maliciaのプロフィールはこちらへ
![]() 第3節 ベガルタ仙台 スタジアムから地下鉄駅への、たった5分ほどの道のり。歩道の幅は広くなく、スタジアムから出てくる観客の数は約19,000人。私たちのすぐ前に人はなく、はるか前方にベガルタゴールドの人々。私たちの後ろには、数珠繋ぎのたくさんの人々。そう、あまりの足取りの重さに、渋滞を引き起こしたのだ。 決して広くはないがビジター席は埋まった。通路にも人が溢れた。マリーシアのコアメンバーも30名近くが掲示板脇の席に集まった。そして、スタジアムで再会したわけじゃない。青葉通りですれ違いざまに気が付いたり、名店と称される牛タン屋に並ぶ列で出会ったり、新幹線が一緒だったり、と、いたるところに何処か品のある城下町の片隅で知っている顔に出会った。いつもの顔が、いつものように集うゴール裏だった。そして、フィールドのサッカーも、結局はいつものサッカーだった。例えウイルがいなくとも、根本は何も変わっちゃいない。 序盤は順調だった。ウイル不在でボール回しが早かった。坂田、清水、飯田が自由に動き回り、奥と上野からボールが供給された。ボールも止まらず、左右へ縦へ、難しければ一度戻してワンタッチで局面を変えて前へ。早い時間に清水はシュートを放った。上野はドリブルで上がる。 「邪魔者がいないから前に上がりやすいね。」 そんな冗談も出た。波戸も守りだけでなく、左右にバランスを考えながらボールを最後尾から捌いていた。良い結果が出そうな、そんな予感を多くのサポーターは感じた。 しかし、失点がムードを一変させた。これはただの1点ではなかった。奥がサイドでボールを持って攻めに出ようとした矢先にボールを奪われた。下がって消えていたマルコスが中央から前に走り込んでくる。追うのは上野。だが、すこし遅れた。シルビーニョ、山下、そして逆サイドをケアするためにディフェンスラインにマルコスを受け渡すことはできない。山下からマルコスにボールが出る。抜かれる。撃たれる。シュートは見事なニアサイド上部への弾丸シュート。ゴール裏からは、ボールを奪った瞬間に猛然とダッシュするマルコスが見えた。だが、中盤の底からの組み立てが信条の、今日のマリノスは、それに誰一人対応ができなかった。 一気に流れが変わる。上野も奥も上がれない。全体に下がる。だから中盤のボールを奪われる。榎本とゴールポストで失点を防ぐが、とにかく危険だ。もう、右だ左だの指示も野次もない。歌っていられもしない。 「前半は我慢しろ!!」 「とにかく守り切れ!!」 「撃たせるな!!」 「辛抱しろ!!!」 この時間までは、やられるかもしれないが我慢すれば取り返せるかもしれない、そんなムードだった。それはそうだ。みな仙台までやってきて無惨な負けを予想しているわけがない。奥を高い位置に上げて局面の打開を計るラザロニ。大声援に後押しされて一気呵成に攻め込んでいた仙台も攻め疲れか、残り5分になって勢いが鈍る。マリノスのボールが、また回るようになる。だが、このボール回しは序盤のモノとは違う。攻めきれない、おどおどとした展開。横に動くボール。縦には入らず、難しくなればゆっくりと後ろに。驚くべきことに、この5分間+ロスタイムの間に、ボールを奪われたのは数回。しかも、それを一瞬で奪い返している。 「シュート撃て!!」 「勝負しろ!!!!」 「あ〜イライラする!!!!」 「ただ回してるな!!!」 「こんなの、パス回した回数で競う競技だったら、絶対にうちの勝ちだよ。」 「むずむずしてくる。何かやれ!!」 「終わっちゃうぞ!!」 「シュート撃たなきゃ永遠に点は入らないぞ!!」 「まさか、このまま前半終わるんじゃないだろうな!!」 「あ〜ほんとに終わりやがった!ば〜か!!!!!」 無駄な時間を過ごした。これで一気に、その後のゲーム展開に暗雲が立ちこめた。 