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マリーシア・フットボールコラム

松田直樹を見る憂鬱  石井和裕

日本代表に松田の姿がない。アジアレベルであれば、宮本、田中、中沢のディフェンスラインもいいだろう。だが、ワールドカップでは百戦錬磨の兵達が脅威の身体能力を携えて、日本代表を待ち受けている。「松田を日本代表へ」そう主張する人は多い。マリノスサポーターであれば当然のことだ。松田はアジア予選に縁がない。だが、U-17でもアトランタでも、2002年でも最終予選は出場なし(地元開催は予選なし)、本番では万全のコンディションをもって臨み、強豪国のアタッカー陣と渡り合ってきた。

松田は闘志が空回りするタイプだ。特に2002年以降は代表漏れをすると、その傾向が強い。自分のポジションを忘れて攻め上がり、失点を招く。不用意に、相手を小馬鹿にしたプレーが裏目に出て、決定的なピンチを招く。これらのことは、もう何度も繰り返されていて、ちょっとやそっとことでは、サポーター達は驚かない。それが松田直樹なのだ。

それでも、マリノスサポーターは「松田を日本代表へ」と主張する。松田自身も、それがわかっているからますます闘志を燃えたぎらせ、そして空回りする。

松田はファン思いの選手だ。それがわかるから、サポーターからの人気も高い。かつて、福岡でのアウエー戦で、得失点差などを考えて攻めてこない福岡に「こい、この野郎!」と挑発し、試合後には涙を流したエピソード、「ここで退場にしたら試合がつまらなくなるよ」と主審に発言して退場になったエピソード、松田ほど、フィールドとスタンドの関係を意識してプレーしている選手はいないかもしれない。

私は、ドイツ・ワールドカップで強豪国のアタッカーをショルダーチャージで吹っ飛ばしている松田の姿が見たい。やはり、日本代表には守備の安定が必要で、そこに松田という日本人離れした能力の持ち主を欠かすことはできないと思う。だから、最近の松田を見るのがつらい。秋の鹿島戦ではジーコ像に「松田を使え!」という幕を被せようという計画を練っていた。だが、その気持ちを維持して実行できるかどうか。日本代表は実力や能力だけで選ばれるのではない。チームとして機能するかを監督が考えて編成するものだ。「松田を日本代表へ」、そう言いたくても言えない自分がいる。狂気を秘めたデイフェンダーであるはずの松田直樹が日本代表の内部を切り裂く凶器となってしまっては本末転倒だ。今の松田を見ていると、その空回りぶりは2003年の頃に近づきつつある。ワールドカップのメンバーに入るのではなく、軸として出場するのであれば、残された時間は、あまり多くはない。だが、時間が減っていくのとともに、焦りと比例してなのか、「松田を日本代表へ」と胸を張って言える試合が少なくなっていく。このままでは、自称「直樹サポ」などという、「サポーター」という言葉を都合よく使った限られた個人選手ファン以外に「松田を日本代表へ」という声を大きく上げる人はいなくなってしまうのではないかと危惧する。

ファン思いの松田ならば、自分が見放される、というときは、そのとき気がつくだろう。すでに、リーグ優勝の場に自分の立つべきポジションはなかった、ということを経験している。このまま「松田を日本代表へ」、そう言いたくても言えないマリノスサポーターを増やしている現実に、早く気がつくべきだ。

もし、できることならば、2002年11月9日、その日に時計の針を戻してほしい。場所は日本平。松田の軽率なミスで失点し、それを取り返そうとオーバーラップして松田がゴールを挙げた試合。もし、できることならば、そのオーバーラップの逆を突かれてさらに失点を重ねてほしい。そういう試合にやり直しをしてほしい。思い起こせば、あのとき松田のゴールの後、私たちは松田を賞賛し、喜びすぎたのかもしれない。



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