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2階の目線 2階の目線2012

幸せの証し 3-3 柏(日立台)
2012年3月11日 石井和裕

「シーズンあけましておめでとうございます。」
リーグ開幕戦でのお馴染みの挨拶。この日は東日本大震災から、ちょうど一年。祈りと追悼の日だが、こうして、スタジアムで仲間と無事に再会できることは、まさにめでたい。サッカー場での歓喜、絶叫、涙は、全て、私たちが生きている証なのだ。

日立台は、今までアウエーゴール裏だったスタンドの後ろに二階席を増設。この日からホームとアウエーが入れ替わる。開幕戦であり、スタジアムのこけら落としの試合でもある。ご存知の通り、トリコロールがこけら落としで負けることはない。そして、93年5月に、この日立台のこけら落としを闘った経験もある。その試合は1-1の引き分け。ディアスが初ゴールをマークした試合だ。そのとき、柏は、まだJリーグに昇格していなかった。しかし、今日は立場が逆。柏はディフェンディングチャンピオンだ。

試合は中澤のなんでもない安易なファールで始まる。ジョルジ・ワグネルが巧みにポジションを入れ替えて、早いタイミングでレアンドロ・ドミンゲスが蹴る。気が付けば、酒井が歓喜し、黄色いスタンドがどっと湧いている。早すぎる失点に緊迫感が増す。

直ぐに大黒がシュート。早いタイミングで反撃に安堵する。
コーナーから栗原がヘッド。そこから大黒が空中で体を捻りながらシュート。今度は黄色いスタンドが静まる。
「よし!同点だ。」

ロングボールをディフェンスラインの裏に送り込み大黒が突破してシュート。小野が追い討ちをかける。
柏はセンターバックが弱い。チャンスは十分にある。

レアンドロ・ドミンゲスがボールをキープ。すると黄色いユニフォームが一斉に動き出す。中澤が転ぶ。レアンドロ・ドミンゲスからホットラインでジョルジ・ワグネルに。ダイレクトで中澤が転んで出来たスペースの田中に。
「フリーだ!」
まさかの右足シュート。
「マジかよ!」

さっきもそうだが柏のセンターバックは弱い。それでも失点が少ないのは守備的なボランチ2人を加えた4人でガッチリと中央を固めるからだ。トリコロールは最終ラインの後ろにロングボールを何度も放り込む。これでボランチ2人は無力に。弱点はセンターバックだ。なにしろ増嶋の特徴はイケメンということ。プレーに特徴はないのだ。

橋本のファールは足の裏からに見えた。しかしカードは出ない。中村大先生は、カードが出ないことに、少し不満な表情をみせる。中村大先生のフリーキックが柏ゴール裏を襲う。この試合では中村大先生のポジションは右の前線。セルティックのときと、ほぼ同じ役割になった。フリーキックの斬れ味も十分。

直後の中村大先生へのファールにホイッスル。アドバンテージをとらない。村上主審は、前のプレーで中村大先生が不満だったために気を使ってホイッスルを素早く吹いたように見える。これら笛のタイミングが、次第に選手とスタンドを苛立たせていく。

ユウジーニョが倒れる。少しは手が絡んだが、すぐに倒れすぎる。しかも足から崩れて倒れる。これはシミュレーションを取られても仕方ない。落ち着かない荒れ気味の試合を増嶋がさらに荒れ模様に。ボールを持った飯倉を後ろから襲う。こちらも当然カード。

面白いプレーがあった。小林が右サイドでドリブル。左手前に大黒が下がってくる。それを追い抜いてディフェンスラインの裏に中村大先生が走り込みスペースにパスが出る。マイボールになったら時間をかけずに敵のディフェンスラインの裏を狙うチームコンセプトを表現した好プレーだ。

ここ迄でわかるのは柏の右サイドが昨年よりもずっと攻撃的になっていること。レアンドロ、酒井。左サイドバックが守備的な橋本担ったことが大きい。その分、酒井の攻撃参加機会が増す。では左が守備的かというと左の中盤をジョルジ・ワグネルが務める。こちらも攻撃的だ。ただ、酒井とレアンドロ・ドミンゲスと田中が近い距離で素早くパス回しをしてくると、どうしても数的不利になる。これを金井が一人で止めることは容易ではない。

前半終了間際にもジョルジ・ワグネルのきわどいシュートを喰らい肝を冷やす。

「予想以上に良いゲーム。樋口監督の提示するコンセプトを表現できているね。守備のポイントが高い位置で驚いた。あと、スローイングがチャンスになる。去年までとは全然違うよ。」

後半は立ち上がりから柏ペース。中盤の守備の厳しさにボールを失う。そして55分を過ぎるとトリコロールの足が止まる。

突然の学ゴール。ボールを要求する大黒を無視して4人に囲まれながらネットを揺らす。ただ揺れただけではない。突き刺した。あまりに美しいゴールに、周囲の言葉を交わしたこともないトリコロールの仲間達と歓喜する。
「いいぞ学!」

