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2階の目線 2階の目線2012

見えたスタイル 1-1 大宮(三ツ沢)
2012年4月14日 石井和裕

試合終了のホイッスルが鳴ると三ツ沢は静けさに包まれた。
「また、勝てないのか。」
落胆に肩を落とす。うつむく選手たち。しかし、飛ぶ声は、厳しい鋭さを感じさせながらも、温かだ。
「中町!よかったぞ!」
「翔!レギュラーとれよ!」
「冨澤!次も頼むぞ!」
勝てなかったが負けたわけじゃない。

大宮のスローイングを奪い、ペナルティエリア外から放ったユウジーニョのシュートは、柔らかな弧を描いてゴールに至る。
「おーーーーーー!」
「素晴らしい!」
小さなスタジアムでずぶ濡れになって戦況を見つめてきたスタンドが遂に沸騰。拳を突き上げ歓喜する。
「やっと点を獲ったぞ。」
「今期、初リードだ。」
「そもそも、今シーズン、始めてゴールを見るってサポーターも多いんじゃないかな。」
「そうかもしれないな。」
「よーし、押し込め!」
「もう一点を奪いに行け!」

ここまで、この試合はスコアレスだったが、迫力ある攻防がスタンドを沸かせてきた。それは、三ツ沢のスタンドがピッチに近いからだけではない。なにしろ、この冷たい雨の中なのだ。辛い試合になってもおかしくない。だが実際は休む事なき激しい攻防戦。スピーディな展開。

この試合で樋口監督の考えるサッカーの骨格が明確になった。ボールを奪えば、誰かを探す事なく、パスを繋いで、しかも手数を少なくして敵陣にボールを運ぶ。サイドに人数をかけてパス交換する。これまで442にするとポッカリと中央にできてしまっていた誰も居ない大きなスペースは、中村大先生が自由に動いて埋めるよりも、主に中町が縦の動きで活用する。特に目立ったのは、中町のダイナミックな動きだ。膝の怪から回復し、遂に本領を発揮し始めた。SFC出身の頭の良い選手だ。ボールを受けてから次のアクションまでの判断が早い。だから、試合を止めない。

そして富澤の強気の配給。彼の選択肢は、常に前にボールを運ぶことを優先している。そして、そのパスは、このクラブで最も丁寧だ。適当な浮き玉のパスを出すことはほとんどない。新加入、元J2、元主将の力強い中盤の底2人が、この難破寸前の船の舵を握っているのだ。

その反面、中村大先生のドリブルはアクセントではなく、迷いと無駄を感じさせる。この船のスタイルは、明らかに変革したのだ。

後半が始まってユウジーニョのゴールも飛び出し、主導権を握って試合は進む。前半とは明らかに違う。パスの出しどころと、サイド攻撃のスピード感が、まったく違うのだ。

「この動きは樋口監督の指示なんだろうか、それともドゥトラの判断なのだろうか?」
「ちょっとわからないな。」
両サイドバックがオーバーラップしたままで両サイドの攻撃枚数を増やす似非バルセロナ戦術が樋口監督のポゼッション策の基本戦術。前半までは、いつものように小林とドゥトラが同時に高い位置に張り出して足元でボールを受けて攻撃を繰り返していた。

しかし、後半は明らかに違うドゥトラは遅れて長い距離を走ってオーバーラップしてくる。そしてスペースにボールを要求する。助走があるから攻撃のスピードが高まる。とはいえ、昔のドゥトラほど無理なドリブルをしない。周りとの連携で崩す。これが、前半との明らかな違いだ。そして、どちらかというと窮屈なプレーを繰り返してきた選手たちのプレーが生き生きとしてきた。雨中に見えた明るい光だ。この輝きが試合を重ねるごとに眩しくなっていくことを信じたい。

中村大先生が簡単に奪われたボールを一気に持ち込まれ、ラファエルから長谷川のゴールで同点にされる。実に悔しい失点。
「中村大先生は、さっきのひどいファールでカードをもらった時点で限界だったなー。」
これだけ雨だ。ずぶ濡れだ。勝てなかった試合だ。もったいない結果だ。だが、意気消沈はない。それは、最後に登場した翔の躍動がワクワクさせてくれたからかもしれない。でも、それよりも、この船のスタイルの変化を実感出来たからが最大の原因だろう。明らかに進歩を感じている。そして、主導権を握った。ナビスコでは散々やられたカルリーニョスをツートップが封じた。

「いろいろ考えて見るとさぁ、ここまで、勝てていないけどさぁ、実は苦手な相手ばっかりなんだよ。だから、
ある意味、妥当というか、負けていないというか。」
「確かに、大宮、柏、仙台、鳥栖、みんな勝てない相手だわ。」
「だからさぁ、ゴールデンウイークで神戸、浦和、札幌に連勝すれば、決して悪く無いんじゃないかな。」
「確かにねー。」
「でも、すっかり負け癖がついたな、俺たち。」

勝ってはいないが負けていない。







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題字:書道家うどよしさんに書いていただきました。