maliciaのプロフィールはこちらへ
![]() 第12節 鹿島アントラーズ 残留争いのホントの厳しさがヒシヒシと伝わってきた。試合終了を告げるVゴールがマリノスゴールへ流れ込むと、スタジアムは、これまでにない史上最も重苦しい空気に包まれた。勝てるゲームだった。2-0もしくは2-1で終了しているはずの試合だった。しかし、結果は1-2。こんなことなら90分で負けておいた方が良かった、と思えるくらいの疲労困憊の延長Vゴール負け。最後の失点は仕方ない。あのコースにボールが出れば決められる。 スタジアムは舞台。緑の芝を踏んでいる間は、選手はチケットを購入して観戦に来ているスタンドのファン・サポーターへエンターテイメントを提供しなければならない。芝居における舞台と同じだ。 舞台にいる間は、何がおきようとも、全ては観客へプロとして魅せるもの。例えば、アイドルタレントが女優としてのキャリアを改めて歩もうとし舞台に立ったとする。しかし、その舞台でセリフを間違えて満足な演技が出来なかったとする。その時、その女優、いやアイドルタレントが自分の出番の中で舞台袖から去るまでに舞台上で頭を抱え、本来は上手へ去るはずが下手へ去ろうとしたら、観客は、そのアイドルタレントを評価するだろうか。アイドルタレントとして客席から熱い目で見つめるファンは「かわいそうに。頑張れ。」と思うだろう。しかし、女優としてはどうだろう。 この日、筋肉疲労から出場が微妙と報じられていた松田は、試合開始早々に、意気込みを見せつけるオーバーラップを見せ鹿島ゴール前に突進した。選手もサポーターも鼓舞された。しかし、長くは続かなかった。時間が経つに連れて、彼のパフォーマンスは衰え、普段であればワンタッチで味方に捌き、リターンをもらって前線へドリブルで駆け上がるようなボールをも、雑な狙いの定まらないクリアで返すシーンが目立った。その姿に、この試合の危機をサポーターは感じていたはずだ。 あの、いつものように誰もゴール前で競り合わず簡単に失点した1点目。空中を動くボールはペナルティリア内で3人の鹿島の選手を経由してゴールに飛び込んだ。3人の選手は誰一人マリノス選手のプレッシャーを受けることなく、競り合いがないままにボールを思い通りにゴールへと運んだ。その後は防戦一方。ナビスコカップ決勝との決定的な違いは、松田に象徴される疲れ。 「90分間で勝負を付けなければ必ず負ける。この試合は持ちこたえることは不可能だ。」 それは、諦めではなく勝ち点3への願い。そして希望。それは叶えられなかった。 試合終了後、うつむく選手たちの中で天を仰ぎ頭を抱える松田。大きく首を振り視点は定まらない。一人チームを離れてスタジアムから立ち去ろうとする。それは、舞台の上でプロが見せるべきパフォーマンスではない。その場にいることが苦しかった松田自身の弱さを露呈しただけなのだ。ところが、それを非難するものは誰一人いない。私自身も、そんな松田に声援を送り涙を流した。悔しさを隠しきれない「最も頼れるはずの男」とスタンドは気持ちが、すっかり完全にシンクロしてしまったのだ。 罵声、ブーイング、呆れ顔、怒り、失笑、椅子を殴る音・・・。曽ガ端がペナルティーエリア右隅にポジションを取っていた城の足元ピッタリにボールをプレゼントしてくれた。この贈り物は城がドリブルで送り主を完全に抜き去ったときに、とてつもない大きな期待に膨らんだ。苦しい展開の中、坂田のディアス級の左脚ミドルシュートで先制し、是が非でも追加点がほしかった後半に振って沸いたような、片思いだった相手が誕生日を勘違いしていて唐突に包みを抱いて現れて自分に告白してきたような信じられないビッグチャンス。 シュートの瞬間、彼は何を考えたのだろう。プレッシャー?翌日の新聞?妻への報告?宙返りパフォーマンス?明日のトークショー?左脚にボールをセットした彼は、バヤドリードで初得点を挙げたときと同じように左脚の内側でボールを擦って左外から地を這うようなシュートを曲げて入れることを選択した。利き足ではなく左脚。ゴールキーパーのいないゴールへ技巧的なボール。スペインから帰国後のうっぷんを晴らすにふさわしいシュートを彼は頭の中で描いた、が、現実にはその画は描けなかった。