劣勢からの同点劇。トリコロールに勢いがつきそうな流れをレアンドロ・ドミンゲスが断ち切る。この男は凄い。
「撃ってくる!寄せないと!」
右のアウトフロントで軽く蹴り上げたボールは弧を描いてゴールに吸い込まれて行く。
「中澤、寄せてくれよ。」
しかし、そのとき見逃さなかった。レアンドロ・ドミンゲスにボールが渡る前のタッチライン際で、酒井のドリブル突破に樋口監督が足を出したところを。アツいぜ樋口監督。

先程と同じような形でレアンドロ・ドミンゲスにシュートを撃たれ大ピンチに陥るがシュートは飯倉の正面。事なきを得る。この時間帯に感じた事は柏の選手が倒れないこと。途中出場した水野が身を投げ出してのプレーを連発。スタンドを沸かせる。
以前にも紹介したことがあると思うが、柏の竹本氏と食事をしたことがある。その際に、なぜ水野が起用されないのかを質問したところ「あれくらい上手い選手はゴロゴロいる」と答えられた経験がある。柏の強さの秘訣の一つに「強さ」がある。倒れない。倒れてもボールに食らいつく。そうでなければピッチ上で闘うこと許されていないのだ。

近藤のヘディングシュートも飯倉がビッグセーブ。苦しい時間帯をギリギリで凌いでくれる。今年も飯倉は頼りになる。

残り時間が少なくなってくる。ユウジーニョに代えて登場した怜は、ツートップのポジションで中央にいる間は相手を背負うことになって機能しなかったが、サイドにポジションを移すと本領発揮。金井とのコンビネーションも冴える。金井は見事なドリブル突破。たまらず後ろから倒した酒井はカード。ここからトリコロールは息を吹き返す。

怜が右サイドで中村大先生にボールを預ける。中村大先生が中へボールを運ぶ。ディフェンダーが中へ絞る。右のスペースが空くと走りこむ玲にパス。ここで手薄になったサイドは一対一の状況に。怜が仕掛ける。一瞬の瞬発力でクロスを入れる。ゴールへの至近距離から大黒がヘディングで合わせる。素晴らしいプレーだ。ボールはクロスバーに当たり真下に弾む。惜しくもゴールならず。
「惜しい!」
微妙な判定だが副審はしっかりと横から見ていた。

エキサイトするスタンド。一時は止まりかけていた脚も動き、最後まで何が起こるかわからない。同点に追いつけるかもしれないし失点するかもしれない。一つ一つのプレーから火が吹き出しそうだ。

競り合いで谷口が倒れる。これはノーファール。こぼれ球を奪いに行った小椋にスライディング。これは危険なタイミングにも見えるが明らかなファールとも言い難い。小椋が倒れる。
「あ、報復!」
小林が、物凄い勢いで倒しにかかるのが見える。倒す前から声が出る。両手と片脚を使って派手な倒しっぷりのファール。誰がどう見ても報復だ。これはまずい。
「やっちまった!ヤバい。」
幸いカードは赤ではなかった。いつもは冷静な小林をエキサイトさせるのが古巣とのたいせんであり、さらに特殊なムードを創り出すのが日立台。アドバンテージや大黒のヘディングのノーゴール判定、更には手に当たった二つの判定(帰宅後に録画を見ると、いずれも明らかなハンドリング判定はしにくい)もあって、アウエーゴール裏は騒然となる。柏は、直後に澤を入れて逃げ切りパターン。

荒れ模様の終盤で怜が脅威に。中村大先生がディフェンスラインの裏に送ったボールはただのルーズなパスだが怜の快足を警戒して簡単にタッチに逃げる。このスローイングから小林がクロス。飛び込むのは谷口。スタンドが静まる。アディショナルタイムの同点劇。谷口は実に勝負強い。そして、諦めるムードを一切感じさせなかった我がトリコロール。

「凄い試合だった。」
「よく追い付いた。」
日立台にF・マリノスコールだけが響く。

苦しい試合で三度追い付いての引き分け。昨年は全く歯が立たない相手との激戦。素晴らしい開幕戦となった。さらに満足度を高めたのは、この一年間に取り組んで行こうとする樋口監督のサッカーを感じ取ることが出来たということだ。決して引かない。前からボールを奪いに行く。中村大先生は下がらない。スローイングはボールを長めに動かす、などなど。贅沢を言えば、ボランチが簡単にさばき過ぎずに、少しだけドリブルで時間を稼いでくれると、試合運びがもっと落ち着くはずだ。

「クラブは昨年からの継続を強調していたけれど、継続したのは人だけだったね。やりたいサッカーは全然違う。」
静かな柏の街にトリコロールのサポーターの弾む会話だけが響いた。

シーズンあけましておめでとう。

私たちの幸せなスタジアムが、また帰ってきた。


村上さんの判定については、こちらをご覧ください。



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題字:書道家うどよしさんに書いていただきました。