後半が始まるが、気を引き締めてやり直しという雰囲気はない。キックオフ直後も、横パスし後ろに戻した。前半は繋ぎ役としてはポジションがあった飯田だが、やはり経験不足は気持だけではカバーできない。このポジションは怖さがなければいけないのだ。それにしては、まだ軽すぎた。次第に存在感を失い消えていく。気が付けば、トップのはずの清水が流れの中で下がって1.5列目でボールを受けた際に、時折見せるスルーパスや突破の方が、このポジションには適任に思えた。 左のドゥトラは研究されている。 「ドゥトラさえ押さえちゃえば守れるんだから仙台はやりやすいよなぁ。」 そんな言葉が漏れた。左脚でのクロスが少なかった。シュートチャンスにはボールは必ず右脚にあった。それだけ徹底して仙台はドゥトラの左脚にはボールを持たせなかった。そして、シルビーニョが右サイドのポジションを受け持ち、再三突破を見せる。ドゥトラが上がる機会は、次第に少なくなっていく。 それでもチャンスはあった。特に、後半も中程を過ぎた頃に、仙台の中盤はすっかり動きの量を落とした。中盤がルーズになり、ぽっかりとスペースができた。さらに、サイドも上がれるようになった。 「ここが勝負所だ!この時間に得点しろ!!!」 しかし、マリノスの中盤も押し上げが遅く、せっかくボールを前目で奪っても、ゴール前に殺到する選手がいない。いらだちが募る。 「上がってこい!!」 「前に行かないと点獲れないぞ!!」 「勝負をかけろ!!」 そして、ついに、Mの馬鹿3段活用が始まる。もう、止められない。 ちょっと危ないプレーの時「ばぁ〜か」 かなり危ないプレーの時「ばぁか、ばぁ〜か」 30番がボールを持つ前後「ばぁか、ばぁ〜か、ばぁぁあぁぁあぁぁ〜かぁぁ〜」 完全に消えてしまった飯田に代わって外池が入る。もう、いつも通りに攻めていても得点できないから放り込むという諦めの采配だ。もしくは、いる選手に合わせて勝手にやってくれということか。とにかく今期初めての戦法に出る。清水が1.5列目に下がる。久永のポジションは、あまり高くない位置のままで、縦への勝負も少ないからアーリークロスが多くなるだろう。となれば直接のゴールは少ないだろうから、こぼれ玉を坂田で勝負だ。が、しかし、次に選手交代で出てくるのは平瀬。しかも坂田と交代だぁ?平瀬は元鹿島らしく仙台サポーターから痛烈なブーイングを受ける。そして、そのときマリノスのゴール裏からも大きなブーイングが。だが、これは平瀬に対するブーイングが大半なのではない。「なぜ坂田を下げるのか?」その疑問の意思表示だ。なにしろ、外池が入るまでの時間に、前線でサッカーをやっていたのは坂田だけだった。ゴールへ向かって勝負したのは、たった1人だけだったはずだ。 そして、案の定、平瀬は中央にポジションを取ることを許されなかった。監督の指示通りに左サイド。つまり、外池と坂田のツートップは外池のワントップに実施的に変更された。左サイドには平瀬。トップ下に清水。右の半端な位置に久永。中盤は闘鶏のように突っついてボールを奪い合う。プロらしくないサッカー。闘志は前に出るだろうが、戦術的にはうなずけるモノがない。 「とにかく奪ったら、バーッと上げてダーッと撃て!!」 「相手は小村とリカルドとマルコスだろが!!えぐって入れるとかできないのか!!」 「だいたい4バックにして波戸とドゥトラを両サイドで高くしてクロス入れまくると、やることがあるだろうが!!」 「相手は読売の補欠キーパーだろうが!!遠慮してないでシュート撃て!!」 みな、最後の最後での同点劇を期待していた。3連敗なんて見たくない。それに、この日は泊まりだ。延長戦だって大歓迎。何かが起きると期待していた。しかし、ゴールどころか際どいシュートも飛ばなかった。