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2階の目線 2階の目線2012

スタンダードとは? 4-0 磐田(日産)
2012年10月20日 石井和裕

いつも以上に日産スタジアムの周辺は盛り上がっている。数多くの露天が並び、ステージでは華やかなパフォーマンス。年に一度の新横浜のお祭りだ。そこへ嘉悦社長が登場。
「今のチームはスタイルを構築している途中。」と発言した。

巨額の単年赤字を生み出し、自ら絶ったはずの退路を簡単に繋ぎ直した社長の発言は信用に値しないものとなっている。株主が、いつ解任してもおかしくない。しかし、現状では経営責任者であることは疑う余地がない。
「社長も樋口さんも、来年もやるつもりなんじゃないかな。」
「樋口さんのスタイルって、もう固まっていて、これ以上、構築をしようがないと思うんだけどなー。」

Mcafeでも話題は樋口采配に及ぶ。
「この前の代表戦のブラジルを見ても、やっぱり前線から奪ってゴールに直結。速攻が主流なんですよ。」
「奪ったら、即ゴール前に皆で走って殺到だもんね。」
「だから樋口さんのポゼッションして左右を高くあげてパス回しして崩してゴールってサッカーは、確かにはまれば楽しそうだけど、そう簡単にはできないって。」
「うちは、伝統のカウンターでいいじゃん。」

外の賑わいと比べると、幾分寂しいスタンド。磐田の質の高いサッカーを知っているだけに気分が乗らない。いわゆる、年間チケットを持っていなかったら来場するモチベーションを保ちにくい試合だ。しかたなく、無理やり大きな音で手拍子し、大きな声でコールする。自らの気分を盛り上げる。バックスタンド2階の中央でありながら、周辺には空席が目立つ。

「出せ!」
「よし!」
「来た!」
「決めた!!!」
あっという間に先制する。ピッチ上に大黒がいるのかと見間違えるほどの見事なマルキーニョスの動き出し。そこに中村大先生からのパスがピタリとはまる。予想外にあっさりと点が入る。期待していなかっただけに驚きと喜びが大きい。

磐田のディフェンス陣は、頑なに自分のゾーンを守っているように見える。自分のゾーンから離れたトリコロールの選手を追わない。ディフェンスとディフェンスの間にポジションをとって斜めにダッシュする。すると、面白いようにチャンスができる。

「決めろよ!兵藤!」
動き出したマルキーニョスにボールが収まり、第三の動きをした兵藤がパスを受ける。ゴールキーパーとの一対一になるがボールはポストへ。
「決めてくれよ!」
「っでも、兵藤は脇の下の難しいところ狙ってるぜ。あれを脚で止められたんじゃ仕方ない。」

圧倒的に攻める。無数のチャンス。しかも、余計な手数を必要としない。奪えばすぐにゴール前へ。守備陣ををとれていない相手には中村大先生のスルーパスが冴える。ドリブルもオシャレさん。無駄な動きではなく、一つ一つのステップで局面を打開していく。

そろそろ決めないとまずいだろう、という空気が流れ始めた35分に兵藤が決める。またもやファインゴール。とにかく攻めが早い。迷いがない。奪われたボールも高い位置で奪い返す。

まったく予想に反して、申し分のない2-0で前半を終える。走る磐田を走らせる隙がない。おそらく、前田も金園も不在で磐田は縦パスのターゲットを失っている。前に出ないボールを奪い取ってしまうトリコロールの守備。全体が連動しているわけではないが、前からの追い込みをかける。あの早野監督の守備戦術に似ている。出しどころのない磐田がボールを下げるたびにスタンドからは歓声と拍手。ノッてきた。

後半に入っても磐田にゆるさは変わらない。トリコロールは、序盤には幾分見えていたゆるいプレーが減少。前線からのプレッシャーをますます厳しくする。明らかに違うのは中町のプレーだ。前線に絡む。磐田の中盤を潰しに行く。運動量は増え、横ではなく縦に激しく動く。これは、福岡時代の動きに近い。やっと本領を発揮してきた。

これまで、中町のインタビューには「バランス」という言葉が数多く登場してきた。そして、運動量の少なさを指摘されてきた。この日の中町は、全く違う。イケメンが花畑に解き放たれたかのように、見事に舞った。

右が金井だということもあるが、樋口さんが開幕から描き続けてきた両サイドを高い位置にあげて、深い位置のボランチからのパス回しでポゼッションしてゴールを奪うスタイルを形成できていない。そして、磐田が攻守に弱気で前に出てこない。その結果、前半から磐田陣内でボールを奪うと速攻。これまでにない、スピーディでエキサイティングなショートカウンター攻撃を展開している。3点目の中村大先生のゴールも簡単に決まる。こうなれば、中盤の底も前へ。中町は縦の動きでたびたび攻撃に絡んでいる。

最後に、そんな中町にご褒美。途中出場のユウジーニョが左サイドを切り裂き、中央にグランダーのクロス。待っていたのは中町。中町、待望のリーグ初ゴールは、これもまたファインゴールの4点目。盛大な拍手で讃える。こんな中町を待っていたのだ。

樋口監督らしからぬ、速攻からのファインゴールを連発して4-0の大勝。一方で、大黒がベンチ入りしない心の狭さはそのままで、選手交代もいつもの通り。疲れの見える兵藤は、またもサイドバックへ。3人目に出てきた狩野は当然のようにコーナーキックを蹴ろうとしたがユウジーニョに制される一幕もあった。大勝の中でも不安は変わらずに存在する。

だが、樋口監督は来年もチームの指揮をとるのではなかろうか。何となく、そんな気がしてならない。そんな想いも胸にしまっておきながら、馬鹿話を炸裂しつつ帰路につく。とにかく久しぶりの嬉しい大勝だ。
「だからさぁ、しっかりポゼッションなんていらないんだよ。」

帰宅して樋口監督の記者会見テキストを読んで驚いた。
「ボールの奪いどころが狙い通り。」
「奪ってショートカウンターが狙い通り。」
「このゲームをスタンダードにしたい。」
この大勝は偶発ではなく、狙い通り。日頃のトレーニングの成果だというのだ。ほんの一ヶ月前まではディフェンスラインは深く、中盤の守備に苦心していた。富澤と青山でディフェンスラインを浅くした。両サイドバックを高い位置に上げたまま、ボランチがセンターバックの間に入ってスリーバックのポジションをとるフォアリベロを採用した。そこまでは、樋口監督の開幕から描き続けてきた戦術の微修正だと考えていた。しかし、このショートカウンター攻撃は、明らかに違う。どこかで戦術の転換があったはずだ。

そう、そして思い出した。
「今のチームはスタイルを構築している途中。」
もしかすると、樋口監督は、どこかで現実路線に切り替えたのかもしれない。でも、樋口監督は、いつも悩んでいるポーズの印象なので、私たちは、それに気づかなかったのかもしれない。

オプションではなくスタンダード。
樋口監督はスタンダードと明言した。これは、ひょっとすると勝てるかもしれない。ただし、選手交代が試合を左右することにならない試合展開が必要だ。そこだけは変わらない。







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題字:書道家うどよしさんに書いていただきました。