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![]() 第9節 鹿島アントラーズ スタジアムへはいるとフィールドの上にケーブルが張られていた。生中継するTBSが真俯瞰から撮影するための移動カメラを設置したのだ。 「なにこれ?」 「あっ、これ。中田カメラだよ。中田の決定的なミスを逃さず見せてくれるんだ。」 みんな、トルコ戦での些細なミスを根に持っているらしい。今日は、みんなが大嫌いな鹿島国との国際試合だ。 試合前の選手紹介。ブーイングで異国の選手を迎える。FWは柳沢のワントップ。いったいどうやってシュートするつもりなんだろう。前節の神戸戦はチーム全体でもシュートは2本だけだった。 「おい、みんな、ほにゃらさわにブーイングするなよ。彼は味方なんだから。」 試合は楽しいものになった。見どころは満載だ。 開始早々に、日本代表らしく、いきなりJリーグ名物(ワンバウンドのボールが頭の上を越えていく)を柳沢が見せてくれたからというのもある。 「おぉ、お前、ほんとうに期待を裏切らないな。」 それはサイドディッシュのようなもので、真の面白みはパス回し。中央はダイレクトかワンタッチ程度で素早く回し、サイドは前方のスペースへの流し込み。そこへ走り込んできたサイドアタッカー、波戸やドゥトラからのクロスを入れる。清水のヘッドは、いつものようにピンポイントでゴールマウスを避けて通過したが、これは期待がもてる。このパス回しならば清水の動きがムダにならない。 この日の主審は全体に判定が厳しかった。 掴みに関しては見逃しが多かったが、アンフェアなチャージは、かなり厳格に判断した。鹿島戦は甘めの判定に泣かされることが多いので、この判定は良い傾向だ。逆に鹿島にとっては辛い。早速だが本田が判定にクレームを付ける。 「馬鹿野郎、本田うるせぇ。お前の存在が反則なんだよ。」 右のタッチ際からウイルがドリブルで突破する。逆サイドにはフリーの選手がいる。 「早く出せ!逆サイド!!」 しかし、ウイルの選択肢はシュート。ニアサイドに放った。前に立っていた秋田はパスを警戒していた。同様に曽ヶ端は体重を右へ移動するために移行したところで逆を突かれた。信じられないコースからゴールへ吸い込まれるボールの行方をしっかりと確認してから半歩遅れて喜びが訪れる。 「すげぇ!!!」 憎き鹿島国からの予想外の早い時間の先制に盛り上がる。それまでは、大量に流入していた鹿島国民(在日鹿島国民も多く含まれる)の声援が大きく響いていた印象だが、これで形勢逆転。試合直前のウルトラの呼びかけも功を奏して、スタジアムはトリコロールの手拍子に支配されることになる。 「一気に奴らを打ち払え!!」 国際試合らしく、日の丸や日本代表ユニフォームなどが普段の試合よりも多く見られる2階席もぐんと調子に乗ってきた。 前半は、これまで繰り返されたいつもの見慣れた試合展開とは逆のようだった。 柳沢のワントップは攻め手が少ない。クサビのボールが入ってもすぐに潰すことが出来る。対してマリノスは見違えるような良質のサッカーを披露している。スペースへスペースへのボールを送り選手が有機的に連携している。停滞した足元へのパスではなく、常に前進を心がけている。何度か見られた右サイド前方への長いパスがタッチを割ってしまうシーン。ため息が、だが大きな拍手が。 「いいんだよあれで。足元で繋いでやってるよりも、タッチを割ったとしても100倍ましだ。あそこに走っていない方が悪い。」 K林さんも上機嫌。 この日三度目のJリーグ名物はスーパーJリーグ名物だった。そのボールを拾ったウイルの前方にいるのは、もう秋田と曽ヶ端だけだった。最初のゴールとは逆にウイルは逆サイドの清水へパスする。清水は浮き球でウイルに戻す。釣られて秋田が右往左往し置き去りにされる。横っ飛びのウイルはダイレクトにボレー。曽ヶ端はボールを見送った。ビューティフル!!!! 「うわぁ〜!!カッコイイぃ!!!!」 「ウイルゥ〜!!!」 「ぐぁ〜!!」 今度のゴールはウイルが放った瞬間にみんなが跳ねた。 場内アナウンスはこの日二度目のウイルの名を告げる。ウルトラは清水の名も連呼する。大画面には素晴らしいシュートが再現される。 「お前、その前だよ。その前から見せろよ。超Jリーグ級のJリーグ名物だったんだぜ。」 直後に松田は秋田の目の前でワンバウンドするボールを送り込んだ。 とにかく怖くない鹿島だった。縦に勝負してくる選手がいないのだ。 「怖くないなぁ。」 「鹿島で怖いのはトニーニョ・セレーゾだけだ。あの顔で間近で怒られたら怖いのなんのって・・・。」 K林さん上機嫌。 「そろそろ中田の裏切りがあっても良い頃だなぁ。」 「うぁ!」 一瞬、息を止めるボールがゴール前に入った。ボールは鹿島の選手のヘッドを経由して榎本へ。大画面にプレーが再現される。 「ほら、中田のバックパス。」 「しかも、微妙にコースはゴールマウスを外してある。」 「マークする選手はカメラに注意。」 前半は魔法にかかったかのようなスムーズな試合展開。遠藤が攻撃に顔を出す機会が少なかったが、ドゥトラが前に出ることが多かったからだろうと好意的に解釈した。凄い。面白い。このサッカーなら楽しい。久々にマリノスのサッカーがスタンドを魅了した。 