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マリーシア・フットボールコラム

ジーコジャパンである前に日本代表である  石井和裕

ワールドカップ・ドイツ大会の日本代表が発表になった。確実と言われ続けた、ジーコお気に入りの久保は落選。欧州遠征など代表での酷使で腰を痛め、全盛期の動きを失った久保への同情もあり、この落選を落胆だけでなくジーコ批判へ向けるマリノスサポーターも多い。テレビ、新聞は、これを「サプライズ」と報道した。

果たして、これは「サプライズ」なのか。感情を抜きにして考えてみてほしい。私たちは、最も沢山、久保のプレーを見ているのだ。良いときも悪いときも知っている。ならば、誰が言い切れるのか「久保がいれば勝てる」と。久保のプレーが全盛期とはほど遠く、全盛期のイメージが拭えない監督が苦悩し続けるのは、私たちが最も知っているではないか。

松田はもったいないことをした。この2ヶ月の松田は、誰もが認める素晴らしいプレーの連続だった。プレーだけであれば代表間違えなしだ。それでも、日本代表は実力だけが選考基準ではない。もちろん、理由の一番は貢献度でもない。チームとして、日本代表を、どのように作るかは監督の構想に委ねられている。あの、エリック・ザ・キング・カントナは全盛期にフランス代表から外された。それは、「内気なジダンが萎縮する」というのが理由だった。カントナ不在のフランス代表は世界の頂点に立った。一方のカントナはワールドカップの舞台には立つことが出来なかったが、代表を外れた後も所属クラブのマンチェスター・ユナイテッドで襟を立て続け王様としてフィールドに君臨。そして、今もなお、そのカリスマ性は健在。ナイキのCMでも存在感は光り輝いている。

ところで、久保はクラブで爆発するだろうか。今まではワールドカップを理由にハードなボディコンタクトを回避することを許されてきた。だが、その言い訳は、もう通用しない。だからフルパワーで試合に臨まなければならない。
岡田監督には、また一つ悩みが増えた。ワールドカップでの復活のために、という国民的使命がなくなった今では、闘えない久保を起用することを許す理由がなくなった。久保の状態を正確に把握して起用するか起用しないかを判断しなければならない。久保も岡田監督も、ここからが正念場だ。松田は、最近のパフォーマンスを継続して南アフリカを目指してほしい。

2002年 代表監督就任セレモニーに82年イタリア代表ユニフォームで望む
2003年 ジーコ像に腰紐を付けて引き倒し
2004年 ジーコ像の腰に湿布貼り
2005年 ジャスコのジーコ像襲撃

皆さんはご存知だが、改めて私はジーコが嫌いだ。来日した頃は、そんな感情を持っていなかった。だがチャンピオンシップの唾吐き事件で嫌いになり、監督経験のない外国人による代表監督就任はあり得ないと思わせた。J@Jさんは「ジーコが死ぬほど嫌い」な人、と私を称した。ま、死ぬほどではないけれど。

ジーコ監督は不安だ。嫌いだし采配に納得がいかない。特に守備。でも、もう引き下がれないところまで来た。メンバー登録も終わった。だから、もう、代えろと言っても仕方ない。そして、闘いは、いつまでも続いている。みんなは、それを忘れていないだろうか。
日本がワールドカップに出場できたのはアジア枠が拡大したからだ。1985年、伝説の木村和司がフリーキックを決めた、あの翌年、メキシコの青い空の下に旅立てなかったのは、東アジアに1つしか出場枠がなかったからだ。その後広がって勝ち得たアジアの出場枠数は確保し続けなければならない。日本、韓国、イランが勝ち点0だったら、アジアの出場枠は縮小する可能性が高い。日本だけが負けてもアジア各国からの批判にさらされるだろう。国際舞台での発言力も低下する。だから、ワールドカップに「負ければ良いのに」という試合はないし、目の前の大会を無視して次の監督に期待する理由などない。どれほど優秀な監督が就任しても、出場枠が縮小しては南アフリカへの門は狭まる。恵まれた時代は、そんなことを忘れさせる暖かさがある。だが、フィールドだけでなく、スタンドも、取り巻く人々も、政治も、駆け引きも、すべてをひっくるめてサッカーだ。

ドイツで、オーストラリア、クロアチア、ブラジルと闘うのはジーコではない。日本代表だ。ジーコが好きだろうが、久保と中沢がいなかろうが、日本代表は「僕たちの日本代表」。だから私は応援する。応援しない理由は、どこにあるのか。
ジョホールバルからの放送で、山本浩アナウンサーは、こう言った。
「彼らは、彼らではありません。彼らは私たちそのものです。」

「入った、入った。同点、同点。
 同点になりました。アメリカへの道。
 重い扉、ついに引き分けという形で終わってしまいました。」
   (ドーハの悲劇:山本浩アナウンサーの実況)

出場する喜びを胸に、私はドイツで日本代表への声援をおくる。待ってろよクロアチア、ブラジル。


ついで書かせていただくと、女子ワールドカップ予選が7月から始まる。AFCの出場枠は2.5。中国、ベトナム、台湾と同組。中国も台湾も強敵だ。さらに別の組には北朝鮮もオーストラリアもいる。開催地はオーストラリア(女子アジアカップを兼ねた集中開催)。女子は、すでにオーストラリアを加えた厳しい闘いの時代に入っている。



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