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![]() 第3節 FC東京 坊ちゃんの、相手ディフェンダーを数人引きずるような直線的なドリブルがファールを誘う。今年の坊ちゃんは好調だ。特に、この試合は、こねくり回すようなボールキープや無理して股抜きを狙うプレーが無く、奥や清水やドゥトラの動きの後にできたスペースに、効果的にチャレンジしていた。 前半早々、中央やや右サイドで倒された。このチャンスのフリーキックに、蹴りたがる俺王を制して蹴り込んだ坊ちゃんのフリーキックは、ポストの脇に低く速いボールでねじ込んでいったが、惜しくもGkに阻まれた。次のチャンス。この日、10枚のイエローカードが飛び交う微妙な試合。抗議するガスの選手達。マリノス側も梅本主審を囲む。やっとの思いで主審が、それら選手を整理すると、輪の中から現れたのは、ボールをセットしている俺王だった。しかし、やや距離があり右サイド。俺王は、近づいてきた奥にキッカーを譲るとゴール前へ。すると、奥に近づいてきた坊ちゃんが、あっさりとキッカーの座をゲットした。 「おいおい、いいのかよこれで?」 「ずいぶん、いろいろと出てくるな。」 「今度はドゥトラとかも出て来るんじゃないか?」 「だってドゥトラ決めてるんだぜ」 「そうだよ、神戸で決めてるんだから。誰のおかげで残留できたんだ!って恫喝されたらどうするんだ。」 「そうだよ、誰のおかげで今年も東戸塚で練習できてるんだって。」 「クラブハウスはドゥトラ・ハウスって呼ばれてるんだ。」 「なに?じゃぁ秘書はナザか?」 「大丈夫か、あいつのパスポート。」 「さぁ。みんな仲良くやろう!」 序盤に数本のクロスを右から入れられる。しかし、ピンチらしいピンチはない。そんな試合展開だったが 「いやぁ榎本、もっとちゃんとコーチングしないと。ディフェンダーと重なることが多すぎ。あんなことやってると、そのうちやらかすぞ。」 K林さんが、何度か試合中に口にした言葉。その不安が現実になったのが89分、つまりロスタイムの、あの失点の場面だった。榎本は数歩前に出ていて止まった。あのポジションは真正面にでもボールが来ない限りは、ほとんどボールを触ることができない場所だ。競り合いをディフェンダーに任せてライン上で構えるか、前に出て自らがボールをパンチングに行くか、どちらかを選択しなければならなかったはずだが、途中で止まってしまった。そして、その榎本の前をニアで合わせたヘディングシュートは通り過ぎてネットを揺らした。120分間で、完全に崩されて枠に打ち込まれたシュートはゼロ。この失点さえなければ完勝といっても良い試合だった。勝ちゲームを失った手痛い失点だった。 「去年の水色にみんな任せろ!」 開始早々の野次。逆に、ちょっとセンスに欠けるガスゴール裏の能活コール。 「まぁそういうのもいいけどよぉ。それより俺、ガスのGK誰だか知らねぇよ。え?あぁ、南くんだりにポジション奪われたヤツか。」 今年は、昨年までとは雰囲気が違う。 中盤でのボールはテンポよく回った。延長戦に入れば疲れもあってペースは落ちバックパスも目立ったが、90分間のパス回しのテンポは、今シーズンでは間違えなく最も良かった。上野は中盤の底でボールを受けるとワンタッチかツータッチで左右に大きく展開した。奥、ドゥトラが加わって、味方選手が先手を取ってスペースに動いたことでパスの選択肢が広がった。特に、ドゥトラからは逆サイドや俺王に長いボールを供給し、小さな展開の中盤構成にアクセントを加えた。奥、俺王、坊ちゃんのパス回しもダイレクトパスを交えて小気味よかった。これらの展開と守備面での貢献。これをフィットしていると考えるか。ドリブルで崩すシーンが見られなかったから奥でなくても良い、つまりフィットしていないと考えるか、奥については評価が別れるところ。昨年、東京戦でハットトリックを決めている清水だが、この日はまったく存在感すらなかった。これは清水の問題というよりも、パートナーの問題だろう。俺王に預けようとしたボールは、ほとんどがジャーンに跳ね返されるか俺王のファール。そこから次に清水へはボールは回ってこない。強いFWで局面を打開したいところだが、控えでベンチにいたのは、これも裏へ勝負するタイプの安永ただ一人だった。 ラザロニのサッカーが見えてきた。これは負けにくいサッカー。名古屋戦でも、相手の出方を予想して3バックと遠藤の起用を決めたことを明かしている。この日は、東京の攻撃の頼みの綱とも言える佐藤と小林の両ウイングを、ほぼ完封した。両者へはボールが回ると、波戸とドゥトラが素早く1対1のディフェンスの体勢を整えた。スピードに乗る前に前に立って勢いを止める。これで、東京の「ボールを奪って素早く前方に畳みかける攻撃サッカー」は翼を失った。個人技術だけで対面するなら負けるわけがない。組織は苦手でも個人は強いのだ。逆に、波戸とドゥトラは相手陣内深くにまで攻め入るシーンは少なかった。坊ちゃん、奥、上野などがサイドに流れるケースが多かった。これは、おそらく約束事だろう。だから勝つために、腰に不安のある波戸に代えて久永投入なんて選択肢は考えていなかったのだろう。そして、攻撃面での約束事が感じられたのは、このほかにはセットプレーの時のニアへの入り方くらい。あとは、個人の才能にお任せのような感じだ。逆にマリノスのセットプレー時に、東京がセンターサークルに3人を残すと、こちらは足の速い選手が3人から4人で囲むなど、守備面ではスカウティングに基づいたプランが感じられた。 120分を終える。残り時間わずかになったとにバックパスが続いたのが大いに不満だったが、終わってみれば三節までで勝ち点7。昨年と比べれば天国のようだ。しかし、この日は勝てたゲーム。悔しがる。 「まぁでも順調、順調。まず目標の残留に一歩前進。」 「でも、けっこう面白かった。」 どうやら、みんな、まだ豪華なメンバーの実力に半信半疑だ。 今日のポイント ●ボールの動きの止まらない好ゲーム。 今日のお値段
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