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![]() 第1節 浦和レッズ アントニオ猪木の「イチ、ニ、サン、ダ〜」というかけ声を埼玉スーパーアリーナで聴いた瞬間にワールドカップイヤーの幕は開いたはずなのだが、やはりスタジアムへ通う者の年明けはリーグ戦の開幕戦。今日こそが元旦のような気分で朝を迎えた。試合前のカルロス・ゴーン会長のセレモニーは、坊ちゃんのパスを受けて豪快な低く押さえたシュートがゴールネットを揺らした。 「うぉ!うちのフォワードより凄い!!」 試合が始まれば、何やら昨年とは違う中盤でのパス交換が期待を大きく膨らませる。浮き球をペナルティエリア内でゴールに背を向けて受けた清水は、振り向きざまにシュート。惜しくもGKに弾かれたが、的確に枠を捉えていた。 「良いぞ清水!!!」 「今年の11番は違うぞ!!」 ところで、城はどうしているのだろう。 「もしかしてハットトリックとか決めてるんじゃないだろうな。」 「でも、そうならそれで完全移籍してくれれば高く売れるじゃん。」 「いや、待て。城がハットトリックを神戸で決めたら、去年の城は、城が悪いんじゃなくて、うちのクラブが悪いってことになっちまうぞ。」 「そりゃイヤな感じだ。」 三上の名前がすんなりとまだ皆の口から出ない早い時間にコーナーキックからのゴール。決めたのは俺王ことウイル。浦和の守備の要、井原は中澤にきっちりとマーク。その中澤がキックの瞬間にゴール前から後ろに下がると、そのスペースに俺王が入ってきて飛んだ。中澤につられて戻りかけた井原が慌てて戻るが、まだ幾分太りすぎの俺王に、無惨にも跳ね返されてしまい、ゴールネットが揺れたときに井原は芝生の上で両手両脚をついていた。このコーナーキックは中澤を狙って入れてきたモノだが、我々の声は、中澤へのボールを要求するモノばかりではなかった。 「中澤頼んだぞ!」 の声を上回る声援を受けたのは 「井原の頭!!!!」 「井原!ニアに入れ!!」 「中澤か井原を狙え!!」 その絶大な人気に気をよくしたのか、前半途中で井原はハイボールの処理を誤り、バックヘッドでGKと俺王との間に、見事なパスを供給してしまう。 「やあったぁ!!!」 「よし!井原!!」 大歓声が上がるが、不幸にも今年に入ってマリノスに加わった俺王は井原が味方であることを知らなかったようで、ボールの処理にもたつき、ゴールを奪うことはできなかった。 今シーズンが始まる前から話題になっていたセットプレイのキッカー。前半に迎えた直接狙える距離のでフリーキック。ついに始まった。ボールを前にして、坊ちゃんと俺王が長い相談。坊ちゃんは俺王の腰に手を回してひそひそと何か。俺王は偉そうな態度で言葉を返す。長い長い相談の後に、ボールから離れていったのは俺王。 「あ、俺王譲った。」 しかし、俺王は離れ際に何か坊ちゃんに言葉をかけていた。 「いや、譲ったと見せかけて、『俺に合わせろ』とか言ってんじゃないのか。」 期待の坊ちゃんのフリーキックは壁に当たる。以後は交互に蹴ることになったようだ。次のフリーキックの時には、間髪入れず俺王が蹴る準備をしていた。こんな余裕でゲームを支配し、楽勝の開幕戦に思えた。何しろ浦和の攻めが消極的。それに気がついたのは、浦和の最初のコーナーキックの時だった。 「あれ、なんかゴール前に赤い選手が少ないぞ。」 「遠くから走り込んでくるのか。」 「いや違うぞ。みろ、ハーフウエーに4人も残ってる。」 「うわぁ、俺王に2人も付くのかよ。」 「俺王と清水がいるだけでぶっちぎられるからな。」 そして、なんだったんだろうか、福田。ドリブルに鋭さはなく、パスは左右に捌くばかり。 ところがだ、試合は、そうは簡単には進まない。前半の残り時間が少ないところで松田が2枚目のイエローをもらって退場。緊迫感が走る。布陣を波戸センターに、左右を中澤、三上で執るが、付け焼き刃なようで、途中でセンターを中澤に代えたり、ナザを下げたり、最終的には小原を入れたり、と落ち着かない。