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2階の目線 2階の目線2012

クラブを守る 1-0 東京(日産)
2012年6月16日 石井和裕

弱虫の移籍を制裁するのはクラブを守ることである。何千万円もの投資をしながら、自分勝手な言い分で去られていては、愛するクラブの経営は貧窮する。長谷川と渡邉の移籍は、到底受け入れ難い。開門直後から、スタジアムには怒りの空気が漂っている。

選手たちの気迫は、全くガスに付け入る隙を与えない。序盤、コーナーキックの連発。気迫の競り合いで、あと一歩までゴールに迫る。何度も繰り返す。森重がタッチライン際でユウジーニョにファール。不満そうな素振りを見せる。
「あいつを狙っていけ!」
「いいぞ!」
「家本さんは、あのあたりは、しっかりとるからね。うちには有利。判定は正しいんだけど、ファールギリギリを狙ってくるチームは、あの判定で頭にきちゃうんだよね。」

倒れないという気持ちが伝わるプレーの連発。ファールにもひるむことなく前へ突き進む。守りは寄せが早いだけではない。目立つのは、敵とボールとの間に身体を入れて、ボールを無理矢理奪おうというプレーだ。

当然のことだが、渡邉がボールを持つとブーイング。これは、とても残念なことだった。なぜなら、渡邉は出場時間中に、ほとんどボールに触れることが無かったので、数える程しかブーイングをする機会が無かったのだ。そんなブーイングで渡邉がミス。いや、元々トラップは下手だった。エルゴラにはユウジーニョのコメントが掲載されていた。
「シュートは上手いよ。シュートはね。」

酷いトラップミスだが、ガスサポからは暖かいコール。
「カズマ東京!カズマ東京!」
馬鹿馬鹿しい。
「いいよ、引き取ってくれ!」
「いらねー!」

ガスの選手は、予想外の猛攻に混乱している。セットプレーで権田が飛び出す。ボールに触れない。得意のはずの中盤のパス回しは気配もない。そして、副審も混乱しマルキーニョスのオフサイドを見逃す。
「ナイス誤審!」
これは面白くなってきた。
「こりゃぁガスサポは怒るだろ!」
「さっきから、ファール判定にも不満だろうしね。」

マルキーニョスが競り合いで敵を吹っ飛ばし左サイドを駆け上がりグランダーのクロス。走り込んで来たユウジーニョが技ありでゴールに流し込む。ビューティフル!素晴らしいゴールだ。跳ねて跳ねて跳ねて喜びを大爆発させる。しかし、副審の判定は、まさかのオフサイド。
「どうみてもオンサイドだと思ったから旗を見ないで喜んじゃったよ。」
「綺麗だったなー。」
「本当にオフサイド?」
「あっちの副審は怪しいからなー。」

渡邉の真横には常に中澤と栗原。立つだけでプレッシャーをかける。あんな怖い顔をした大きな大人が、常に両脇にいるのだ。ガスの攻撃はディフェンスラインとボランチでボールを回しながら前線のルーカスに当てて後ろの選手が殺到するのがスタイル。しかし、トリコロールは、浦和戦で完成した守備のブロックでルーカスへのパスコースを完全に塞ぐ。梶山や長谷川は一人で局面を打開できる選手ではない。ルーカスからのパスを前を向いた良い体制で受けて、短い距離感でパス交換することではじめて機能するのだ。トリコロールの守備のブロックは渡邉や長谷川へのパスコースまで完全封鎖しているわけではない。全てを封鎖することは出来ないからだ。しかし、マルキーニョスとユウジーニョから始まるパスコースの限定は、美しく、狭く機能し、ガスの元栓をしっかり締めた。これなら爆発することはない。

何度も左サイドから蹂躙する。マルキーニョスが中央でアクセントになることで、サイドにフリーの選手が何人も生まれる。ボールを持てば後ろの選手が追い越して走り込み、パスを受ける。そんなプレーの繰り返しから生まれたゴール。
「兵藤に出せ!」
ディフェンスラインの裏に、弧を描いて走り込む兵藤。そこに、予想に反してダイレクトでスルーパスが素早く送り込まれる。
「来た!」
「出た!」
「決めろ!」
「決まった!」
「うぉーーーーーーーーーーーー!」