後半にはいると、鹿島は前に出てきた。圧倒される時間も目立ってくる。 柳沢がやってくれた。ドゥトラの掴みに対して報復の肘打ちを放ったのだ。しかも放った勢いで自分からフィールドに倒れる。主審はプレーを止め自ら倒れた柳沢のもとに向かう。寝たまま起きあがらない柳沢に黄色い紙が提示された。あまりの情けない有様に爆笑した。ドゥトラにも当然、カードが出された。ドゥトラのカードも相変わらずコンスタントだ。 清水の動きは後半も切れいてる。ただしシュートがゴールネットを揺らさないのも相変わらず。またしても訪れたというより自らの動きで作りだした曽ヶ端との一対一。シュートは正面を突いて弾かれる。リバウンドをウイル。これも入らない。 前半と比べるとマリノスの攻撃は散発で、そちらかというと鹿島の方が優勢な展開。だが、投入された長谷川も運動量が極端に少ない。頼みの綱であるはずの柳沢にボールが入る。 「おぅ来た!来た!さぁ彼、何を見せてくれるか!?」 あっさりと松田が奪う。 「ふぁ〜本当に、お前、期待を裏切らないな。」 しかし、マリノスの動きも前半と違い守備のタイミングが遅れてくる。そのせいで掴んだり引っかけたりのファールが増える。 「え〜今のファールかよぉ。ファールじゃないんだったら、せめて代わりに柳沢にボールをもっと渡してくれよ。」 K林さん上機嫌すぎる。 柳沢がドリブルで仕掛ける。対応するディフェンス。叫ぶK林さん。 「ほっとけ!ほっとけ!いくな!!柳沢なんかほっとけば勝手にこけるんだよ。寄ってっちゃうから他の選手がフリーになる。だから無視しとけ!!」 ふかしたシュートにはウルトラは「かっ飛ばせぇ」のコールを合いの手で入れる。 「やな〜ぎさ〜わ」「かっ飛ばせぇ」「やな〜ぎさ〜わ」「かっ飛ばせぇ」 「あとは、早く青木出せ!青木!」 確かに鹿島は攻めているのだがプレッシャーはそれほど感じられない。 攻められていても余裕があるのだ。逆に時間も少なくなってきて鹿島には苛立ちが見える。判定や小競り合いを巡って試合が止まるシーンも出てくる。 「よし、ここで平瀬投入。」 「じゃぁ、もっともめる。」 鹿島ベンチの前でタッチを割ったボールをトニーニョ・セレーゾが投げ返す。 「いいなあ鹿島の奴らって。トニーニョ・セレーゾに、あんなことまでしてもらえるんだぜぇ。」 今話題のブラジル黄金のカルテットの要、あのスーパースターがボールを拾ってくれるのだ。 それでもセルフジャッジを連発して集中力を欠いたシーンは危険だった。本来ならば中盤で引き締めるはずの上野が、自ら判定に苛立っていては立ち直りも遅くなる。あの時間だけは、本当に危なかった。 終盤には、あの青木が登場。場内アナウンスに、思わず歓声が揃う。 「よ!アジア大会MVPアシスト王!」 しかし、若年層の大会でのこともあって、それ以上の突っ込みはなかった。 大活躍のウイルだが、後半は遊びが出てきた。ヒールやアウトサイドでのパスがミスになる。 「ウイルは点獲った試合だと倒れても立ち上がるのが早いなぁ。ダメなときは、いつまでたっても立ち上がってこないもんなぁ。」 いつも以上に動きの素晴らしかった清水は途中交代。入ったのは久永。決定期に失望させるイージーなパスミスもあったが、前へ積極的に動いて、停滞していたゲームに一瞬の活を入れた。 そして下條監督はTDらしくハートをがっちり掴んだ。最後の最後で平瀬の投入だ。レンタルでありながら鹿島側から絶大なブーイングを受ける平瀬。こちらからすれば大歓迎だ。 「平瀬、お前が決めろ!!!」 「あいつらにトドメを刺せ!!」 「黙らせろ!!」 「こんな鹿島相手に時間なんか使うな。点獲れ!」 「やっぱ評判悪かったんだな、後ろ髪切ってる。」 平瀬が相手を蹴ってしまうファールを冒す。鹿島側からはブーイング。 「よし、お前、自ら退路を断て!」 危なげない内容で勝ったのはいつ以来だろう。記憶にない。 「ファーストは1-2だったからトータルで勝ち越しだ。」 「ガスにも無敗で読売にも勝ち越し。あとは磐田だ。」 「いやぁ面白い試合だった。これなら毎試合楽しみだ。」 「下條も、これで中條くらいになったな。つぎは上條に出世だ。」 「いやいや、天皇杯獲って特上を目指さなくちゃ。」 今日のポイント ●スーパーセーブも当たり前になってしまった榎本。 ●特徴が見えてきた。サイドと中央の変化のある攻撃が売りだ。 ●中盤の守備、ロングボール、テンポを作るショートパス、すべてを支配した上野。 ●ポストに弾かれた長谷川のヘディングシュート。惜しい。 決まっていれば、長谷川がゴールすれば負けないという記録もストップできたのに。 ●試合前には子供を連れてフィールドに現れたウイル。 素晴らしいプレーで親の威厳を見せつけてくれた。 できれば毎週、連れてきてほしい。 ●マッチデープログラムとカードは平瀬。 鹿島国民に挑発的、いや、彼らにも買ってもらいたいという狙いだ。 ●平瀬と鹿島の選手のボールの奪い合いは両方共に鹿島チック。 ●試合後に腰が折れるほど深々と礼をしてお詫びのポーズをした鹿島の選手2名。 試合後にサポーターが怒るのは当然の権利としても 選手があそこまでするのは健全な関係とは言えない。 今日のお値段
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