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![]() 第6節 FC東京 ロスタイムは3分。何度も枠を捉えたシュート。土肥は、あの南の控えだったとは考えられない大当たり。またしても勝てない、今日も延長戦突入か・・・そう思わされた。しかし、跳ね返りを倒れても脚を振り切って放った奥のシュートがゴールネットを揺らした。 予想を大きく上回る劇的なクライマックスに弾けた。スタンドが揺れ歓声があがり。ある者は縦に跳ね、ある者は横に飛んで友に身体をぶつけた。そして、今日来場の女性と子供に配布されたビニーズ・ベイビーの犬の何匹かが宙を舞って、背もたれある椅子に落下した。 数的優位が感じられたのは、後半もかなりの時間が過ぎてからだった。 試合開始早々に、あっと言う間に先制点を許し、いつものような重苦しい展開が続いた。先制点は羨ましくなりそうなファインゴール。だが、それは中澤の不在を感じさせるゴールでもあった。今日の中央は復帰間もない小原。成長株ではあるが人には元々強くない。スペースを潰すタイプだ。だから松田が右。それをガスは突いてきた。やや遅れたタイミングでアマラオが小原の前に走り込んでくる。そこへアーリークロス。小原がアマラオに競り勝てないのはまだよいが、一緒に競るはずのナザがアマラオに身体を預けなかったので、見事なファインゴールが生まれた。 「あぁダメだ。それはフォワードのヘディング。」 ピンときた人は30歳代以上だろう。それは80年代のサッカー解説でおなじみの松本育夫の名調子。ディフェンスのヘディングは、勝てなくとも相手の体勢を最低限は崩す競り方をするヘディング。だが、このナザのヘディングはボールを打ちに行ったため、頭がボールに当たらなければアマラオには、なんら影響を与えていなかった。 ナザはどうしたのだろう。ムラのある選手だが、このところは不安定すぎる。ヘッドの競り負け、フィードのミス、まったく意味のないポジションなど。ラザロニ解任となれば、年齢からしてナザは契約満了とともにマリノスを去る可能性が高い。そんな不安がプレーに悪影響を与えているのか。 ボールを奪われカウンターを喰らう。特に前半は失点した左サイドが押し込まれっぱなしだった。ドゥトラは深いポジションに留まった。だから3バックなのか4バックなのか5バックなのかがわかりにくい。 「松田ってサイドなの?」 「いや、3バックの右なんじゃないの?」 「でも5人並んでる。」 「わからないな。」 「主導権を握られてしまっていることは間違えないな。」 ディフェンスは人に着くのが精一杯。だから、遅れて長い距離を走り込んでくる選手には対応が出来ない。アマラオが、ジャーンが、スタンドから見れば一目瞭然の動きであるにもかかわらず、誰もマークに着くことが出来ずにゴール前でフリーになり、そこにクロスが入る。何度叫んだことだろう。 「普通のことを普通にやれ!!」 「いや、あれを普通に感じて出来ていれば、今の順位は考えられない。」 普通のことが普通に出来ないとなるとフラストレーションが溜まる。球離れが悪くてパスコースを自ら断ってしまう。いつもの展開が続く。しかし、セットプレーからのゴール。ウイルのヘッドが弾丸シュートを突き刺した。展開を変えるきっかけは得点が一番。さぁこれからだ。 ところがうまくいかないのがマリノスらしい。 さらにガスの宮澤が、なんと前半のうちに2枚目のカードをもらって退場になる。 「さぁ一気呵成に行け!!」 「ここで追いつけ!!」 の声が虚しくなるちぐはぐな攻めは変わらない。なぜだ、なぜなんだ。 「一人多いのにセカンドボールが全く獲れないってのはどうしてなんだ!誰か説明してくれ!!」 なぜか、前線とディフェンスとの間に大きな穴がポカァンと。そこを運動量でガスがカバーしてボールを奪う。ウルトラが「動け!動け!」とコールする。ガスが「マリノス動け!」とコールを返してちゃかす。 とにもかくにもボールも動かない。苦しくなると中央に構えるウイルにボールを預けようとする。ところが、それが見え見えのために、すぐにボールを奪われる。 「てめぇウイルこの野郎!!」 「しっかりキープしてくれよ!」 「いや、あれは無理だ。あの状況でウイルに渡す方が悪い。」 「どう見たって狙われてるのがわかるだろう!」 「でも受け方に工夫がなさ過ぎる!」 「ていうか、少しが自分から動け!」 そして奥も狙い撃ちされていた。ボールを受けてもまったく前を向いてプレーさせてもらえない。『普通のことを普通に出来ていないマリノス』と『当たり前の狙いを当たり前のように出来ているガス』の差が前半は顕著に見えた。 スリリングな互角の展開。ゴール前のシーンが多く面白くなる。 なにしろ1人多くなっても突破される回数が減るわけでもなく、かといってボール回しが楽になるわけでもない。お互いに攻め合い、際どいところで守る。11人の優位さが伝わらないもどかしさがいっぱいだが、どういうわけか試合が盛り上がる。シュートが多いのだ。 「なんか、良い勝負になってるぞ。」 「1人退場はハンディかよ。」 「まぁ攻めてるから納得行く。」 「うん、これなら良いじゃん。」 宮澤の退場から5分ほど経って、松田がオーバーラップする回数が多くなる。1人多いのにも関わらず前線が数的優位を作り出せないことへのフラストレーションを爆発させるかのごとく。ついには右サイドのタッチ際に張り付くことさえあった。