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![]() 第2節 名古屋グランパス この日、坊ちゃんのFKは冴えていた。遠くに雪を冠した南アルプスを臨み、北イタリアを連想させる美しく機能的な豊田スタジアムのフィールドで、直接フリーキックが、つぎつぎに名古屋ゴールを襲った。最初は交互に、奇数は坊ちゃんが、偶数は俺王が蹴った。後半からは、倒された方が蹴ることになったのか、それとも遠目は全て坊ちゃんが蹴ることになったのか。 ところが、ある時、その約束を俺王が破った。坊ちゃんがセットしたボールを勝手に俺王が手で動かしてセットし直し、蹴ってしまったのだ。ベンチに向けて不満そうな視線を送る坊ちゃん。そして、両手を広げて「なんでなんだ?」「これでいいの?」と大きくゼスチャーで語ること3回。フィールド内に不協和音が広がりかけた。その後、俺王は球離れの悪い「俺ドリブル」を披露した。 坊ちゃんのFKは本当に久しぶりに冴えていた。若干遠い距離から2つのFKが辛うじて楢崎の指先によってはじき出された。スピードも速く、コースも的確。流れの中のプレーも含めて、頼りになる坊ちゃんが帰ってきた。そして残り時間がわずかな大詰めの時間にチャンスはやってきた。ボールをセットする坊ちゃん。しかし俺王が近づいてくる。何事か言葉を交わす。またしても俺王は自らボールを手にとってセットし直す。しかし、今回は譲らない。譲らないという意志をベンチへ振り返っての視線で監督に送る坊ちゃん。少しの時間。言葉。結局、名残惜しそうに俺王がボールから離れた。しかし、俺王は、ただ離れただけではなかった。ボールから5メートルほど内側のポジションをとり、坊ちゃんに「ここに出せ!」と指示しているではないか。さすが俺王。こんなポジションを取られ、名古屋のディフェンスは壁の周りの選手のポジションを代えた。楢崎も足の位置を修正した。だが、ゴール裏は知っていた、1階も2階も3階も。こんなときに、坊ちゃんは、意地でゴールを狙ってくることを。しかし、フィールド上は、このやりとりの間に、ほんのりまったりとしたエルニーニョのような邪悪な空気ができてしまったようだ。あの時間は妙に長かった。しかも、名古屋の側からすれば、単なる相手クラブの内輪もめに突き合わされているようなモノだ。そこに油断が生まれたのか、ウイルのポジションが良かったのか、ニアサイドに突入していった中澤らに惑わされたのか、坊ちゃんのFK弾は楢崎の指先からさらに遠い弾道を素早く描いてゴールネットを揺らした。 ボランチの上野とナザからの大きな展開が前節と比べて目立つ試合だった。昨年のゴールとほぼ同じ位置からの、同じような地を這うミドルシュートは、わずかにゴールポストの外だった。それでも、今日の上野には、なにかをやってくれる期待感があった。膠着した苦しい試合ではあったがボールは動いた。右の波戸は攻撃的なポジションを取ることが多く、昨年までと同じ3バックのような陣形だった。左の三上は相手ラインの裏への飛び出しはセンスのなさを露呈し、効果的なクロスボールを供給することができなかったが、ウエズレイらのドリブル突破をくい止める役割は十分に果たした。中澤は空中戦にほとんど勝ったし中央を上がることも2回。そして、やっぱり違和感のない馴染み方。榎本も素晴らしいプレーを見せた。完璧ではないが、今年は期待が持てる。ただ、昨年はシーズン当初には名前も知らない選手達が多数。今年は著名な選手達を多数補強。だが、やっているサッカーの基本展開は大きくは変わらない。これは良いことなのか。 FKの多い試合だった。後半途中から名古屋は守備が後手後手になり始め、不用意なファールを連発した。 「きたねぇぞ!トヨタ自動車ラグビー部!!!」 古賀の肘打ちには落胆した。しかし、今年の岡田主審はフィジカルコンタクトに厳しい笛を吹く。第一節の判定基準の傾向を、この試合も確実に継承していた。カードもきちんと出た。これが、昨年までの岡田さんのファール基準の緩さを自ら露呈してしまっているのは皮肉なものだ。 もう一点とれそうな勢いの中で90分のゲームは終了した。叫びをあげるゴール裏。嬉しい連勝だ。どんなに流れの中でゴールが無くても、戦術的な目新しさが無くても、売っている弁当が唐揚げ1つに残りのスペースをご飯と焼きそばで半々にした炭水化物セットであっても、味噌串カツが一口目で「まずい!」と声を出させても、実りある勝利、そして、実りある遠征だった。帰りのバスの列でK林さんらと合流。「あのプレーが良かった。」「このスタジアムは素晴らしい。」そんな会話が盛り上がる。ただ、浮かれるほどの出来でもない。 「さぁ、勝ち点6だから残留まであと8勝。優勝とか考えちゃダメだ。まずは目標は残留。その次の目標はスポンサー維持。ひとつづつ目標をクリアしていこう。」 みんな満面の笑みだった。 ![]() 試合前に撃たれたラザロニ、素晴らしいスタジアム、この距離感と急角度のスタンドを見よ。 今日のポイント ●見せしめ警告を受けた清水は不運。その後、判定はほぼ公平だが、全体には厳しかった。 今日のお値段
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