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マリーシア・フットボールコラム

あるサポーターの想い 石井和裕

ほかのチームの試合で恐縮だが、Jリーグチームではないのでご容赦願いたい。神戸にアイナック・レオネッサというサッカークラブがある。女子では日本唯一と言っていいプロチームだ。年々、着々と補強を進め、今年からは全選手とセミプロ契約を結ぶことになった。ブラジル女子代表で昨年の女子ワールドカップで得点したプレチャーニ(米国女子プロリーグの第一号ゴールも挙げた)、韓国女子代表のジナ、日本女子代表経験者の藤村智美、山岸靖代、鈴木智子、海堀あゆみ、そして現役のなでしこジャパンの原歩が所属している。

しかし創部2001年。なでしこリーグ一部に昇格したのは2006年。まだ若いクラブだ。選手個人の横断幕はわずかに2枚しかない。

そのアイナックが雨中の大激戦を演じた。その内容をここでは説明しない。ただ結果を言うと、退場で一人少なくなったアイナックが、リーグ戦では過去4年間に4敗しかしていない女王ベレーザに土壇場で追いつき3−3で引き分けた。そんな駒沢でのベレーザのホームゲームだった。

試合開始前にアイナックのTシャツを着た男性が一人で叫んでいた。
「アイナック!!アイナック!!アイナック!!」
正直言って、30代と思われる彼は、いわゆる「イケテナイ」感じ。しかも猫背の姿勢がイメージを悪くしてしまっている。冷たい曇天ということもあって、彼には冷やかな視線が送られていた。

しかし、アイナックの気持ちのこもったプレーもあって、男性のコールに合わせてコールする者や手拍子する者が現れ始める。アイナックに退場者が出た後はスタンドの半分くらいはアイナックの応援に。私の目の前でスタンド観戦をしていた、なでしこジャパンの豊田奈夕葉ほかベレーザの選手たちは居場所を失ったかのようにばつの悪い感じでスタンドを眺めていた(私と友人たちがベレーザ有利な判定に対して「そりゃねーだろー」と叫んだのもまずかった)。

現役なでしこジャパンを9人も擁するベレーザに対して挑んだアイナックの選手たち。そしてたった一人でコールを始めた男性。しかし、試合後にスタンドから称賛を受けたのはアイナックの選手たち。そして、スタンドは、いつの間にか、たった一人の男性に合わせてコールを送った。

サポートって単純なことだな、と思った。強い気持ちがあれば想いは通じる。たった一人でコールを始めた彼には語る言葉は不要だった。





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