この男、ポジションは何処なのだろう。 後半に入ると、右に張り付くことを別の男がするようになる。いや、左にいることも。脚の状態が復調してきたのか、この日の奥はよく動いた。気がつけば37番が右か左に。ボールも左右に揺さぶりをかけてサイドチェンジが出てくる。これがボディーブローのように効いてきたようだ。 おそらく途中交代するだろうと予想されていた怪我上がりのユキヒコは70分に達しない早い時間で交代。ドゥトラの攻めに手こずった結果だ。 ナザのヘッドは「決まればクローゼ!だったのに!」という海老ぞりの正面跳び。美しかった。 右サイドからあがった松田にピンポイントのパスが来てシュートのときは「きまればファンバステン!だったのに!」「ザマーかよ!あの動き!」と大興奮。決まらなくたって良い。凄いぞ。 「うちにこれだけシュート撃たれるってことは磐田にボカスカやられるのがわかる。」 という声が出るほど、ガスの土肥は凄かった。本来であれば「得点は時間の問題」と感じるところだが、ここはいつもの記憶が簡単に蘇る。 「ちゃんと獲れるときに獲っておかないと、最後にやられるぞ!!」 局面打開のためにラザロニが打った手は4バック。といっても松田のポジションがよく解らないので、実際は4バックとも言いにくいのだが、復帰間もなく不安の多かった小原を下げて代わりの選手を入れる。小原を下げるのはみんな納得がいったが、入って来たのが久永。波戸は最終ライン。突破力のある選手を2枚右に揃えたということになるのだが、やはり久永のところでボールが停滞した。フリーでボールをもらったのに後ろの波戸にゆっくり戻したんじゃぁ・・・。 「久永いいかげんにしろ!!」 「久永ここで一か八か勝負しろ!!」 「八か八でも良いから勝負しろよ!!」 左右の攻め手が左だけになってしまった。ウイルが戻ってボールを受けに来ることも増えてしまった。そうすると、ドリブルをする選手の前にウイルが来てしまってコースがなくなって、攻撃にスピードがなくなる。悪循環だ。 「あぁ、もう何とかしてくれよ久永。」 「頼むよ。」 「センスなさ過ぎ。」 「すっかり勢いなくなっちゃったじゃないか。」 「いや、こういうときに最後の最後でやってくれるよ久永は。」 「え〜本気で言ってる?」 「こういう試合で何かやるんだって。あいつにはそういう臭いがする。ガンバレ久永!!」 選手には意気込みが、監督には開き直りが感じられた。 永山が負傷退場した。 「たぶん金子入れてくるんだろうな。」 「でもさぁ、攻めてるんだから、ここで攻撃的な選手入れて押し込みたいよね。」 「そういう采配が出来ないんだよなぁ、ラザロニ。」 「おっ!おい坂田呼んでる!!」 「まじかよ!!」 追いつめられると人間は予想外のことをする。弱気なラザロニが攻めの采配をする。これは歓迎すべきことだが、結局、自分のこれまでの采配を否定したわけだ。 「いつもこうやってくれてたらよぉ・・。」 「坂田頼むぞ!!」 期待が最も高い選手に成長した坂田がフィールドに入りゲームが動く。スペースが出来て左右に、いや左にボールが展開される。ドゥトラからのクロスも鋭い。だが、ことごとく立ちふさがる土肥。こんな男が、あの南の控えだったなんて信じられない。 右サイドは停滞する。久永の判断の遅いプレーが好機を潰す。さらには、波戸にボールが渡ってもウイルが開いてボールをもらいに来てしまう。ガスの選手も引き連れてきてしまうので、ボールの行き場がなくなる。 「いいかげんに真ん中にいろ!!」 軽く捌いてくれるのであれば、いったんウイルがボールにタッチするのもよいが、あの場所でウイルがボールを受けても、ゆっくりキープしては、相手に守備の準備をする時間を与えるだけだ。 「あぁ、このまま延長戦にはいるのか。」そんな気持が充満しつつあったロスタイム。一方的に攻めまくり、ゴールをこじ開けるまであと僅かのはずなのに。あと一工夫が出来ない。しかし、サイドで拾ったウイルが簡単に技アリのアウトサイドでのスルーパス。こういうプレーなら大歓迎だ。そしてドゥトラが見事なマイナス方向のクロス。ピシャリと奥。跳ね返りをもう一度。 鞄も思わぬ方向に落ちていた。飛び散ったゴミクズと無惨にも打ち付けられたビニーズ・ベイビーの犬を拾いながら会話がはずむ。 「奥、よく撃ってくれたよなぁ。」 「ドゥトラ最高。」 「いやぁ、やっぱ久永やってくれたよ。」 「え?」 「久永が、いたからコースが空いたんだよ。やっぱ思った通り。最後にやってくれた。」 「まじかよ?」 「やってない。」 「やってないって。」 「いや、今日は久永のおかげだ。次もガンバレ久永。」 「うむ、なんだか久永のおかげのような気も心なしか・・・。」 「だから、やってないって。」 なんとも上機嫌な2階席だった。 今日のポイント ●上野の気迫溢れるボディコンタクトが目立った。 ●無得点でも納得いくプレーをしてくれる坂田。 ●小原の中央、奥と上野を攻撃的な位置に、4バックに変更、久永の投入と、 ことごとく采配が裏目に出たラザロニ。それをカバーした選手達。 ●宮澤退場の5分後くらいから急に何かに気がついたかのように始まった松田の攻撃参加。 ●ゴール裏の観客数が少なかったのは運動会のせい? ●「勝てなかった東京から・・・。」とインタビューされていた奥だが、奥はずっと勝ってる。 今日のお値段
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