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プロ第一号とともに歩んだ日産自動車サッカー部 第二章 守って守って守り抜け 加茂監督は、「つぎはぎの優勝できるチームを作るよりも、完成した優勝し続けるチームを作る」というのが持論であり、翌年から始まる1987〜1988年のシーズンには木村の回復を待つとともに、加茂監督はいよいよチームを日本最強とするために外国人の補強を行う。 そして加茂監督が選んだ選手は、ブラジルのスーパースター中のスーパースター、「オスカール・ベルナルディ(登録名オスカー)」であった。当時の日本のリーグでは、ブラジルから代表クラスの選手が来ることなど考えられなかったのに、1978、1982、1986年と三回のワールドカップに出場し、キャプテンまでつとめた本当の本物が日産にやってきた。今のリーグしか知らない人にどのくらい凄いかっていうと、ジーコとリネカーにリトバルスキーのセンスを兼ね備えたブッフバルトみたいな選手なのだ!?。オスカーはディフェンダーの選手であったが、日本人選手にはないサッカーに対するひたむきさ、戦術を与え続けてくれた。 オスカーの生活習慣に関する提言は今のJリーガーも学ぶ点は多いであろう。「サッカー選手の1週間の生活は、日曜に試合をするとすれば、木曜からは禁酒、そして月曜は筋力の回復に当てる」などと非常に細かなことまで指摘した。 もう一つオスカーはその豊富な人脈で、次々と素晴らしい助っ人選手を日本に連れてきた。一人がロペス、17歳でブラジルのサンパウロのレギュラー選手となった若きホープである。 オスカーの加入でディフェンス陣は自信をつけたが、この年にタイトルを獲得することはできなかった。しかし、この年から「読売には負けない日産」の伝説がスタートする。場所は千葉県総合運動公園、後半の41分に柱谷幸一(現在柏レイソル)の同点ゴールで追いついた日産は、この試合後約6年間に渡って、無敗記録を更新していく。 松永もGKとして成長し、左ウイングの平川をサイドバックにコンバートし、オスカーとともに来日したロペスが柱谷とコンビを組み、左から金田の突破、水沼、木村がゲームを作る。この日産の黄金の布陣は翌年とてつもない大記録を生む原動力となった。 翌年の1988〜89年のシーズンには日本サッカーリーグは大きな変革があった。一つは日本リーグから「JSLリーグ」という名称で統一したこと。そしてリーグ戦での勝ち点制の改革である。勝てば2点から勝つと3点、引き分け1点、負け0点という形に変更された。これによりより一層勝利をめざしてリーグを活性化させるのが目的であった。この当時勝ちに3点を与えていたリーグはイングランドリーグ(現在のプレミアリーグ)ぐらいのものであった。 このシーズンから日産には筑波大学を卒業した長谷川健太(現在清水エスパルス)が入団し、木村は右サイドのウイング的な仕事から解放された。 オスカー、越田のセンターバックに両サイドバックに田中、杉山、中盤にはフジネイ、柱谷哲(金田)、木村、トップにはロペス(柱谷幸)、長谷川、水沼と今考えると吃驚するようなメンバーである。フジネイの脅威的な運動量は加茂監督のブロックディフェンスには不可欠な選手であった。 シーズンが開幕し、JSLカップが始まると日産は破竹の勢いで相手を倒し決勝に駒を進めた。木村和司はこのときに完全に全盛期の力を取り戻しており、決勝では東芝相手に先制のフリーキックをゴール中央に決め、残りの2点もお膳立てする大活躍!結果3−1で日産の圧勝となった。 私事ながら、この年自宅にビデオデッキが購入され、ついにサッカー場と家庭とで二回サッカーを楽しめるようになったのがこのシーズンである。 このシーズンからTVKの日産サッカーダイジェストが、不定期番組から定期番組(毎週日曜日9:20〜)放送されるようになった。JSLカップをとった日産はその後も快進撃を続ける。当時の日本リーグは天皇杯を挟んで前期と後期に便宜上分かれており、日産はこの前期のシーズンを11勝0敗4失点という脅威的な数字で折り返す。特に前期の最終戦である全日空戦では、後半ロスタイムに入ってからの攻防で、金田の左クロスを、ゴール前の角度のないところから木村のヘディングシュート(これも珍しい・・・)で決めるという圧倒的な強さであった。 リーグ前期の最優秀選手が木村であれば、この後行われた天皇杯の立役者は長谷川健太であった。天皇杯はリーグの上位2チーム(日産、フジタ)が順当に(しかし準決勝の全日空の前田のシュートはかわいそうだったよなぁ〜) 準決勝のヤマハ戦での右サイド突破からのシュート。そして決勝ではフジタとの決戦となり、前半木村のPKで先制するものの、前半終了直前にコーナキックから宮沢ミッシェルのボレーキックで同点に追いつく。そして後半15分過ぎ加茂監督はロペスに替えて、負傷がいえていない水沼を投入する。