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![]() J1リーグ 2nd stage 第3節 ガス 『狙われた場所』 味の素スタジアムのアウエー側1階席はびっしりだった。ホーム側とは違い2階は閉鎖されている。だから、立ち見が出るほどの密集具合。その何割かは試合終了を待たずに席を立った。残った何割かは愛のブーイングを、残りの何割かは疲れをねぎらう拍手を。怪我人が続出する、かつてないチーム編成。しかし、それが、全ての言い訳になるとは思えない。采配、試合運び、精神、どれをとっても不足がすぐに思い浮かぶだろう。 比較的平穏に試合終了を迎えたのは、このステージに優勝も降格もかかっていないから。私たちは幸運だった。まだ、未来を見ていられる。 不調の勝ち点2。まともにメンバーが組めない。それでも、試合前にたくさんの笑顔があるのは、現役チャンピオンとしての余裕。この現役チャンピオンに対してU-15の優勝を一大セレモニーとしてぶつけてきたガスの演出を、 「喜ぶことがちっちゃいよ。」 と一蹴することもできる。 その表情が変わったのは試合開始早々だ。 原監督が就任してから忘れかけていたガス戦の苦い思い出がよみがえる。中盤で奪われて鋭いカウンター。ボランチの位置で狙われる。下がって受ける柳も苦しい。振り向く前に囲んでくるのが約束されているのだろう。普通であれば、遠藤や奥、そして那須を加えた中盤が、微妙にポイントをずらしながらパスを交換して、スペースが空いたところで、フリーのドゥトラやユキヒコにロングボールを送る。もしくは体勢の良い状態で、トップの久保にクサビを打ち込む。そういう攻撃で、中盤のプレッシャーを巧みに切り抜けてきた。素早く展開するのが岡田サッカーのはずだった。 だが、今日は勝手が違う。ガスのプレッシャーも早くて鋭いが、やはり遠藤の動きが精彩に欠ける。柳も両軍手探りのスタメンから攻撃的なポジションに入ったことはない。だからボールが動かない。前線には届かず最終ラインと中盤で停滞する。 その結果の1失点目。柳がボールを受けるとあっと言う間に囲まれて奪われる。右からクロスが入って阿部にぽか〜んと撃たれる。またしても阿部だ。 さらに2失点目は早かった。スローインをドゥトラの裏に送り込まれる。ふつうであれば、ここへは松田が難なくカバーする。だが、松田は出遅れた。というより動けなかった。クロスを入れようとする石川に身体を寄せることすら出来ない。限界だ。失点直後に松田は交代する。ガスは明らかに松田を狙ってきたのだ。 石川のクロスをミドルシュートで叩き込んだのは金沢。またしても金沢だ。 試合前から屋根に反射して響く石川コール。 「さっきから石川・東京とか石川・日本とか、地名ばっかり並べやがって、どっちの地名を応援してんだよ。」 「東京の割には、石川とか金沢とか加賀見とか裏日本ばっかだな。」 その裏日本コンビにゴール前を蹂躙されたのだ。 開始早々にユキヒコはジャーンに両脚タックルで刈られて宙を舞う。試合前の石川・ユキヒコの応援合戦は、いつしかブーイング合戦・罵声合戦と変わっていく。 「石川!水飲むんじゃねぇ!!」 「いや、石井君、それは理不尽だよ。そんな一方的な酷いこと言っちゃいけないよ。」 とK林さんからストップが入る。が、次の一言 「おい石川!裏切り者で恩知らず!!!」 今年に入って、このカードに激しいファールが激増したのは、この二人の移籍が原因だ。 もともと技術と攻撃的なボールさばきに難がある河合が、この劣勢の状態でピッチに入る。当然のごとくプレッシャーをかけてくる。ますます最終ラインから良質のボールは供給されなくなる。ドリブルを織り交ぜて突破を図るが止められる。うまく、サイドのディフェンスの裏を狙ったボールを入れることさえ出きれば、坂田やユキヒコが突破の気配を感じさせるシーンも度々現れる。だが、それは、一瞬のこと。ほとんどの時間は中盤での停滞。