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![]() 第8節 ベガルタ仙台 なんという心地よさ。 ワールドカップ開けの初戦は楽しみであり不安でもあり。試合前に三ツ沢で集まった皆の笑顔が、帰りにも見れるかどうかは自信が持てない先発の布陣。しかし、先制してからは完勝ペース。残り時間わずかになってからは、相手は戦意を喪失した。 ワールドカップが終わり初めての試合が三ツ沢。思えば日本のプロサッカーは2002年の自国開催成功を一つの目標として、常に掲げてきた。「ポスト・ワールドカップ」の再スタートは、1993年にJリーグの初めてホームゲームが行われた三ツ沢がふさわしい。また、感慨深いものがあった。が、それは一瞬の気持ちであって、心のどこかには、皆、お祭りムードが残っている。 「おはよう〜。決勝戦以来だねぇ〜。」 「あっ久しぶり!大阪で逢って以来だ。」 「どうだった?韓国は?」 挨拶はワールドカップから。遠方に観戦に行った土産を渡したりスタジアムで購入したTシャツを着ていたり。完売で混雑が予想された三ツ沢は、開門前には長蛇の列だったが、誰もが話題に困ることはなかった。 「黄色が多いねぇ。」 「遠いから早く着いちゃったんじゃないの?早く来れば勝てる訳じゃないし。」 列で近くになった仙台サポーターに不意に聞かれる。 「小村には、今日は拍手ですか?ブーイングですか?」 「え?あんまり関心ないなぁ。抜けられたダメージとかがそんなに無いし。」 仙台では絶大な人気を誇る小村。横浜は放出を後悔しているだろうなんてネットでも書き込みをたくさん見かけているだけに、この答は彼にとって意外だったようだ。聞いた相手が悪かった。「無関心」という答は想定外だったようで、ちょっと哀しげな顔で去っていった。それに追い打ちをかける声 「本当の敵は清水だ!!」 予想どおり、というか予想以上にスタンドは大混雑だった。さすがに完売14,762人。これまでの三ツ沢の最多入場記録(以前は2000年のセレッソ戦)を更新した。そして、仙台サポーターが座席に余裕を持って陣取ったことも混雑に輪をかけた。なかなか、あちら側には行く気が起きないだろう。それでも、試合開始前に仙台サポーターは席の移動と席詰めを行ってコーナー付近の座席をマリノスサポーターに譲ってくれた。 だが、それでもメインスタンドの一角に空席があった。 「あれがバイロム社の空席問題かぁ。」 仙台側の座席も満席になったもののバックスタンドとゴール裏は通路にもびっしりと人が埋まった。 まだ試合開始にかなりの時間があるが仙台側が待ちきれずに歌い始める。 「おいおい早すぎるぞお。」 「ワールドカップなら、まだアディダスのCM流してる頃だ。」 「だいたい黄色いシャツならみんな強いって訳じゃないんだぞ。」 「ブラジルなんて比較するなよ贅沢だ。」 マリーシア・コアメンバーは声を揃えて 「ニッポン!エクアドル!ニッポン!エクアドル!」 選手紹介が始まる。仙台の選手紹介では小村の紹介に拍手。小村コールはないものの、ふだんは拍手が起きる場面ではないから、十分にリスペクトが感じられた。が、それ以上に大きな音は岩本。ゴール裏を中心にブーイング。さらに、最後に「監督、清水秀彦」には「ブ〜!清水辞めろ!!」の絶大なコールがマリーシア・コアメンバーから送られた。 清水辞めろ事件・・・もう9年も前のことだ。 ワールドカップの中断で、前半戦の快進撃のムードはない。坊ちゃんも抜けて別の布陣になっている。しかも今日は怪我人が多い。出場停止も。ツートップが坂田と阿部というのは不安以外になんと表現すればいいものか。ところが、こういう場面に空気を変えてしまう男がいた。将軍・松田直樹だ。試合開始早々に中央をドリブルで切り裂き左脚でのミドルシュート。急速は鋭かったが弾道はクロスバーの上へ。それでも、気迫はゴールマウスに向かった。不安を抱えるフィールドの選手達とスタンドは、これで一気に気分を変えて仙台のゴールマウスに迫った。 そして、もう一つ、試合の流れを変えたプレーがあった。それは何でもないバウンドしたボールを手でキャッチせずに頭でトラップし誤り、あわやゴールに入れかけた仙台のゴールキーパー高橋範夫の軽率なプレーだ。 「なめてるのか?」 あのプレーで、仙台には気持ちの隙がいくらでもあることが発見できた。これなら勝てるというムードが広がった。 「こいつドキドキしてるぞ!!今のうちにシュートを打ち込め!!」 その後、高橋範夫 はキックミスなどの細かいミスを連発した。 高橋範夫 のミスから攻めの時間が長くなった。阿部は危険なプレーで警告。 「おいおい、高校生がやるプレーかよ。」 やや激しくなってくる。左サイドでマルコスが倒れる。主審がカードを取り出す。イエローのカードを目の前に出されたのは明らかなシミュレーションを行ったマルコスだった。 「あ〜あ〜トッティ〜!!」 この野次を飛ばしたのはユベントスが好きな永野君。今年はローマの10番にはユベントスファンは手厳しいぞ。 