maliciaのプロフィールはこちらへ
![]() J1リーグ 2nd stage 第9節 ジェフ市原 『勝利いただきます』 首位決戦。だが、その重圧はない。ファーストステージを制したトリコロールにとって、何が何でも勝たなければならない試合ではないのだ。そんなムードが21,000人を集めたスタジアムには充満している。だが、試合開始早々のドゥトラの鋭いドリブルとパスワークが市原の右サイドを切り裂く。そして、この試合の支配を明確にする。 一気にムードは変わる。この試合は絶対に勝つべき試合なのだ。 足元パスは少ない。常に攻めの角度を変えながらボールが動く。90分を通して試合は止まるところを知らない。勝つべき試合だとスタンドが意識しすれば緊迫感は高まる。決して第三者が眺めただけであれば、この試合の価値は低いであろう。だが、緊張感と凌ぎ合いは、決して私たちの心を休めることがないのだ。 まず、この試合のキーになったのは奥だ。新聞の予想では市原は奥にマンマークに近い戦術を採ってくることを告げていた。 オシム対岡田。その軍配は岡ちゃんに上がったことは間違えない。 逆手に取った岡ちゃんの一石二鳥の罠が張られていたのだ。低い位置で守備をする奥。だが、直後にマイボールになると猛然と前線に顔を出す。オフサイドになる奥。信じられない運動量で揺さぶりをかける。しかも、時には、市原の攻撃のキーマンである阿部の近くにポジションを採った上で猛然とダッシュする。これに着いていかないわけにはいかない。市原は守備に奔走し、攻めの糸口とスタミナを失っていくのだ。 呆気ないほどに当たり前のようにゴールは揺れる。 右からのフリーキック。ユキヒコの放った弾道はニアサイドの柳の元へ。弾丸のようにゴールへ飛び込むフィーバーノヴァ。 「よぉーし!!」 喜ぶ。絶叫するものの、これほどまでに素晴らしいゴールにも喜びのアクションが控えめになるのは、私たちが年間チャンピオンへの道をしっかりと意識し始めたからだろう。 「弾丸ヘッドじゃないか!!」 しかし、大型ビジョンに映し出されたのは、時間差攻撃のように柳の後ろに現れた久保がジャンピングボレーを小さなモーションで決める姿。 「こういうのは簡単に決めるなぁ。」 しっかりと問題点が改善されている。恐るべき岡田采配。 前節に多く見られた、久保がサイドへ流れてしまって中央ががら空きにあるシーンが激減している。奥の再三の前線への登場はきまってサイドだ。空いたスペースに走り込んでくるから久保は中央で待っていられる。これで、攻撃の迫力は倍増だ。奥が最終ラインのすぐ手前でボールを受け、その前のスペースへ久保とマルキーニョスがなだれ込もうと虎視眈々と狙っているのだから。さらには、逆サイドのドゥトラも上がってくれば、低い弾道のサイドチェンジで展開する。 心配なのはユキヒコだ。この試合では特に消極的な動きが目立つ。 マルキーニョスが、そしてスタンドのサポーターまでもが前へ出せと思った瞬間。マルキーニョスは絶妙のスルーパス。だが、ユキヒコは逆だった。後ろに下がり始めていた。そんなシーンが数度も繰り返される。クロスの弾道も良くない。シーズン序盤の活躍が鮮烈だっただけに、その落差に落胆が大きい。 松田不在はもはやハンディとは言えない。中沢と河合は強力だ。 市原の攻撃の軸はチェ・ヨンス。だが、全くの沈黙の前半。ハイボールの大半は中沢がカットする。中沢との対決を避けて河合のサイドにポジションを採るも、好きあらば、河合は慎重かつ的確なスライディングタックルで跳ね返す。 「なんだ、この不思議な間合いは!?」 けっして器用には見えない河合の守備。一対一で相対峙したときに、抜かれそうで抜かれない。ジリジリと秒を刻み、相手選手は諦めて非効果的なパスで逃げる。なぜなのかは分からないが、微妙な独特な間合いで河合は突破を防いでしまう。確かにスピードには欠けるため、一気の突破には分が悪いが、それ以外はまったく問題がない。むしろ強力な壁だ。 前半は完璧に近かった。ピンチらしいピンチはないしダイナミックな攻撃が何度も見れた。市原自慢の両サイドは深い位置で守ったまま。トリコロールのパス回しと、ちょっとしたパスの受け方の工夫でペースは握ったまま。局地戦ではスキルの差が出る。こぼれ玉を拾える確率は高い。 左サイドで奪い合う。前へこぼれるボールに猛然と走り込んできた男。前に敵は少ない。 「おぉ中沢だ!」 「行け!中沢!!」 ドリブルで突進して突き抜けることを誰もが期待した。この敵を抜き去ればチャンスはぐんと広がる。中沢は、アウトサイドで右にボールをはたく。とてつもなくぎこちないモーションの小さいフェイント・・・になってない。