審は止血を命じておいて、入ってきた永山の手当の状況をチェックしないままにプレーに参加させていたな。 ということで、今日の主役・布瀬主審について。判定のバランスは取れていた。見え見えで流れを変えてしまった、本来はハンドのプレーの見逃しなどもあって、ややマリノスに優位な笛だったかもしれない。なので、大勢に影響は与えていないのだが、あまりに衝撃的な出来事が続出するので印象点が高い。永山の手当はイイとして、頭を打って外に出させたブリットが回復し入ろうとしても入れない。最初は気が付いていないのかと思ったが、どうやらプレーがとぎれるまで入れるつもりがないのだ。その間、マリノスは10人での試合を強いられた。逆に、浦和はエメルソンの脛当てが壊れて、強制的に外に出て脛当ての交換を命じられる。そして、またしてもエメルソンは入れない。入れてもらえないのだ。手を大きく振ったり、跪いてポーズを取ったりするが、決して入れない。あまりに長い間、入れてもらえないので、顔の割に心の優しいブリットが、2本脚を揃えてもの凄くオーバーに垂直にダイビングをして倒れてゲームを止めた。エメルソンはやっとフィールドに復帰した。なぜか、ブリットのダイビングは浦和のファールになった。 山田のファールにホイッスルが鳴る。お尻のポケットからカードを出す。 「おぉ赤だ!」 山田の顔の前に掲げようとして気が付いた。間違えた。慌てて胸のポケットから黄色を出し直す。警告の対象かどうかも微妙なファールだったが、いきなり赤いものを見せられてしまって、つぎに黄色が出たので安心したのか、山田は強く抗議をしなかった。その数分後、今度は波戸の危険な後方からのタックル。またしても、お尻のポケットからカードを取り出す。そこには赤いカードが入っているはずだが・・・やはり赤いカードが出てくるが、間違えた。黄色いカードを胸から取り出して波戸には警告。ヒヤリとさせられる。が、黄色が出たから、もう笑った笑った。普通ならカードもらうようなプレーに対して怒るはずなのだが。 さらに、ドゥトラが倒れる。が、ホイッスルが鳴らない。布瀬さんに注文をつけるドゥトラ。対応する布瀬さん。その背後でゴール裏から見ても明らかなマリノスのファール。布瀬さんはピッと笛を吹くが、おい、ちょっと待て。 「てめぇ〜勘で吹いただろう!」 「絶対に背中じゃ見えないぞ。」 「今のは絶対にファールだけど、絶対に見えてないぞ。」 と、まぁ、みんなファールということは認めているのだが。 井原を中心とする浦和ディフェンス陣は崩れたまま。しかし追加点が奪えない、いつものようなまどろっこしい展開が続いた。布瀬さんじゃなかった退屈していたかもしれない。井原がボールを持つと城が突進する。何度かボールを奪うチャンスもあった。 「城!行け!右サイドをカットしろ!!」 「城、何が起きるかわかっているだろ!行け!」 「井原に左脚のインステップで蹴らせろ。」 「井原から城定にパスさせろ!」 「浦和名物数々あれど・・・城定のインサイドキック。」 「あ〜やったやった。」 城定のインサイドキックでのパスは狙ったところへは飛ばずにタッチを割ってマリノスボールになった。 「あいかわらずだな城定。」 「凄い。」 「城2つで城定。城の2倍凄い。」 「ん?それ意味不明。」 浦和はパスミスが多く、ドリブルで攻めろ!という意味か、田中と吉野というドリブルが得意の選手を投入する。しかし、波戸と松田、それに永山と遠藤が、ドリブルに勢いが突く前に止めてしまう。終盤戦にはいると、守備も安定感が増して安心して見られるようになってくる。逆に、浦和は焦りからか、城や、途中投入された木島にボールを奪われるシーンが増える。ついに井原はヘディングの競り合いで木島に負ける衝撃のシーンまで見せる。 試合も大詰めで、またしてもトワイライトゾーンに突入し、浦和の選手が勝手に転んで止まりかけているボールを城が拾って坊ちゃんがスルーパス。中央に動いた城が3人も浦和ディフェンスを引きつけていたので、どフリーのドゥトラは西部と1タイになり、ファーサイドのネットを揺らした。1点目以上の大揺れに揺れるマリノスのサポーター席を後目に、メインスタンドの浦和ファンのかなりの割合が、一斉に席を立った。 ついに、直接対決に勝利した。 「本命降臨」 帰りは、どう見ても駅までの道がギュウギュウ詰めで、駅前は立ったままホームには入れずに待つはずの様子。しかも、その大半が、負けて気分お悪い人たち。しばらくスタンドにいることにした。すると、「小野伸二DVD」上映、「埼玉サッカーの歴史(浦和降格については何も触れてませんでしたが)」上映、「世界のリフティングチャンピオン・土屋兄弟」ショウ、などなど盛りだくさんのプログラム。 駅近くでは、やはり列は詰まった。早い時間だったら、かなりフラストレーションが溜まっただろうが、警察はアニメ声の婦人警官によるアナウンスでストレスの緩和を挑んでいた。電車は檄混みだったが隣の駅の東川口でガラガラに。さらには赤羽岩淵でスカスカに。すると、 「ねぇ、そろそろそいいかなぁ。」 「うん、いいんじゃないか。」 「しかし、埼玉越えると、ほんと人がいなくなるな。」 声が大きくなって 「しっかし、浦和の守備って酷でぇえなぁ。」 浦和のマスゲーム 戦利品を素早く確保する今日のポイント ●衰えとはイヤなものだ。 今日のお値段
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