ワールドカップ明けの効果だろう。両クラブとも積極的な攻めを見せる。中盤でも激しいぶつかり合いがある。そんな中で、ヒールキックやスルーパスの豊富なアイデアを見せる。だが、失敗するときもある。 「あ〜もう、みんなワールドカップ見すぎだ!!!真似ばっかりしちゃダメ!」 と言ってる間もなく、今度はファールの際どい判定。この判定には不満だ。 「審判もワールドカップ見すぎ!!誤審まで真似しちゃダメ!」 しかし、前半は、それほど良いとは言えなかった。中断前までの小気味よいパス回しが見られない。そして奥のボールタッチが少ない。本当に少なかったのかは解らない。髪型が変わってマリノスの背番号30代は見分けがつきにくいからだ。しかし、中断前に奥が見せていた両サイドでパスが往復しながら崩す展開は影を潜めたのは間違えない。 後半にはいると、奥のドリブルが目立つようになってきた。足元のパスの時間は多かったが、突然のスルーパスで坂田が裏に抜けるシーンも多くなった。みなが持ち味を出し始めた。ただ、攻めに欠けていたモノと言えば左サイドのえぐり。久永はプレーが窮屈そう。良いクロスもあがらない。これは、今後のポイントになりそうだ。ドゥトラの出場停止は極力回避しなければならない。 先制点は奥。坂田のシュートがはじき返されたところを冷静に決めた。この試合のカギになる2人で決めてムードは盛り上がる。その盛り上がりをさらに倍加させたのは岩本だ。岩本と言えば、ホームのサポーターとの一触即発が売り物と言っても良いくらいの気の強い選手。待望のコーナーキックがやってきた。右のコーナーに近づいてくる岩本を大きなブーイングが迎える。しかし、それはただのブーイングではない。彼が最も嫌った監督の名前が混じっていた。 「松本育夫〜!!松本育夫〜!!松本育夫〜!!」 これはバックスタンドの坊ちゃんコーナー最上段から連発された。さらに、前の方でもなにやら怒りに触れることを言った人がいるらしい。岩本はゴール裏とバックスタンドを見回し、バックスタンドの一角を睨んだ。コーナーキックは不発だった。ボールがイージーだった。 「なんだそりゃ岩本!!」 という声を飛ばした瞬間にリバウンドボールを左脚が振り抜き、グランダーのボールはニアサイドのポストを直撃して大きく前に跳ね返った。そのボールがカウンターアタックのための絶好の前線へのパスになるほどの強烈な跳ね返りだった。スタンドは息をのんだ。 「すげぇや岩本。」 少しばかり小さな声で驚きを表現した。 岩本は、その後も長い距離のフリーキックを枠に撃ち込んでゴールを脅かした。 この日の勝因の一つが好調の守備陣だ。マルコスには思うようなプレーをさせなかった。マルコスが巧くボールにタッチするのは、ボールをもらうために中盤近くまで戻ってきたときばかり。前線では完封に近かった。さらに山下は存在感を失って、途中で交代になった。 ラザロニは上野を下げて永山を投入した。まだ時間は20分ある。得点差は1点だけ。 「早くないか?」 「もう守備固めかよ。消極的すぎる。」 「おい、トラパットーニかよ。」 だが、うまくいくときはうまくいく。その直後にフリーキックをナザがドカンと決めた。どういうわけか、低い弾道のスピードボールは壁に影響されることなくゴールネットを激しく揺らした。蹴る前は松田が退け!というポーズを見せたり、いろいろと怪しい動きも多くて誰が蹴るかの予想が全くつかなかったが、ストレートに撃ち込んだ。見事なシュートだった。 盛り上がるスタンド。反対側のゴール裏は、この後は静かなものだった。 「なんかワールドカップ予選で負けたウクライナみたいになっちゃったね。」 仙台は戦意を失った。このシュートで試合は終わった。その後は、ほとんど動きは止まっていた。嫌がらせのような外池と三上を相次いで投入する時間稼ぎ。三上登場時には 「おいロスタイム30分かよ!?」 とお約束の野次も飛んだ。良いところがまったくなかった仙台の森は退場。残り時間をじっと見る集中力も失われてきた。右サイドでのクリアボールがスタンド間際にまで飛び出す。 「おお、惜しい。」 「もっと強くハッキリ蹴れ!」 最上段から聞こえてくる声。 その後も右サイドを駆け上がる波戸に 「そうだ、持ち込め。そこでクリア!撃て!!」 「ちょうどネクタイのあたりが痛いはずだ。」 っておいおい、なにか怪しいと思ったら清水監督にボールを蹴り当てろって話だった。終盤に、こんなに余裕で試合終了を待つなんて、やっぱり応援するクラブは強い方がイイ!! 今日のポイント ●ポストが味方してくれた。試合がなかった分、すこし太かったようだ。 ●際どいシュートは撃たれたが、守備陣はまずまず。 問題があるとすれば中澤が見分けにくいことくらいか。 ●あいかわらず頓珍漢なシュートもあったが坂田は良くなった。 ●ドゥトラ不在時の左サイドは不安のまま。 ●榎本がナザと交錯。またか。そろそろ進歩を望む。 今日のお値段
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