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マリーシア・フットボールコラム

チームスローガン「Scramble Attack(緊急発進攻撃) 石井和裕

プライマリーが連続優勝しただけで、ことしも、ほぼ無冠で一年を終える。ところが、仲間との忘年会で「今年の良かったこと」を挙げてみると、ひと様々で20個以上の「今年の良かったこと」が再発見された。上手く行かないときは、人は、とかく難しく考えがちだが、スタジアムには良かったことはたくさん転がっている。そう、フットボールは、本来、もっともっと単純なもので良いはずだ。

「Scramble Attack」
それが来シーズンのスローガンとして発表された。単純に多くの人がイメージするのは「クラブは緊急事態に陥っている」ということだ。勤務している会社の社長が、社員に「緊急事態なんだから」と言うのは、まぁダメではないとしても、勝手に取引先に「緊急事態なんです」と言い回っているとしたら、その会社の社員はどう思うだろうか。

今回の記者会見では「Scramble Attack」というスローガンに従って、単純にメディアは報じた。だって、「緊急発進」というスローガンをプレスリリースであらかじめ知って記者会見場に行くとなれば、そこで記者に課せられる使命の最低限は「緊急発進をイメージする写真の撮影」となる。だから、翌日、スポーツ新聞各紙は、渋い顔の早野新監督の写真を掲載したわけだ。では、スローガンが「団結」や「結束」などをキーワードにしていたら翌日のスポーツ新聞各紙はどうなっていたか。それは、早野新監督と水沼元監督の握手の写真だ。
「クラブは、そのような単純なこともわからなくなっているのか。」
そう思うと、がっかりした。
フットボールは楽しくなければ面白くない。単純にスタジアムが楽しければ魅力は増すし、クラブの価値は向上するはずだ。「緊急発進」に楽しさや期待は望めない。

今シーズンのドタバタを経て、サポーターの中には、あらたな挑戦をしようと考えている人がかなりいる。その手法は様々だ。ただ、条件としていえることは、私達のホームタウンは大きく、ホームスタジアムはバカでかいということ。サポーター仲間の、りんじさんがかねてから主張しているように、小さな箱のスタジアムと同じ密なコミュニケーションは取りにくいということだ。だから応援は、単純で、多くの人が面白く、共感できるものでなければならない。

先日、マリーシアの忘年会があった。その席で、小林さんが年間チケットについて,興味深い話を教えてくれた。彼はマンチェスターユナイテッドの本国のファンクラブに入会している。その手元に、もうすでに07−08シーズンの年間チケットのDMが届いたのだそうだ。シーズン開幕の半年前の時点で届いているのだ。これは、サポーターにとって何を意味するのか。答えは単純だ。
「今シーズンの結果も、来シーズンの布陣も決まっていない今、すでに来シーズンの年間チケットを買っているヤツは尊敬に値する。偉い。」
割引券がつくとか、早割があるとかではなくて、単純に、クラブを愛しているサポーターが、他のサポーターや街の人々から尊敬の眼差しで見つめられるのだ。なんて単純なことなんだ!!

私達のスタジアム、いやJリーグのスタジアムには、目に見えない難しい決まり事がたくさんある。それにつまずいて転んでしまうことが怖くなるほどだ(その一因はJリーグブームの頃のサポーター創成期に応援を形成していたった私達自身にもあるのだが)。新しいサポーターの仲間を増やしていくにあたって、その難しいルールを理解させていくことは困難だ。

私がサッカーの常識やサポーターのルールを考え直したのは、Jリーグ開幕当時で、私がスタンドの最前列で応援の指揮の一端を担っていた1994年だ。何度か紹介しているが、私が初めてローマで見たスタンドの光景は、あまりに衝撃的だった。
スピーカーから流される選手入場の大音量の音楽にあわせて、スタンドのサポーター達が大声で歌うチャント。そこから始まる試合内容は低調なものだったが、それだけに、サポーターの行動は興味深かった。ミスを続ける味方・ミハイロビッチへの罵声と怒号。しかし、素晴らしいクロスを入れた瞬間に沸き起こった割れんばかりの拍手。美ししすぎた相手チームのゴールでの沈黙。一瞬の間をおいて起きた、その相手ゴールヘの賞賛の拍手。そして、リスタートと同時に起きた味方へのブーイング。ドフリーの味方選手へパスをせずに難しい選択肢を選んでチャンスを潰した選手へのブーイング。得点にならなくても、良いチャレンジへは拍手。プレーへの評価が合わないサポーター同士の言い争いも軽く起きる。引分けに終わるとチケットに火をつけて帰るゴール裏の人々(これは真似しちゃいけない)。

(ゴール裏のコア部分は別として)スタンドの私達は、もっともっと自由でいよう。心の赴くままに喜びを爆発させ,哀しみにも深く沈もう。フットボールが弾き出す、単純なる感情の抑揚をスタジアムのルールにしよう。スタジアムが、他にはない特別な喜びと哀しみを、あたたかく包んでくれる場所ならば、私達の仲間はきっと増える。
●難しい歌を無理して覚えようとする必要はない。
●自分に理解できないブーイングを無理して理解しようとする必要はない。
●楽しくないことを無理して努力する必要はない。
○好きなクラブに声援をおくる。
○歌えなくても手拍子をすることはできる。
○好プレーをした選手が途中交代するならば感謝のキモチを示す。
○ダメなプレーにはダメだと意思表示する。
○好みのプレーには喜ぶ。
○一緒に応援した仲間と言葉を交わす。
ゴール裏コアゾーンのサポーター達は志が高い。ただ、その反面、その志に向かって努力することに限界を感じるとスタジアムから姿を消してしまうことも多い。それは、とてももったいないことだ。私達のスタジアムは、ただでさえ大きなスタジアムだ。そして屋根付き。ちょっとハードルを下げて、永く一緒に応援できる仲間を増やせば、私達は「日本で最も拍手が大きいスタジアム」を創り出すことも十分に可能だ。

レベルの高いサッカーを見たければ、スカパーで眺めれば良いし、ツアーで欧州へ行くことも難しいことではない。でも、言われるがままに日々を過ごすのではなく、与えられたものを消化するのではなく、喜びと哀しみを心の底から味わって次の喜びのために行動の選択肢を自分で選べる場所は、多くの人にとってはココしかないはずだ。

というか、満員のスタジアムで応援したいんですよ。






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