マリーシア・ウエブ malicia web

私たちは1992年の結成以来
横浜F・マリノスを応援しています。

2階の目線 2階の目線2012

最後の完勝 1-0 鳥栖(日産)
2012年12月1日 石井和裕

最終節に、樋口監督のサッカーは一つの完成型を見せた。堅い守備。早いパスまわし。前線からの激しいチェイシングでボールを奪い、サイドから一気に敵陣に攻め込む。鳥栖のゴールキーパーが大当たりで流れの中からは得点を奪い得ない。
「これもダメなのか!」
「もう、止めるなよ!!」
何度もきわどいシュートが枠に飛び、スタンドが沸く。まったく危なげのない前半。スコアレスなのが不思議なくらいの猛攻。気迫を感じる。鳥栖での敗戦が、よっぽど悔しかったのだろう。倒れても立ち上がる。甘えが感じられない。
「コレを全試合やったら優勝だったね。」
いつもとは全く違うのだ。

そんなシビアな空気で試合が進むとピッチ上にスタンドも影響される。張りつめた空気がプレーの一つ一つに震える。ただ、後世にまで語り継がれる大誤審もあって震えすぎた。

スルーパスに抜け出したスター斎藤学が倒れる。
「鳴ったぞ!」
「PKだ!!」
「よし!!」
「あれ、キーパーがボールを穫っているぞ。」
「確かに足が前に出ていたけれど・・・。」
「でも、しっかりキャッチしていたし。」
「これは大変なことになるぞ。」
まさかの大誤審。ノーファールでボールをキャッチしたのにPKの笛を吹いてしまったのだ。
「うわ?。これどうするんだろ。」
「でも吹いちゃったからなぁ。」
鳥栖のベンチは猛抗議。収拾がつかない。

この日の審判団は、結果的には素晴らしいジャッジだった。試合は荒れることなく、疑問を挟む判定もなく、見事に試合をコントロールした。そして、この大誤審にも冷静に判断を下した。副審と相談の上で誤審を認め、ドロップボールで試合を再開。一瞬、緊迫の空気が緩んだが、何事もなかったかのように試合は再開された。

得点こそないが、素晴らしい前半。珍しいものも見られた。これで、90分間を終えた時点で勝利し、名古屋と浦和が引き分け、柏が負けてくれれば3位に入れる。こんなワクワク感を日産スタジアムで楽しめるのも、今年は今日で打ち止めだ。

後半は、中村大先生のフリーキックショー。鳥栖の不用意な反則は決勝点に繋がることになる。放たれた低い弾道は、壁に入ったトリコロールの動いた穴をハイスピードですり抜け、美しい弾道を描いてゴールに吸い込まれていく。ゴールラインを割る前から声が飛ぶ。
「入った!」
「決まった!!」
「やった!!!」
私たちは幸せだ。特に、幸せだと思う。こんなに美しいゴールを最終節で見ることが出来る。なんて幸せな人生なのだろう。

さらに、幸せを感じたのは、二人の主将経験者である富澤と中町の活躍だ。彼らの加入なくして、今シーズンの上位進出はあり得なかった。ストライカーこそ穫れなかったが、昨シーズン末のクラブ側からの契約非更新選手無しという難しい条件の中で、強化部は、素晴らしい補強をしてくれたと思う。感謝したい。

その幸せを揺るがせたのは、意外なことにロングスローだった。樋口監督?いや、あの采配は、エンターテイメントとして楽しもう。鳥栖が仕掛ける猛攻を跳ね返し、タッチに逃げても、サイドスローがクロスボールのように低い弾道でゴール前に襲ってくる。緊迫感が高まる。なにしろ、鳥栖には豊田がいる。日産スタジアムで豊田にやられては笑い話にならない。

残り時間は短い。ここは選手交代で時間を使いながら、ピッチ上の選手たちにマークの確認と落ち着きを与える間合いを提供したい。いや「したい」というよりも、それは定石だ。
「え????!??」
悲鳴にも似た驚きの声。なんと樋口監督は選手交代をする気配はなく、ハーフウェーラインにまで飛び出して主審にアピールをしている。第四の審判とやり合っているではないか。
「樋口!そんなのいいから采配しろ!!」
「頼むから選手交代してくれよ。」
冷静な選手たちの比較すると、樋口監督のエキサイトぶりは、完全に浮いて違和感を醸し出している。
「主審に時間のアピールするよりも、選手交代した方が有効だろ!」
「頼むから、樋口さん、落ち着いて!!」
「お願いだよ!」
完勝だったはずのゲームが、急に緊迫して見える。交代選手の指示をするのではなく、なにか不思議なダンスを踊っているように見える。
「なに、一人でピンチ招いてんだよ!」
アディショナルタイムにスター斎藤学と谷口を交代する。しかしピンチは続く。フラストレーションがたまる一方の終盤で、すっかり、この試合は違う印象になってしまった。振り返ってみれば、完勝といって良いはずだ。

寒空の下でアウエーの横断幕の長い話(ゴール裏の人以外はアウエーの、しかも横断幕の話には、あまり関心がないと思います。もっとホームゲームやサッカーの話をしないとね。)を聞いた上で、さらに「もうちょっとグッズを買ってくれ」というまさかの嘉悦社長のセールスパフォーマンスに呆れ、来期に向けて少しばかり不安を感じながら日産スタジアムをあとにする。社長の勘違いっぷりには閉口だ。一方、今年もたくさんの嬉しい瞬間を提供してくれたホームスタジアムにも感謝したい。私たちの素晴らしいホームだ。


場所を新横浜駅前に移す。祝勝会ではなく、打ち上げでもなく「目指せ元旦!王座奪還決起会」だ。予想を上回り30名以上が集まった。まずは、長いプレシーズンマッチの終了と、熊谷で開幕する今シーズンの幕開けを祝って乾杯。そして、参加者全員が過去の天皇杯の思い出を語った。それは、過去20年にわたり負け続けた敗戦の思い出。市立船橋戦、京都戦、福岡戦、神戸戦、聞くだけでも怒りが込み上げてくる良き思い出。しかし、私が初めてこのクラブを応援しようと思ったきっかけが天皇杯初優勝だったように、20年前の優勝をきっかけに応援し始めたというメンバーも複数いた。そして締めは田中さん。「悪い思い出はたくさんあるけれど、並のクラブだったら、このリーグ終了で、もうサッカーを見られない。でも、僕たちには、まだ天皇杯があるじゃないか。」という力強い言葉。誰もが頷き、元日に勝利することを誓った。

この日のサッカーあはノックアウト方式に向いている。前線からの激しいチェイシングとショートカウンター。ACLなんてどうでもいい。私たちは、ただ、再び、元日に日本一の座に復帰したい、それだけなのだ。
「次は熊谷で会おう!」







感想・ご意見をfacebookへどうぞ。貴方の気持ちを仲間に伝え、情報を交換しましょう。




題字:書道家うどよしさんに書いていただきました。