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2階の目線 2階の目線2012

ナビスコカップ
雨の中での安堵感 0-0 新潟(三ツ沢)
2012年6月9日 石井和裕

日本の気候は変わってしまったのかもしれない。屋根の無い三ツ沢に降る雨は、東南アジアそれと似て、激しい風と共に額に打ちつける。ただでさえフラストレーションの溜まる消化試合を、更に重たい気持ちにする。
「土曜の昼の消化試合でスコアレスドロー。何て贅沢な時間の使い方なんだ。」
「ガスには絶対勝てよ!」
「来週は負けられないぞ!」
「ガスと川崎には連勝だぞ!」
視線は、既に向こう側に向いている。

既に予選突破の可能性はなかった。一方の対戦相手の新潟はリーグ残留を最優先に、主力をごっそり温存してきた。しかも、トップには武蔵とかいう素人を混ぜてきているので、実質的には二軍で10人。当然のことながら、マルキーニョスと大黒のツートップで臨めば、面白いようにパスが回る。

序盤にフリーでマルキーニョスがシュートを枠の左へ。これが、この試合の苦行の始まりだった。決して悪い試合だったわけではない。いくつかの決定期にシュートを枠にさえ飛ばしておけば3-0で勝っていた試合だ。それくらいの力の差が歴然と見て取れた。それを決められないのは、トリコロールの悪しき伝統。

前半に救いがあったとすれば、それはアディショナルタイムが1分しかなかったことだろう。あれほどコロコロと新潟の選手が倒れ試合が中断したのにも関わらず、わずか1分間だけ、強い雨の中で我慢すれば良かったということは奇跡に近い。

後半に入ると動きが変わる。前線からボールを奪い、ゴール前に何度も迫る。
「早い時間で決めて来い!って言われたのかもな。」

後半にスタンドを唸らせたのは富澤の守備。スライディングで何度もボールを奪い縦にパスを送る。新潟の中盤の選手がゴールに背中を向けてパスを受ければ猛然とダッシュして距離を詰める。ボールを受けても前を向かせない。下げたボールをマルキーニョスと大黒が追う。素晴らしい守備の連携プレーを何度も魅せる。幾度か、ディフェンスラインの裏にパスが出るシーンもあったが、中盤の守備が安定していると最終ラインは楽だ。中澤も格の違いを見せつける。

前半は大人しすぎた比嘉が比嘉らしさを見せはじめる。クラブ入りしてから、ずっと停滞感を感じさせるプレーだが才能は間違えない。左サイドのコンビネーションで新潟を圧倒。試合にならないと判断し新潟はブルーノロペスを投入。

この年齢にして格を見せつける雰囲気のあるプレーヤーへ。ユウジーニョは自身のポテンシャルを示す。彼のいる、いないで、ここまで試合は違うものになる。それを間近で観られたバックスタンドは幸せだ。仕掛けることの大切さを思い出す刺激的なボールタッチはサッカーを単純明瞭にする。ボールを前に進めるのだ。絶望的な気分に陥ることなく三ツ沢の坂を帰ることが出来たのは素晴らしいプロの技を目撃したから。

結果は3試合連続のスコアレスドロー。勝てない試合が続く。だが、守備面での収穫は大きい。僅かながらも前へ進んでいる実感はある。次の試合はガス。
「ガスだけには負けるんじゃねーぞ!」
バックスタンドから飛ぶ声援。あのポゼッションサッカーは、これまで、浦和、広島がやってきたサッカーの延長線上に考えることができる。つまり、抑えることができる。私たちは抑える方法を知っているのだ。坂を下る会話の中には、なんとなく、その安堵感があった。







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題字:書道家うどよしさんに書いていただきました。