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マリーシア・フットボールコラム

4年に一度、決断のとき 石井和裕

ワールドカップ南アフリカ大会の日本代表メンバーが発表になった。毎度のことだが、監督の選手選考に対して賛否両論が渦巻いている。特に多いのは「Jリーグで活躍しているフォワードをなぜ選ばない」という意見と「自分の好きな選手が選ばれないこと」の不満。残念だが、日本代表はチーム。だから、構成する選手を選ぶのは監督だ。

しかし、岡田監督らしいセレクトだ。そして、夢を抱いて無理な采配をしていた岡田監督も、どうやら現実的な戦術を選びそうだ。それほどまでに納得できるセレクト。私個人としては、ずっと岡田監督の采配には不満があり、それは今でも変わりない。選んでほしい選手も何名もいる。でも、選ばれた選手の顔ぶれを見ると、不満なセレクトはわずかに2名。23名中の2名だから、不満は10%未満。納得できるはずだ。

「サプライズ」といわれる川口の起用。今シーズン、出場機会がない選手がワールドカップへいくことに不満を抱くサポーターも多い。でも、心配無用。第三GK。フランス大会で言えば小島枠だ。まず、よっぽどのことがない限り、川口の出場はない。川口に与えられたミッションは、ベンチの外から選手を鼓舞し、選手の向かうべき方向を大先輩として伝えること。それだけだ。もし、楢崎と川島のどちらかが不調なれば、怪我を理由に川口を外して予備登録選手を帯同させれば良い。だから、試合感も心配する必要がない。思い出してみれば、岡田監督は代表の常連選手に「起用することはないが代表合宿に呼ぶ。それでも来るか?」と前置きした上で招集した、という記事を目にした記憶がある。おそらく川口は、そんな前置きが済んでいるのだろう。これは、確かにサプライズなセレクトだ。だが、考え抜いて、すでに準備万端で川口には、その意図が伝わっているように思える。前回大会ではチームをまとめようとした中田が孤立した。ポジションを争う選手との確執がチームをバラバラにした。だが、今回は心配無用だ。川口とポジションを争う選手はいないのだ。もう中田の悲劇が繰り返されることはない。

さらに不満が集まるのは玉田の起用。たしかにドイツ大会では一世一代のファインゴールを決めている。現地で目撃した私も、一生忘れられないゴールだろう。もう二度とあんなプレーをするわけがない。だから玉田の起用なんてナンセンスだ。そう本音では思っている。でも、今回のセレクトにも理由があるのではないか。考えてみればワールドカップでゴールをゲットしているJ1の日本人は2名しかない(豪州戦の中村のゴールは誤審扱い)。玉田はダメならば出場しなくても良い。ワールドカップでゴールすることの意味、ゴールするために取り組みについて、他の選手たちに語れば良い。それだけで良い。

最も批判を集めているのは矢野だろう。「今年、ノーゴール」「年間二桁ゴールの経験がない」「ヘディングが強いわけではない」「ペナルティエリア内で決定機を逃す」「競り合いに弱くてすぐに倒れる」などなど批判お理由は多々ある。だが、それは大きな誤解から生まれている。そもそも矢野はフォワードではない。サイドの選手なのだ。今年、新潟が序盤戦で苦戦したのは黒崎新監督が矢野を中央で使ったからだ。過去の記憶を紐解いても、矢野はゴール前に現れたり、自陣コーナー付近にまでドリブル突破を追いかけたり、無類の運動量を見せてきた。つまり、今回の矢野の起用は、百歩譲ってフォワードだとしても、それは「守備的フォワード」。日本には伝統的に優秀な「守備的フォワード」が出現している。その代表格は日韓大会の鈴木。彼もJリーグでのゴールは少なかった。さらには、アトランタ五輪の時は城がいた。矢野は、それ以上の守備的な選手。もし日本代表が先制したならば、矢野の途中投入で逃げ切りを図る、それが岡田監督のシナリオだろう。テレビ中継やスポーツ新聞の報道に惑わされてはいけない。矢野にゴールを求めてはならないのだ。

そんなこともあって、岡田監督のセレクトに大きな不満はない。強いて言えば、役割が不明な大久保と、怪我が癒えない中村が選ばれたこと。だが、きっと岡田監督なりのセレクト基準があるに違いない。

岡田監督の決断が23人のメンバーになった。4年前も同じだ。私はジーコ監督の代表チームが大嫌いだった。でも、メンバーが決まったことで割り切ることにした。どのようなメンバーであろうと、日本代表が日本サッカーを背負っている。

「彼らは、彼らではありません。彼らは私たちそのものです。」

ワールドカップで敗退しないチームは優勝チーム1チームのみ。日本代表が、日本人が何者であるかを表現し美しく散るために、何をすべきか、それはベスト4進出よりも難しい。今日がスタートだ。







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