身体だけが左に・・・ボールを獲られる。 「あぁ〜・・・。」 ため息とも笑いとも言えないもやっとしたものが皆の喉から吐かれる。 「お前、無理してそんなことすんな。いいから頭でクロス入れろ!グインと下から突っ込んででも入れろ!!」 ここ数回の市原戦と印象が違うのは、トリコロールがクロスを無造作に入れないから。そしてミリノイビッチが中央にいないから。入れては跳ね返される、お馴染みの無駄な攻めを繰り返すことなく、今日は常に工夫を加えながらゴール前に迫る。 「面白い試合だね。」 ハーフタイムの会話も弾む。 後半が始まる。序盤はペースを握ったままだ。市原の攻めに迫力がない。いや、市原が問題なのではなくてトリコロールの守備が問題なのだろう。特に前線からの守備だ。 遠藤や奥はもちろんだが、マルキーニョスや久保までもが、ささぁっと迫るアプローチ。後ろにパスをするか、とりあえず前に出すか。前に出すと、ささっと迫るタイミングに合わせてラインを上げるトリコロールのディフェンスの網が待っている。前節のガンバ、浦和、柏などは、ここで慌ててしまってボールを大きくタッチに蹴り出してしまった。だからミスの多いテンポの悪いゲームになった。だが、さすがに市原は、それらのクラブとは違う。慌てずにボールを素早く他の選手に渡して建て直しを図ってくる。それでも、ダイレクトにトリコロールのゴールへ迫ってくる攻撃は極端に少ない。だから、試合運びに危なげがないのだ。 市原は選手を入れ替え、次第にトリコロールからペースを奪ってくる。 だが、逆に、カウンターをかけられるチャンスでもある。数的優位でゴールに迫る。左サイドの突破。中央はがら空き。クロスを曲がるボールで入れる。フラッグが上がる。飛び出しが早すぎた。だが、あまりの見事な攻撃であったので、そう冷静にはスタンドで見れないときもある。 「オフサイドじゃねぇよ。いつルール変わった!?ふざけんな!」 「いや、オフサイドだって!」 「全然オフサイドじゃないじゃないか!」 「いや、絶対にオフサイドだって!」 「そうか。違うのか。」 違う見解が飛び交うが、あまりに簡単に誤審派が引き下がったので大きな笑いが起きる。 「いつまでも引きずってるとろくなことにならない。間違えは素直に認める。そう決めたんだ。」 後半も終盤に近づくと運動量が落ちる。 こうなると根性勝負のところもある。市原が活発に動く。間一髪のシュートも数本飛んでくる。なんとか凌ぐ。だが、榎本のイージーなキックミスでボールを返してしまうこと三度。さすがにブーイングが飛ぶ。これでは一息付けない。 厳しい時間に 流れを変えるマルキーニョスのシュート。櫛野がギリギリでセーブする。この後は、何度かカウンターのチャンスを得る。 クロスに脚が伸びない。絶好のチャンスを逸する。チャンスを失えば、相手の攻撃の勢いが増す。前線と中盤での守備が効かなくなる。ボランチがディフェンスラインに吸収されて一直線になる。そんなときに、中盤のルーズボールを奪いに走り込むのが柳。右サイドからディフェンスラインの前のスペースに走ってボールをスイープする。素晴らしい男だ。しかも、右サイドの前線に放り込んだボールへの市原守備陣の対応が緩いのを見るやいなや、最後尾から 猛然と走り込んでくる。惜しくもここではボールは奪えなかったが、それでも、献身的な働きに万雷の拍手が巻き起こる。 最も終盤に湧いたのはあのシーンだ。ディフェンダーを引き連れてペナルティエリアにドリブルで進入し櫛野との一対一に臨んだ坂田。放った地を這うシュートに腰が浮く。入ったと思ったその時、ボールはポストに当たって勢い良く跳ね返る。スタジアムを席巻する大きなため息。 「坂田!面白いから許す。そりゃシュート決めるより難しいわ。」 最後は市原もスタミナ切れ。序盤にペースを握って右へ左へ振り回したのが、終盤になってボディブローのように深く効いたのが一因だ。序盤でのあっけないほどに当たり前に決めた得意のセットプレーで、結果的には圧勝。だが、その内容は濃く、ボールの動きは止まらない、今期ナンバーワンの試合時間を短く感じさせる試合であった。 試合後のインタビューで大型ビジョンに久保が映し出される。今日の音響の調整が悪いせいもあるが、久保の答が聞こえない。画面でわずかな唇の動きを見るだけ。 皆で笑う。インタビューを終え、マリノス君と共にスタンド近くに走ってくる久保。誰かが言った。 「あぁ〜久保がマリノス君と喋ってるぞ!!」 今日のポイント ●ホッとする瞬間、清水の投入。落ち着きの時間、永山の登場。 ●本当にスポーツヘルニアを持っているのか奥。 ●チェは雀のように大人しかった。 ●得点のFK以外はまったくダメだったユキヒコ。 今日のお値段
|