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![]() J1リーグ 2nd stage 第5節 浦和レッズ 『ディフェンダーの復讐』 全くつまらないことでカードをもらう。今日の主審は太田さん。傾向として流し気味。だから、判定に不満を持つ選手が抗議でカードをもらうケースが多い。冷静になればよい。だが、そうもいかないこともある。ましては彼は若い。デビュー数試合。若干十代。栗原が前半にカードをもらってしまった。 「あぁ〜やばい。」 「馬鹿なことするなよ。」 「まったくムダなカードじゃないか。」 「おい、たしか栗原3枚目だぞ。」 「えっ、どうしてくれるんだよ!冷静にやれよ!!」 「まずいな、次節は栗原抜きかよ。」 「こりゃ、やばいなぁ。」 そこで私たちは気がついた。怪我人続出の状況とは言え、このデビュー数試合の若者が、すでに現時点でのレギュラーを獲得し、守備の要として君臨していることに。主力温存で敗退したナビスコ。そのとき批判の目にさらされた岡田采配。だが、真剣勝負のフィールドに立って知り得た栗原の経験は、わずかな目先の勝利を超える財産だったのだ。今や、大切なリーグ戦に栗原を欠くことはできない。 先制は電光石火。 右サイド。敵陣で相手を囲む。かわされるが、次から次へとプレッシャーをかける。最後にアタックしたのは栗原。奪う。するするとドリブルで前進する。手を振って要求する坂田の前のスペースにインサイドで丁寧なグランダーのスルーパス。坂田はスピードに任せて内舘の前に体を入れる。かわす。試合開始早々でありながら、内舘は一か八かの両足タックル。しかも後方からだから倒れればPK、一発退場だ。脚が当たる。倒れる選択肢もある。だが、坂田は倒れなかった。バランスを崩して前のめりになりかけるが、ひょいとかわしてさらに前へ。逆サイドへ流し込む。ゆっくりと転がったボールがネットを小さく揺らす。 わっと立ち上がるトリコロールのスタンド。もちろん大きなサッカー専用スタジアムのゴール裏の一角だ。こけら落としの時ほどではないものの、立ち上がって応援する前部、座って声援する後部、そのほとんど全てが立ち上がり叫ぶ。あまりの突然のゴールに衝撃は倍増。試合が再開されて、やっと落ち着きかける。 「よく決めた坂田!」 「最初のチャンスで決めるなんて凄い。」 「だれだ、あのパス出したのは。」 「いやぁ〜それにしても凄いな・・・内舘って。PK覚悟でかわされるとは。」 「今日は期待できるぞぉ。」 こうなればこっちのもの。安定した試合運びで淡々と。 ここから浦和がホームの大歓声を得て大逆襲にでてくる・・・はずだった。事実、試合開始直後は一気に右サイドを崩して中沢と栗原の体重移動を読み切ったエメルソンがヘッドでトリコロールのゴールを襲っている。どこかで見た光景。ボールは運良くポストを叩いて跳ね返り。ゴールから遠ざかった。だから、一点のビハインドを背負った浦和が前がかりに攻めてくるはずだった。 だが、それは心配しただけムダだった。浦和は何一つ変わらない。いや、選手もオフトも変えられないのだ。エメルソンさえ押さえれば何とかなる。他の選手は、いつまでたっても消極的。ジーコジャパンの一員、山田に至ってはドリブル突破もできず、ボールを持っても立ち止まる。ドゥトラが、軽く脚を出しただけでボールを奪う。時には、フェイントをかけようか、そのまま抜こうかと数秒間立ち止まっている間に、あっさりとボールを奪われる無気力プレーも見せる。 「さっすがジーコジャパン!!」 パスは繋がらずタッチに出る。前節、柏のプレーの重さを嘆いたが、それどころではない。とにかく、サッカーにならないのだ。楽な試合運びとなる。だが、面白くないのだ。あまりに酷すぎて勝っていても腹が立つ。ついにK林さんが切れた。 