遠藤が万全でない痛み。されには、本当に痛みで遠藤が交代。遠藤がピッチ外に出た間に、ディフェンスラインの前で自由にボールを扱われて、クロスをファーからヘッドで叩き込まれる。なぜ、競らずに逃げるように去ってしまったのだ小原。 これで試合は、ほぼ終わりのはずだ。だが、ここで阿部が入る。 すると流れが止められる。中盤での劣勢を避けて、阿部と坂田に早めに渡す。スペースへ走り込ませるパスを多用する。前半終了前にはドゥトラが、ジーコジャパンの一角を担う土肥が指示して作った壁の大きく外を一直線にフリーキックで1点を返す。 「まだ行けるぞ!!」 後半開始。坂田と阿部で展開が見える。ライン際を突破する。これなら得点できそうだ。ガスは前節に名古屋に2-0からひっくり返されている。チャンスは十分にある。魅力的なボールが、なんども右サイドに流れてくる。ドリブルするユキヒコ。だが、クロスのタイミングが遅い。いや、入れられるが、もうひとえぐりしてゴールライン際から折り返そうとする欲が裏目に出る。ゴールキックにしてしまう絶好のチャンスが2回。前回の対戦と同様に、ユキヒコは気負いすぎている。そして、クロスを入れても、なぜかシュートがゴールに向かっていかない。坂田は何点損しているのだ。 ひと呼吸したくなる15分過ぎ。ささいなファールでも流れは変わる。ガスは石川だけでなく、もっともガスで怖い名字を持つ男・加地も攻撃参加してくる。 この失点で試合は完全に終わる。 ショートコーナーは絶妙だった。いつものエアポケットにはまったのだ。準備の出来ていなかったドゥトラは 、ちょいと脚を動かしただけ。そもそも、ペナルティエリアの中でありながら、ボールを奪おうという位置ではない。シュートのコースをふさぐだけの位置。集中力が切れた怠慢な動きを見逃さず最後のゴールは決まる。 「あ〜終わった。」 「・・・・・・。」 「・・・・・・。」 「こういう日はダメなんだよ。リーグだから全部勝てるわけじゃない。今日は割り切るしかないって。怪我人出すな。見苦しいファールはするな。」 「だって、みんな試合に出ていないから、守備の対処だってどうすればいいかわからない状態だって。」 「いや、あんな気が抜けたプレーしてたら怪我だってするよ!!」 マルキーニョスを下げて柳が前へ。チャンスが増える。この試合が退屈にならなかったのは、残された選手が奮闘したおかげだ。緊迫感は保たれた。ただし、もっとも緊迫したのは那須が倒れたときだったが。 岡田監督が吹っ飛んできて、選手の胸を張らせた後に、看板際まで来て一礼。なにも詫びる義務はないが、ここまでの選手とスタンドとの一体感を考えると、観客想いの監督らしい適切な判断だった。それでも、ブーイングが飛び交い罵声も響く。 だが、今日スタジアムへ足を運んだサポーターの大半は来週の僕たちのスタジアムへやってくる。きっと、大声援で選手達を迎える。それは変わることはない。ただし、この先、4失点目のようなプレーを見せることが無ければという条件付きの推察だ。 「ま、しょうがないな。もともとメンバーがいなかったんだし。」 「こういう日は諦めるしかないよ。」 「いま、一番大切なことは怪我を治すことだな。」 「松田だとはいえ、志願されても使っちゃダメだ。波戸の二の舞じゃんか。」 「ゆっくりやろうぜ。」 「あとは、鹿島と磐田にホームで勝てばセカンドはいいや。」 「それと仙台の降格を見に行こう。」 「あとはチャンピオンシップと天皇杯。」 「それまで、お休み。」 「9月、10月・・・2ヶ月もお休みかよ!!」 「長ぁっ。」 今日のポイント ●松田の志願を「絶対にダメ」と止められなかったフィジカルコーチとドクター。 使ってしまった岡田監督。 ●絶対に怪我をさせてはいけない那須。 ●安定していた哲也。失点は気の毒。 ●大活躍の石川にみなで立腹。 今日のお値段
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