ボールは曲がらず、シュートはゴールポストの外を通過した。抜き去った時点でさりげなく利き足の右脚でゴールにまっすぐ流し込む方が、簡単であるし、私はカッコイイと思うのだが彼は違ったようだ。難しい選択を逢えて選んだのだ。ゲームの展開はさらに厳しくなった。 この日は収穫がないわけではない。平間は見事なクロスを入れたし縦へのチャレンジも積極的だった。若干センスのなさを感じさせるプレーがあったとしても、それには目をつむろう。小村は復調した。鈴木は決定的な仕事を出来なかった。上野も次節からは何とかなるかもしれない。坂田のゴールは自信になるだろう。榎本も好セーブを見せているしパス回しも満足とは言えなくとも何とか見られるレベルにはなっている。サイドチェンジもある。先制点が取れれば磐田戦も完敗には追い込まれないだろう。 しかし、リーグは、やはり総合力の勝負なのだ。課題はそう簡単に全て解消されるわけではない。控えの層の薄さは相変わらずだ。3人のブラジル人の控えは、いまだに実力が2枚も3枚も落ちる。小原は中央のポジションを松田に明け渡した。この日も不用意なプレーが多かった。この若さにして簡単に相手を掴むのは考え物だ。そして状況判断が甘すぎるパス。延長戦に入って直後、2本連続の鹿島選手足元ピッタリへのパスミスは多量の冷や汗をかかせた。右サイドに入った古賀は広島戦と同様にゲームに参加できなかった。素晴らしいクロスが1本あったものの、それをマイナス方向に大幅に上回る不可思議な動きの数々。ディフェンスもオフェンスも、適切なポジションやプレーの選択が出来ない状態なのだ。この大切な終盤戦でリーグを闘うレベルにはないだろう。 前半に左サイドから右サイドの奈良橋へ大きなボールが送られる。しかし、頼れるドゥトラ様は奈良橋よりも早くボールを追う。その時、背後から奈良橋の手が伸びてドゥトラ様の後ろ襟を掴んだのだ。この鹿島らしいプレーにバランスを崩しかけたドゥトラ様だが、なんとか踏ん張り走る。邪魔な手を振り解くために手を出す。ここぞとばかりにスピードを落とす奈良橋。主審のホイッスルが鳴る。鹿島のフリーキック。怒るスタンド。笑っているドゥトラ。 「なんでなんだ!?」 「逆だろう!!」 の野次が飛び交う。主審はボールの出所の左サイドにいた。それはそうだ、ボールの近くで判定しなければならない。遙か遠くで奈良橋が後ろ襟を掴んだなんて、普通は考えないだろう。2人が競り合っていたのはライン際。では副審はどうだろう。副審はドゥトラよりも数メートル前を走っていた。 「副審!!!!どこ見てんだぁ〜〜〜〜!!!!!!」 「たぶん、オフサイドラインだと思うよ。」 見られていないと思って行う反則。これを連発するのだから判定は難しい。繰り返し普通の場面で行われる肘打ちを全てチェックすることもできまい、と書けば判定で負けた?と感じられるところだが、判定は終始不安定で、どちらが有利と言い切ることは出来なかった。松田が抜かれればゴールまで一直線の場面で両手を使ってファールした場面は100%レッドカード退場のはずだが提示されたカードはイエローカードで助かった。本来であればドゥトラもイエロー2枚で退場だったかもしれない。ラインの裏を狙う鈴木に向かって背後から体当たりを狙ったドゥトラ。もつれて2人は倒れた。 「しまった!」 「なんてことしてくれるんだ!!」 「あ〜イエロー?レッド?」 出されたカードはイエロー。ところが出された相手はドゥトラではなく鈴木だった。ドゥトラに対して肘を出したかららしいが、わざと肘を出していったのならば、それはイエローカードではなくてレッドカードのはずだ。鈴木へのイエローカードは妥当とは思えない、が、本心はドゥトラへのイエローカードが正解ではないかという気持ち。複雑な心境だ。 今日、判定に関して確実に言えることは1つだけ。「鹿島戦は審判にとっては受難」。そして、この先の激しくなるであろう3戦でも何が起きるかわからないのだ。 「さぁ次節はアウエーの磐田戦。ナビスコカップに勝って三冠は阻止しましたから、次は二冠を阻止しましょう。」 試合後のスタジアムナビゲータの、このセリフに共感を覚えた人はいたのだろうか。 今日のポイント ●いつもの鹿島戦でいつものように負け。 今日のお値段
|