結局は中澤の人への強さと高さ、そしてスーパースピードディフェンダーの本領を今回も発揮した波戸のカバーリング能力で守りきった。前半の残り時間は俺王までが自陣に下がって全員で凌いだ。 後半にはいると、守る時間がさらに長くなる。俺王はターゲットマンにとして、前線で受ける必要があるために中央前線で、どかんと構えるが、次第に減量の影響なのか、全く動きが止まってくる。ボランチと最終ラインがボールを奪っては前線に送るが、ボールは繋がらず、浦和がさらに攻めに来る。その繰り返しとなった。だが浦和の攻めは単調で、ピンチらしいピンチはなかなか来ない。前半にラインの裏へパスを送られて、そこへ走り込んできたエメルソンがシュートを放ったときは、もっとも危険で、榎本のセーブでなんとか交わしたのだが、後半も途中までは、そのようなシーンは皆無。早めにエメルソンにボールを預けてしまうので、あとは独りよがりなドリブルで突っ込んでくるのを複数の選手で追い出して囲んで奪えばいいのだ。そんな状況は、浦和が田中と永井を投入するまで続いた。しかし投入後も、この2人は、エメルソンと福田に遠慮するように、両サイドでドリブルするだけだから、大きな問題にはならなかった。 そうはいっても、守りっぱなしというのは、あまり心地の良いモノではない。前線でボールをキープして劣勢を跳ね返すために、清水に代えて安永を投入。期待に応えて、幾分は浦和陣内でボールが落ち着くことも多くなった。ところが、その後、ボランチのナザが足を痛めたときは、不安なムードがスタンドを覆った。何度か動きを中断し、ついには、こちら側のタッチラインから数メートルのフィールド上で倒れて動けなくなった。呼ばれる担架。その時、スタンドの上の方から、かなり年輩の男性らしき声が響いた。 「担架!ゆっくり!!!」 怪我人が苦しんでいるのに、「担架ゆっくり」という常識外れの野次に皆気が付いた。そうだ、ここで間を空けてペースを取り戻さねば。そして、皆が騒ぎ出した。 「急ぐな!」 「ホームなんだからゆっくりと!!」 とはいっても、やはり担架だから走ってくる。ナザを早く運び出さなければならない。 「急いで乗せるな!」 「怪我に響くからゆっくり運んで!!」 「急いじゃダメ。落とすから。」 でも、やはり担架なのだ。わずか数メートル運ぶだけで、こちら側のタッチラインからフィールド外に出ることができる。担架は、当たり前だが、こちらに動き出した。すると・・・ 「馬鹿!!!!こっちじゃない!」 「あっちから出ろ!!!」 「向こうだよ!向こう!!」 浦和の決め手を欠いた攻撃もあって、90分間を無失点に押さえることができ勝利。この喜ばしい開幕ゲームの中で、少し気がかりなことがある。それは坊ちゃんだ。序盤こそ、清水や久永とのコンビネーションでボールを素早く回したが、劣勢に立たされた後半は、昨年と同様に、一人でボールを持ちすぎて囲まれるシーンが目立った。しかも、ボールを奪われるか、さもなくは、相手の頭上を越す浮き球で局面を打開しようとして奪われて窮地に陥るというシーンが続いた。なぜ、仲間を信じられないのだろう。結論は、奥が出場する3節までは出せないが。 試合後に、フィールドからスタンドへ手を振る選手の中で、ひときわ大きな声援を受けたのは、獅子奮迅の活躍を見せた中澤だった。 「中澤!!良かったぞ!」 「お前がいたから勝てた!!」 「代表に残れよ!!!!」 「あれ?みんな去年までって代表の話題に中澤って出てたっけ?」 サポーターなんて、身勝手、身びいきなもんである。 「浦和ってスモールフィールド、トライアングル、アイコンタクトができていないね。」 「うひゃぁ〜それって10年前のオフトジャパンのときの流行語じゃん。」 今日のポイント ●サイドチェンジが少なくパスワークにはやや不安。 今日のお値段
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