「てめぇら、サッカー苦手ならサッカーやめろ!ここから出ていけ!!」 その後、ちょっとした誤審が発生。 「審判もサッカー苦手ならやめろよ。」 ここは笑うところ。 要の柳が安定した捌きを見せる。 ここ数試合は、無理なボールキープで、やや不安を感じさせていた柳だが、この日は万全。早め早めにボールを送り込む。ボールキープは両サイドか中央最前列のマルキーニョス。そこからディフェンスラインの裏に送るボールへ坂田と清水が走り込む。リードしてしまえばリスクが低く、スキルに不安のある浦和のディフェンダーには脅威のはず。二木ゴルフ(ニキコロフ)の動きは重い。連携が悪く、ディフェンダーの間はねらい目。攻撃はエメルソン頼みというか、エメルソンだけなので、さしたる問題はない。 「これは、もう一点もらわないとね。」 「浦和もエメルソンと田中の距離が離れすぎてるから攻め手がないよな。」 「暑いから、浦和が押さえ気味に来てるように見えるけど。」 「こっちも奪ったら無理に攻めずに、大きくボールを動かした方が良いよ。いつも浦和は後半にバテるんだから。」 不満の残る前半を終える。 前半終了のホイッスル。歓声に混じるため息。 「つまんねぇよ。」 とにかく浦和が酷すぎる。 「何で、こんなのにファーストは負けたんだよ。」 「何で、こんなのに負けたのに優勝したんだよ。」 「ふぅ・・。」 アウエー側バックスタンドサイドの上段に横断幕がある。浦和でありながら、なぜか「負けへんで」とくくる、あの不思議な横断幕だ。 「ほら、見ろよ『あれ、カフーは?負けへんで』って書いてあるよ。なんかさぁ、こっちはカフー来なくて柳が来たから優勝できたと思ってるのに意識の違いが大きいよなぁ。」 「なんだ、今までカフー来ないって知らなかったんだぁ・・・浦和の人って。」 と、大ボケをかましたのはK林さんだ。 「言ってやれよ。え?野獣は?って。」 とにかくピンチがない。だらだらとミスでプレーが途切れながら試合は進む。いつものようにトリコロールのサッカーは相手合わせだ。後半に入ると緊張感も薄らぐ。次第に、こちらもミスが増える。 「いい加減に浦和のレベルに合わせるのやめろ!」 これは楽勝のようで楽勝ではない。危険な兆候だ。 「やばいね。確かに完封しているけど、まともな攻撃は一度も受けていないからね。」 「そうだよな。いつものパターンだと、初めて来たまともな攻撃ですこ〜んと失点して逃げ切られるね。」 「だから、やっぱ1点穫っておかないと。」 「まともな攻撃受けてないけど、まともな攻撃もしてないからな。」 「今日は松田がいなくてよかったな。」 「そうだよな。この展開だと、サポーター思いの松田は攻撃参加したり色々やりすぎて、逆にカウンター食らって試合を落としがち。いたらやばかったよ。」 それにしても酷い試合だ。だが、「まともな攻撃を受けていない」理由はある。坂田と清水の前線からの守備だ。とにかく良く走る。以前はスタミナ切れが顕著だった坂田は、この猛暑の中でも走って守備し、チャンスにはゴール前へ向かった。清水は印象的な攻撃シーンは少ないが、トップ下からの守備では日本でも有数だろう。 「日本一の守備的トップ下だ。」 「こういう展開だと、ほんと頼りになるよ。」 さらには、栗原、中沢、河合の堅実な守備が光る。特に河合はスピードに不安を抱かせてのスタートだったが、エメルソンを完封。相手との間合いの良さで、突破を許さない。後半途中からはエメルソンは河合を避けてサイドに開くようになる。パス出しやコーナーキックのキッカーのエメルソンなんて怖くない。そして、ここ数試合で目立つのは、河合のハッキリとした判断だ。危険であればハッキリとクリアボールを蹴り出す。繋げることができるならばインサイドキックでキッチリとパスを出す。グランダーで弾まない。これは素晴らしいことだ。 さすがのオフトもまずいと気づく。