   
Milano 2001
1年ぶりにサンシーロに足を踏み入れる。昨年は試合がなく、スタジアム見学と博物館見学だった。ことしはセリエA。今年初のサッカー観戦だ。カードはミラン-ボローニャ。奇しくも昨年の初観戦と同じカードとなった。ほんと奇しくもだね、日本人なんだから。このカードは因縁のカードだ。昨年の観戦したボローニャでの一戦はミラン2-0からボローニャが2-2に追いつき、ボローニャの逆転に見えたボールはビデオで見ると確かにゴールインに、その後、ファールに相当するプレーがあったのだが、レフリーはゴールインではなくファールのホイッスルを吹きゴールは幻となり、その後ミランが決勝点を奪って勝利した点の取り合いだった。
8:30開始の土曜日のナイトゲーム。スタジアムの外には昨年見学したときには当然なかったパニーニを売るクルマやマフラーを売る売店などがたくさん並んでいる。地下鉄駅から坂をバスで上り、チケット売場までは商店街のように、これらの店が並ぶ。その中から選んだ今日のマフラーは「7」の文字が入っている。10,000リラだから約600円。シェフチェンコの応援マフラーだ。ウクライナから来たミランの救世主は絶大な人気があり、売店では黄色と青のウクライナ国旗も売っていた。しかも、これを買っている人がけっこうたくさんいる。
さて、肝心のチケットを買わなければならない。チケット売場の前はダフ屋だらけだ。イタリア語はよく分からないが熱心に売りつけてくる。偽物を買わされてはたまらないので正規の売り場で買おうと思い、チケット窓口に行くが、そこまでついてくる。どうやら安く売ってくれるらしい。が、まぁ痛い目に遭いたくない私は、売場で買おうとするが売場のおじさんは、あんまり売るつもりがないようだ。ダフ屋はおじさんに
「俺の持ってる、このチケットは本物だろ?」
って聞いている様子だ。おじさんは何も答えないが
「かってもいいんじゃな〜い。」
て顔で私とダフ屋を見ている。これじゃ、売ってくれないんだからしかたないやってことでダフ屋の値段を聞くと、60,000リラ(約3,000円)。あらかじめ聞いていた定価の半額近くだ。しかも、ダフ屋はパウチされた席割りをもっていて、
「このあたりの席だ。イイ席だろ。」
とか説明までしてくれる。三階建ての巨大スタジアムの一階バックスタンドのど真ん中だ。見せてもらったチケットも本物のようだし、値切らずに買うことにする。しかし、定価で売ってくれないチケット売場に安値で売るダフ屋。この国のチケット販売システムはどうなっているのだろうか。
クルバ二階が最も盛り上がる
中にはいると、チャンピオンズリーグの合間の試合ということもあって入りは半分くらい(発表は44,000人)。といっても、ココの収容人数は80,000人をはるかに超える。チケットにも席割りが書いてあり、入るべきゲートの番号が書いてある。しかも、席案内のボランティアがたくさんいるから座席はすぐに分かった。もう初老のボランティアは
「やぁジャポネーゼか。よくきたね。」
って具合に明るく席まで案内してくれた。あまりに親切な対応だったので、たくさん持ってきていたホカロンを一つあげた。ミラノは寒い。だってアルプスの麓なのだから。座席はまさしくバックスタンドの真ん中だが、前から6列目で、前すぎてタッチラインが見えなかった。
試合は今年も乱戦。立ち上がりはボローニャが攻勢に出て、5分以上ミラン陣内で試合が続いた。ミランはパスミスも多く、これはまさにチャンピオンズリーグ疲れだ。苛立つ観客はブーイングを愛するチームに送り続けるのだが、な〜んと簡単にシェフチェンコが2点を取ってしまった。2点目は右を突破したバのマイナスボールのクロスを流し込んだごっつぁんゴール。それまで中盤でのパスミスを繰り返し、フリーでいても
「バにわたすなぁ!」
とか観客に散々野次られていたバが、タッチ際でディフェンスラインを突破するときは信じられないくらい速い。あっという間に相手を置き去りに抜けていくのだが、ここで痛恨のトラップミス。ゴール正面にボールを運んでいけるところが右に流れてしまった。が、これが幸いしてゴールキーパーのパリウカがおびき出されてゴールががら空きになったところにシェフチェンコが飛び込んできたのだ。それまで座ってみていたバックスタンドの観客も飛び跳ねて喜んで、最前列に突っ込んでくる奴もいる。バを罵倒していた人たちも
「イブラヒム・バ!!」
の大声援だ。でも
「どんなに押し込まれてても、シェフチェンコが一人いれば勝てるんじゃん。」
と思ったのもつかの間で、今度はボローニャの チプリアーニのゴール。すると、右となりの静かだったおっちゃんが大喜び。さらに、またまた チプリアーニのファインゴールで同点になると、おっちゃんは、またしても立ち上がって大喜び。
「おれは、ボローニャを応援しに来たんだ。」
と日本人の私に告白。上機嫌だ。
「どうだ、チプリアーニは凄いだろ。」
とか
「いまのは、足のこっちに当たったからボールが浮いてしまってクロスバーの上に行ってしまった。」
とか説明を始める。そのわりには、私が
「 チプリアーニは去年のアンデションよりもいいんじゃない?」
という必死の英語の話しかけに、
「悪いが、おれ、言葉わかんないんだ。」
っておっちゃん自己チューすぎる!!
シェフチェンコ倒される
さて、ボローニャの勢いは止まらなくて、とうとうシニョーリのゴールで逆転してしまった。上機嫌のおっちゃんとは逆に「気が気でない人たち」が最前列のフェンス際にたくさん集まってくる。もう、こうなると座ってみていられないらしい。フェンスから身を乗り出している。ミランは勝っている時点で元鹿島で人気者のレオナルド(ダ・ビンチと同じ名前だからたぶんイタリア系ブラジル人だ)を下げてしまったので、攻めの起点にスペインの五輪代表で活躍したホセ・マリ(イタリアではジョゼ・マリ)を投入。なんと、またミランがゴールして辛くも同点に追いついて、この乱れたゲームは終わった。
メッセージあり似顔絵ありのフラッグ
しかし、中盤のミスをさんざん野次られていたバだが、前線で突破の構えを見せるだけで大歓声を受けていた。どうやら、観客はマルチなプレーを要求していないらしく、「売り」を見せて楽しませてくれれば、それで満足なようだ。バも交代の時に大コールで送られていた。ゴール裏に掲げられた数々の横断幕に混じって「ドランカーズ・クラブ(酔っぱらいクラブ)」ってのがあったけど、あれは、何か意味があったのだろうか?サンシーロは、なんとも特徴のある人でいっぱいだった。

石井和裕

   
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