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2階の目線 2階の目線2012

豪雨で浮かんだもの 1-2 柏(日産)
2012年11月17日 石井和裕

日産スタジアムでは久々のゲームに、Mcafeでは練習場の様子やアウエーゲームの布陣、注目選手の動きの情報が交換される。特に気になるのは右サイド。なにしろ、柏はジョルジ・ワグネルとレアンドロ・ドミンゲスが両駒そろってワイドにポジションを敷いてくることが予想される。特に右サイドは守備の厚みが必要とされる。一対一で守りきれる相手ではない。
「右の金井はどう?」
「左よりも安定しているんじゃないかな。」
「今日は、きっと兵藤が右に張り付きだと思うよ。」
「あまり動かさないでしょうね。」
「となると点をとるためには、中央の中町の、縦の動きが鍵だな。」

劣勢を予想したゲームだが、良い意味で裏切る。ポゼッションは、完全にトリコロール。柏は散発のカウンターを見せるだけ。
「撃て!」
「あー決められない!!」
好機に沸き、逃してのけぞる。予想通り、中町がピッチを駈ける。
一方で、この試合も前からの守備が光る。特に、ディフェンスラインが相手の縦を切り、中町や兵藤が前後で挟み込む守備がボールを次々に奪い穫る。結局、この試合には敗れるのだが、この守備を見るだけでもチケット代の価値がある。

天候は試合前から暴風雨に。2階席の上段にまで雨が吹き込んでくる。ピッチ上に水が浮く日産スタジアムを、過去に何人が見たことがあるだろうか。少なくとも、私は見たことが無い。ただならぬ豪雨だ。

初の枠内シュートは金井。ヘディングで、ただし自陣のゴールに。何事が起きたのか理解を出来ず、スタンドが静まる。いつもであれば「事故のような失点だ、切り替えて頑張れ」で済む。失点直後には、いつものように、そう考えた。しかし、この失点はとてつもなく重かった。ピッチコンディションが、徐々に自由を奪っていく。

ふわりとした入り方をしてしまった後半。パス回しが軽く、あっさりとボールを奪われる。テンポよくつないだパスはゴールにまで転がり込む。気持ちの差を見せつけられる立ち上がりが、この試合の明暗を決した。

失点を重ねたとはいえ、選手たちの何が悪いというわけではない。しいて言えば、相変わらず学は走らず絶対にパスのこない場所で手を挙げていたり、どうみてもノーファールなのに簡単に倒れたりしてゲームに入れないことくらいだろう。ピッチコンディションが悪いと対戦クラブの自力の違いが鮮明になる。力強さは、明らかに柏が上回っている。これは日々の練習の積み重ねの閣下。試合の中で、ちょいと根性を見せたくらいで埋められる差ではない。

樋口監督は、残り3試合になって必勝のゲームプランを用意した。早い時間帯からの大黒投入。そしてユウジーニョ。
59分 金井 貢史 → 大黒 将志
76分 熊谷 アンドリュー → 小野 裕二
「勝負をかけたな。」
確かに、もう点をとるしか無いゲーム展開。だが、これは裏目に出る。最近のトリコロール好調の要因は中盤の守備。そして、それを支えるのは高い位置に同時にポジションを穫った金井とドゥトラ。それを支えるアンカーの選手(この試合ではアンドリュー王子)、そして、挟み込んで守備をする中町と兵藤。ところが、積極的な攻撃采配で兵藤が右サイドに移行することを皮切りに、その3つをすべて失ってしまう。中盤と右サイドの守備はスカスカになり、セカンドボールは、ほぼ柏が手中にする。結果、前にフレッシュな選手が揃ったものの、ゲームは柏がコントロールするという現象に陥る。

試合後のあっさりとした、それでいて口数が少なくなる落胆は、鮮明に浮き上がった自力の差と、采配でせめてを奪われてピッチ上をもがき続けた選手たちの肩を落とした姿が生み出した。

でも仕方ない。これが実力だ。誰かが手を抜いたのでもない。力不足だったのだ。
「名古屋も浦和も負けていないの?」
「あーこれは難しくなった。」
アジア王者への道は絶望的。
会話は次第に、札幌旅行の計画となっていった。私たちは幸せだ。負けても尚、次々と楽しみを見つける。たとえ絶望的であろうと、もし消化試合であろうとも、スタジアムには楽しい発見がたくさんある。それが当たり前の週末になっている。どんなの豪雨でも、どれだけ敗戦に落ち込んでも、試合、スタジアム、仲間と共にある喜びを上回る絶望など存在しない。来週もJリーグは続く。







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題字:書道家うどよしさんに書いていただきました。