永井を投入する。まったくと言っていいほど連携が無く脅威にならなかったエメルソンと田中に永井が加わり、両サイドと中央から攻撃の巾が広がる。清水と坂田のプレッシャーが効かなくなる。ボールの展開も早くなり中盤のチェックはボランチ任せに。だが、サイドからの攻撃になると追いつかない。ドリブルでペナルティエリア付近まで無抵抗に攻め込まれる。ついに浦和のサッカーが始まる。まともな攻撃の連続だ。 「まずい。プレスがかからないぞ。」 「何やってんだ!コースを押さえろ!!」 「いや、こりゃ、一気に本当にまずいぞ。いっぱいいっぱいになってる。」 飛び交うシュート。榎本が弾く。身体を張ってのディフェンスに声援と拍手。だが、息つく暇がない。 激しくなる攻撃を耐える、そして逆襲へ。 前がかりで攻める浦和の圧力を身体能力で跳ね返す。奪ったボールをドリブルして柳が突進。このメンバーはファールをもらおうと倒れることよりも前へ進むことを優先する。倒れかけても前へ進む。右サイドを突破。すると中央を守っていた二木ゴルフがやってくる。まさかとは思ったがスライディング。これも我慢してかわす。中央には浦和の選手はおらずマルキーニョスと清水しかいない。交差するように動いてボールはマルキーニョス。シュートがこっちに転がってくる。アイルランドを思わせる魂のこもったカウンターでのゴール。飛び跳ねて喜ぶ。耐えて凌いだだけのことがある喜び。なんて素晴らしい試合運びなんだ。これで浦和の逆襲の勢いは止まる。 これで安心だ。もちろん浦和は乱れてくる。 前半のようにパスが繋がらなくなる。もう、浦和はスタミナ切れと集中力不足だ。左サイドを駆け抜けない平川は、あっさりとトリコロールにボールを奪われる。だが悔しがって追わない。その間に、ボールを追ったのはトリコロールの選手のみ。浦和陣内に攻め込む。もう、浦和はめちゃくちゃだ。トリコロールのサイドチェンジボールが蹴り損ねでも、何が起きるかわからない。 「え?もしかして。」 「ありゃぁ〜!」 「あ〜ダメなボールだ。」 ワンバウンドするボールの行く先を見誤る浦和の選手。 「それが通るのかよ!!」 サイドのディフェンダーが中央の選手にパス。だが、ボールはスルーされて二木ゴルフに。慌てた二木ゴルフはマイナス方向にクリア。 「もう、想像を絶することを繰り返しやるのはやめてくれ。頭が混乱する。」 残り時間が少なくなる。ロスタイム。中盤で奪ったボールを自らドリブルで突破にかかる坂田。坪井の股を抜くと、ゴールを守る者は都筑ただ1人。タイミングを見計らってシュート。 「やったぁ!!!!」 トリコロールのサポーター達が我を忘れて跳ねて喜んでいる間に、浦和側ゴール裏の横断幕の大半は抗議の意味で外された。喜び終えて見れば、バックスタンド、メインスタンドは途中退出し帰宅への脚を急ぐ人たちでいっぱいだ。 「もう帰っちゃうの?」 「さすが、慣れてるから早いな。」 1点目、2点目に続いて絶妙のタイミングで奪ったゴール。前半のことを忘れて、みな大喜びだ。沈黙する浦和サイドのゴール裏。 「これこそ、アウエーの醍醐味だ。」 試合終了後、席を立って帰ろうとする。ふと座っていた座席の後段の席を見ると、本来ならポケットの中になければならないはずの携帯電話が2つ、コンクリートの床に転がっていた。 今日のポイント ●相手が攻めてくれば点が獲れるアウエー戦。 ●この試合は、さすがに動きが少なかったユキヒコ。 ●良くセーブしていたが、名物中沢との連携ミスにはヒヤリとした榎本。 ●列後部から見ると、キレイに揃っていたマルキーニョスコールの○。 ●「インディーズバンドとJリーガーの法則」。 有名になると小汚くなる顔。山瀬で証明。 今日のお値段
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