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2階の目線 2階の目線2012

右サイドで学ぶ 0-0 広島(日産)
2012年10月6日 石井和裕

ユウジーニョのドリブル突破でPKをゲットする。それまでのこう着状態から一気に弾けたスタンドは興奮状態に。数年前まではPKといえば、手拍子もチャントもコールも止めて、固唾をのんでキックを見守った。キッカーに平常心の環境を与えるためだ。だが、特に、この試合ではスタンドが興奮状態に陥り、テンポの速いチャントが鳴り響く。当然、キッカーの視界にも大きく揺れるスタンドが入る。
「えっ、兵藤じゃないの?」
「あ、小野が蹴るのか。」
「う〜ん、良いのか?」
「とにかく決めてくれ。」
広島の選手が、代わる代わるPKスポットの前を横切る。何か声をかける。
「頼む、枠に蹴ってくれ。」
仲間の声が聞こえる。私は、手拍子を止め、ピッチを凝視して、ゴールを願った。

試合終了。スコアレスドロー。多くの招待客は、この結果を、どのように受け止めただろうか。おそらく、物足りなさを感じて帰路につくのではないか。彼らは、また、スタジアムに戻ってきてくれるだろうか。足早に去っていく親子連れを眺めながら、空虚感に触れる。しかし、一方で、年間チケットで観戦しているサポーターにとっては、悪い試合ではなかったのでは無いだろうか。むしろ、面白い試合だった。首位相手の完封は、しっかりと評価されても良い結果だ。

「とにかくラインを下げすぎないことだね。」
「佐藤が裏を狙ってくるけど下げすぎると高萩にスペースを突かれてやられる。」
「あとはミキッチが出てくる前になんとかしたいね。」
試合前、Mcafeでの会話。広島のやり方は解りきっている。だから対策は十分だったのだろう、少なくとも守備面においては。
「ヤバい!」
「まずい!」
頻繁に悲鳴が飛ぶものの、完全に崩されたシーンは多くなかった。普通であれば一点ものの佐藤のダイビングヘッドも哲也が好セーブで止めた。守備面では選手たちも満足だったに違いない。

「う〜ん、大胆だなー、この424の布陣は。両サイドが厄介だなー。」
「とにかく、よく走るよ。走る量が違う。」
広島の布陣は、選手個々の走力に裏付けられている。誰かがさぼれば、この布陣は崩壊する。そして、誰かのミスを穴埋めする助け合う心も重要だ。
「左が空いてる!!」
「出せ!!」
「チャンスだ!!」
「あー高萩が走ってくる。」
「何だよー、チャンスを無駄にしたぁ。」
攻撃的なポジションから全速力で穴埋めに走った高萩のプレーは、まさに、その助け合う心と走ることが融合した隠れたファインプレー。
「こういうのは見習わないとなー。」

広島の強さは、前監督の大胆な戦術に森保監督の手堅い守備の徹底が加わったこと。Jリーグの中では異彩を放つ両サイドに人数をかける攻撃的な布陣。しかし、守備時には532に移行する。攻撃から守備への切り替えが特に早い。攻撃に、序盤は特に大きな脅威を感じなかった。しかし、ほんの少しでも守備に綻びが出来れば失点してしまう、そんな圧力を常に感じる。

終盤にミキッチが投入されてからは攻撃のギアが一気に入る。逆サイドからのロングボールがスペースに入れられ、ミキッチともう一人が走り込んでくる。このスピーディーで単純な攻撃に悲鳴が上がる。逆に、残念だったのは松本怜だ。彼は才能を無駄遣いしている。素晴らしい走力を持っているが、敵のプレッシャーに極端に弱い。だからドリブルでサイドに逃げる。プレッシャーに打ち勝つ工夫を怠っている。そして、足下でしかボールを受けようとしない。これでは走力は生きない。さらに周囲の選手や監督は、もっと、足下ではなくスペースにボールを入れて松本怜を走らせることを練習から徹底してはどうだろう。少なくとも、昨年の天皇杯のときは、それが出来ていた。もう中堅選手だ。才能を眠らせておけるほど彼に時間は残されていない。

嬉しいニュースは、アンドリュー王子と中町の活躍。そして谷口の復帰だろう。アンドリューは、すっかり自信を持ってプレーできるようになった。ロングボールでスタンドを沸かせることもしばしば。鹿島で点をとって「玉子」から「王子」になった。中町も「バランスをとる」ことに気を取られすぎず、ピッチを広く動いてゲームを創れるようになってきた。そして谷口。大黒が監督批判で起用されていないとなれば、前線の駒不足は深刻。嬉しい復帰だ。中盤の底での起用という選択肢が無いとなれば、このポジションでの起用しか無いだろう。ワントップでの器用な谷口に迷いを生むので適切ではない。

数試合の停滞期を経て、トリコロールが、また、上昇する兆しが見える。だから、このスコアレスドローには大きなストレスを感じなかったのだろう。とはいえ、そんなことを感じるのは年間チケットで観戦するサポーターだけ。新しいサポーター開拓は急務だ。数年間の積み重ねで、ここまで作り上げてきた広島から学ぶことは多い。







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題字:書道家うどよしさんに書いていただきました。