ここまで、圧倒的にゲームを支配した。そして、これ以上ないくらい美しいゴールを奪った。ボルテージは最高潮だ。

さらに学がドリブルでガスの選手を3人引き付けフリーの兵藤にパス。兵藤はフリーだったがコースを限定され権田のスーパーセーブで防がれる。まるで、今、欧州で流行りの強豪クラブの闘い方のようだ。前線でプレッシング(プレッシャーではない)をかけ、高い位置でボールを奪い、数的優位でシュートにまで短時間でとうたつさせる。その連続攻撃。

ガスは椋原を下げて加賀投入。徳永をサイドに。ポポビッチは負けているのにも関わらず守備の強化をしなければならない惨状。だが、本当に代えるべきは別に選手なのは明らかだ。闘わず、逃げている選手が全体の2割もいれば、そう簡単に劣勢を跳ね返すことは出来ないだろう。

攻撃面では縦にボールの入らないガスはルーカスを低い位置に下げて、ルーカスへのパスコースを開く。これで、ルーカスからの距離が開いた渡邉は、ますます機能しなくなる。本来は長谷川がやるべき仕事をルーカスが一人二役。後半のアタマからは太田がアクシデントで中村北斗に交代。これで、渡邉か長谷川、どちらかは最後までピッチに残る不幸な展開に。後半になってもピッチに倒れるのはガスの選手ばかり。ここまで倒れれば、まともな試合にならない。

ポポビッチの我慢も限界。下げられたのは渡邉。ブーイングと拍手でピッチから送り出す。もはや「カズマ東京」コールは聞こえない。
「河野か。」
「まともな奴が入って来ちまったじゃないか。」
これでピッチ上の人数は11対10に。

しかし大勢は変わらない。何度か河野が絶妙な飛び出しを見せるもののパスが届かない。前半ほどではないものの、トリコロールの支配は変わらない。中村大先生のフリーキックが決まっていたら、その時点でガスサポの何割かは、一足早い帰宅を選択したのではないだろうか。

更に、ゴールまであと一歩の激しいシーン。リードが最少得失点差でしかないだけに、攻防に力が入る。点を仰いでノーゴールを嘆く。

幾分、ガスがポゼッションを持ち直したことでトリコロールの脚が止まりはじめる。そこで樋口監督は谷口をツートップに入れて運度量で守備固め。それが功を奏して、攻勢を跳ね返す。

88分、右サイドの中村大先生のドリブルを止めようとするディフェンダー2人が中村大先生に吹っ飛ばされる。かつては部活サッカーの異名で縦に早く力強いサッカーが特徴だったガスが敵対の象徴としていた中村大先生に吹飛ばされることになるなど、当時は、全く想像できなかったシーンだ。ガスの歯車は狂ったままだった。

トリコロールの守備のブロックは最前線から始まる。ツートップがパスの出どころを抑えるのが基本。敵ボランチのポジションと能力によっては4231として中盤の3枚がラインでパスコースを塞ぐ。この試合ではアディショナルタイム入りを前後してガスが3バックの布陣に変更して来た。すると、前にいるはずの谷口が左サイドに引っ張られて懸命の守備。いるべき場所に谷口がいない。これが仇となり、ガスは中央から自由にパスコースを選択出来るようになる。ここにきて、ピンチは突然やって来た。
「谷口!そこじゃない!」
「戻れ!谷口!」
「これ、ヤバいって。あいつ解っていない。」
「見ろ!富澤が谷口に叫んでいる。前へ行けて叫んでいるぞ!」
「すげぇ富澤。頼む。」
谷口の戻りが遅いと見るや、富澤が猛ダッシュで前線の守備に走る。さすがは、元読売の主将。強化部は素晴らしい選手を補強してくれた。

一瞬の攻勢に出たガスだが、高橋がなんでもない場面でバックパスをミスしコーナーキックに。歯車は元に戻らない。ガスは「ガチあま」の2人に最後まで振り回された。気の毒な試合だった。

「4試合連続で完封だぜ!」
「4試合で1得点だけどな。」
「Jリーグもスケジュールをもっと考えてくれないと、キツイわ。次節も裏切り者が2人いる川崎だぜ。」
「せめて一週間くらいインターバルを空けてくれないとなー。」

ガス全体のことは抜きにして、裏切り者の弱虫は制裁され、私たちの愛するクラブは守られた。
「長谷川東京!富澤がマリノス!」
私たちは上機嫌でスタジアムの階段を降りた。








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題字:書道家うどよしさんに書いていただきました。