起きたこといえば、仙台のファンサービスのために財前が入ったことと、大したことのないファールなのにもかかわらず起きあがらない久永を無視して他のマリノスの選手がゲームを再開させてしまい岡田主審に止められたことくらいだ。 試合は終わった。歌声響き盛り上がるベガルタゴールドのスタジアムでトリコロールの部分だけが無言で頭を抱えている。ブーイングが飛んだが、もうブーイングを飛ばす気持も出ないほどの無惨な負けだった。 仙台スタジアムから地下鉄に乗り15分ほどで仙台市の中心部、国分町に出る。ここは夜の繁華街なので多くの仙台サポーターも地下鉄を降りる。今夜は22名で牛タン屋を22時から24時半まで貸し切りだ。二股の地下道を右に曲がり目指す店へ向かう。すると、ベガルタサポーターは、みな左側の道を進んでしまった。 「あれ、ベガルタは左に行ったぞ。」 「トリコロールだけじゃん。」 「ここは敗者専用地下道だからじゃないか?」 先の階段もトリコロールだけだ。 「敗者専用階段。」 昼間は、それほど人通りが多いとは思えなかった仙台市街だったが、夜の国分町は混雑していた。 「敗者のみなさんは、この角を右に曲がりま〜す。」 店は定員いっぱいだった。22名は飲み物を手にする。 「では、今日の敗者に乾杯!!!」 「かんぱ〜い!」 「完敗!!」 「惨敗!!!」 「連敗!!!!」 「全敗!!!!!」 乾杯が終わると会話に盛り上がりがない。完全貸し切りだから遠慮する必要はないのだが、試合の何を話せばいいのかわからない。料理が運ばれる。シーザサラダ・・・美味い。この店の料理は噂通りの素晴らしさだ。そして、厚みたっぷりの牛タンが運ばれてきた。 嬉しさのこもった「うぉ〜!」という歓声があがる。スタジアムでは叫べなかった私たちの、今日一番の歓声だった。二種類の牛タンの1つは肉厚の固まり。こりこりとした、しかも嫌な堅さではない心地よい食感。もう一つは串焼き。歯触りがない。口の中でとろけるような柔らかさなのだ。これが牛タンなのか。次第に22人の表情がほぐれる。次第に会話もはずむ。笑顔で今日のそれぞれの道中を語る。仙台にギリギリに着いたものもいれば、前日から松島に宿泊している者もいる。 不意に店内のテレビはスーパーサッカーを映す。先ほどの試合の模様が映し出されたときに誰かだ叫んだ。 「せっかく気持ちよく食事してるんだから、へんなもの思いださせるなよ!!」 今日のポイント ●トップ下の存在感があってこそのボランチ。 ●長い芝とイレギュラーバウンドに戸惑いも見えた。 ●仙台指定席の観客はコンサート乗り。 ●試合前の掲示板に出された文字「仙台-横浜F」の文字。すぐに消える。 ●榎本とディフェンスラインは悪くない。 ●やってることは正しいが微妙にシュートがずれてる清水。 ●仙台市内にあった「原宿アイドル写真館」という店。「ベッカム写真入荷しました!」という案内。 ![]() ![]() ![]() ![]() (左から)定禅寺通り、仙台城伊達政宗像、瑞鳳殿、円通院、瑞巌寺。 ![]() (左)駅方面から望む仙台スタジアム。開門前の列は駅前まで延びる。 地下鉄降りてすぐ。建物の合間から見える様はロンドンのよう。 (中)アウエー側からの外観。スタンドの高さは改修前の鹿島程度。 通路と座席が狭く、19000人収容にしては小さな印象。 (右)ベガルタゴールドで染まるスタンド。座席の照明は暗い。 ![]() (左・中)喜びを噛みしめて試合後の家路を急ぐおばちゃん。 (右)この後マフラーがヨコハマなのに気付いたベガルタ君は、 マフラーをむしゃむしゃと食べる真似。なかなか芸達者な奴。 ![]() (左)スタジアムにあったイタリア代表の足形。 繁華街のゲーセンには「アズーリ再び来仙!」のポスターがあった。 (中)牛タンの厚みに注目。 ![]() (左・中・右)美味いものを喰うと怒りが収まってくる。 今日のお値段
|