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マリーシア・フットボールコラム

「緩急をつける」 寺山功

日本のサッカーは一本調子で、緩急をつけられないと言われている。しかしサッカーをプレーした人なら、それが口でいうほど簡単ではないと分かるだろう。誰か1人だけではなく、ピッチにいる11人全員が試合の流れを読み、主体的に緩急を作り出していく必要があるからだ。それは常日頃から意識していなければ、実現できることではない。毎日の練習、普段のリーグ戦でそういう試合運びが普通になって、初めてW杯のような大舞台で実行可能になるのだ。

ここで「緩急」というキーワードを、私たちの普段の生活に置き換えてみたい。1日の生活、または仕事の中で我々は緩急をつけているだろうか。また少なくともそういったことを意識しているだろうか。多くの人は一本調子で仕事をしているのではないだろうか。常に全力でといえば聞こえはいいが、そのために肝心要のところで力を発揮できないといった経験があるのではないか。そう、例えばクロアチア戦の柳沢のように。私には対岸の火事と思えないのだ。1日ではなく、1年という期間で考えてもいい。いまちょうど会社にスペインからゲストが来ているのだが、彼は1ヶ月のバカンスを取るという。ちなみに私は1週間だ。日本も子どもたちは1ヶ月半の夏休みがあるよと言ったら、スペインの学校は3ヶ月だ、と返された。1年12ヶ月のうち、1ヶ月のオフ。これってまさに緩急じゃないか。日本人である我々はいつでも仕事をしているし、オフがあっても世話しなく予定を入れて時間に追われることが多い。欧州の人たちは普段の生活からして、オンとオフの切り分けを上手にやって緩急をつけているのだ。考えてみると仕事するときの彼らの集中力はかなり高いと思われる。

また日本サッカー協会名誉会長の岡野俊一郎さんは、日本の弱点はピッチ上で選手が意見を交わさないことにあると言っていた。そしてそのコミュニケーションの欠如は学校教育が原因だと話をされていた。ただ教育問題になると、緩急とはまた少し違う話になるので詳しいことはまた別の機会にしたい。つまり何がいいたいかというと、サッカーではそういった国民性や普段の生活習慣がピッチ上に見事に反映される。それは良くも悪くも、である。

日本代表のW杯での惨敗は、我々1人1人が毎日をどう過ごすのか?という問いを投げているように感じる。国民の多くが緩急のある生活を楽しめるようになった時、代表チームはそれをW杯で表現できるのだ。



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