   
美
石井和裕
今年の天皇杯は激戦。特にセレッソとフロンターレがリーグ戦の不調をなにかの間違えだったんじゃないかと思わせるくらいの出来の良さで盛り上げてくれた。対する我がクラブのふがいなさ・・・はもう書くまい。とはいえ、あれほどのサッカーを見せてくれたセレッソもJ2では思うようにはいくまい。なにしろ同格の相手には、あのサッカーは通用するが、ばっちり引いてしまう格下の相手には、あのサッカーでは勝てない。J2を勝ち上がるには最低でも2つの戦術を用意する必要があるのだ。などと決勝戦のビデオを見た後、一人で考えていた。しかし、あれほどの好ゲームを見せてくれた両クラブだが、やはり80年代後半から90年代前半の我がクラブのカッコヨサには到底及ばないのだ。
日産の天皇杯を受ける姿は格好良かった。我がクラブは毎年のように決勝戦へ進出し栄冠を受けていた。だから、華麗なサッカーのフィールド上だけでなく、貴賓席での表彰式でも美意識をバッチリとスタンドに振りまいていた。清水、鹿島、磐田、名古屋、みなメダルやNHK杯をもらって、いちいちはしゃいではいかんのだよ。両手で頭上に掲げるなんてのはもってのほかだ。軽く頭の上に上げるなら、まぁ我慢できなかったとして良いとしよう、松永もやっていたし。
全てのメダルとカップが渡され、最後に一気に勢いを付けてかけ声と共に天皇杯と共に頭上に掲げる。あれこそが天皇杯表彰の「美」だ。日本サッカーの頂点、天皇杯を掲げ、本来は敬意を払われる場所である貴賓席にお尻を向ける。あれこそが至福の瞬間だった。今は表彰の方法もサッカーの質も変わってしまったので単純には比較できないけれど、決勝戦で、数々の劇的なゴールを見せ、表彰慣れして気品を見せていたあのころの日産は、なんとまぁ凄いクラブだったのだろう。
サッカーに「美」を。今年はくだらないファールと見苦しい抗議を減らしてほしいな。

   
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