そして、延長戦にもつれ込んだ試合の前半、松本アナウンサーの「水沼、水沼、水沼〜・・」という絶叫のもと水沼は中央から抜け出しゴールを決めて勝ち越し、後半には長谷川のシュートを弾いたところに柱谷が飛び込んで3−1で天皇杯を奪取する。 再び、リーグが再回された初戦のヤマハ戦では大榎木(現在清水エスパルス)にゴールを奪われ連勝はとぎれてしまう(1−2)が、この敗戦までこの年の公式戦、実に22連勝という大記録を打ち立てた! リーグの後半は息切れしたフジタに変わって、ヤマハが猛追撃してきた。後半が始まった後日産は読売には勝利するが、これ以外は引き分けや敗戦が多く、前半の11連勝の貯金をかろうじて生かして首位を守っている状態であった(まるで今シーズンの優勝のようだよね!)。更にこれに追い討ちをかけるように越田現役引退・・・、しかし他チームの星のつぶしあいにも助けられ、この年日産は悲願のリーグ初優勝を飾る。4月26日場所は三ツ沢球技場(照明がボロで暗いんだ)、相手は本田技研、前半の日産ファンの夢を乗せた木村の右サイドのフリーキックを水沼が左からダイレクトで折り返し、ここに長谷川健太が飛び込んでダイレクトシュート! この後1時間後には、狂喜した日産ファンが岡沢病院の前のガードレールを破損した。(私の友達) そしてこの優勝により、日産は日本リーグ開設以来初の国内タイトル全制覇に成功した。今年から創設されたJSL最優秀選手には全試合に出場した柱谷哲二が選出されたが、このシーズンは日産の全選手が最高の出来のシーズンであったといえよう(金田さんは調子悪かったよね・・・) 木村は低迷する日本代表の切り札として、日本代表に復帰してほしいというサッカー世論は高まった。 日産の首脳陣は加茂監督が勇退し、現役を退いたオスカーが監督を引き継ぎ第2の黄金期へと突入していく。加茂監督は勇退する際に次の年のことを考えてから勇退するという素晴らしい監督だった。 加茂監督の考えではオスカーの指導によりディフェンス陣は安定してきたが、問題は得点力のアップであった。リーグ初優勝時には大量点で競り勝つというよりは、少ないチャンスを確実にものにして得点して勝つというスタイルが定着し、相手に先行されると苦しくなる展開を加茂監督は懸念し、翌シーズンでの得点の試算を行った。この結果「木村、水沼、金田で8点づつとったとしても、10点以上とれるストライカーが欲しい」との結論を得た。そして半ば決定的だったパラグアイの英雄ロメロの獲得を断念し、ブラジルから元代表のセンターフォーワード「レナト」を獲得する。 こうして、日産は再び新シーズンに望んだ。9月に開幕したJSLカップでは前年チャンピオンの日産は2回戦から登場する。相手は川崎製鉄、この試合レナトがいきなり2ゴール、続く全日空戦では1ゴール、準決勝、決勝も1ゴールをあげて大活躍!木村、水沼も順調な仕上がりでこの3人がほとんど全ての得点シーンを作りだし、決勝ではヤマハをレナトのゴールで振り切り優勝(1−0)日産は連続4個目のタイトルを手にする。そしてJSLの開幕、日産はJSLカップの決勝の相手ヤマハと対戦する。木村のPKで勝利し白星発進となった。10月に行われたコダックオールスター戦では日産から松永、木村、水沼、レナト、長谷川が参加し、3−3のスコアからPK合戦で日産の入っている「WESTチーム」が勝利する。PK合戦では私のサッカー戦術書の著者でもあった加藤久が本の通り蹴って失敗する(以降私は加藤久の授業を選択しないように早稲田の友人と後輩に触れ回るようになった)そして、この大会で木村はMVPを獲得し、100万円を手にした。 この年のJSLは日産にとって大変なシーズンになってしまった。読売クラブはハーフナーをヤマハから獲得していた。そして前半戦は以外といってはなんだが全日空が絶好調でトップを走る。日産も上位につけていたが、前年のような爆発的な破壊力は影を潜めていた。 しかしレナトは絶好調で、次々にゴールを重ね「前を向いてボールを持つと必ずゴールする」と絶賛された。そしてレナトの確実なポストプレーは中盤の選手たちにも大きなチャンスを与え、木村、水沼もゴールを重ねていく、しかしこの年はオスカーの穴とフジネイの穴が完全に埋まっておらず、失点も多かった(オスカーが後釜として期待していたサンドロ(19歳)がJSLカップで怪我をしたのも痛かった)。木村と水沼の的確な中盤からの崩しを、ある人は木村と水沼の天性のサッカーセンスとしているが、私はそうは思っていない。残念ながら木村や水沼はマラドーナやプラティニではないのである。そうここまで読めば賢明な方はわかるであろう。レナトのポストプレイと、境田を含めたバックス陣の確実なパスカットなのである(と私は思う)。 最近のマリノスのサッカーを見ているとこのことについて更なる自信を深めてしまうのは私だけでしょうか・・・。
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