   
Roma 2001
トンマージがレフリーと嫌みのような握手をした後退場し、しばらくした後、画面に映された中田の腕にキャプテンマークがあった。
「こりゃ、どんな結果になっても、日本のスポーツ新聞の見出しは『中田主将』だな。」
大荒れのゲームはさらに乱れ、バックラインからの不正確な蹴り合いになり、その後ローマの攻撃が美しい組立を見せることは一度もなかった。
昨年のUEFA CUPでもローマの選手を2名退場に追い込んでいるスペイン人レフリーのガルシア・アランダさんは、平穏とは言えない長くて強いホイッスルを吹くのにわずかに遅れて、右手で確かにペナルティーマークを指さした。なぜ、そんなことが言えるかというと、試合中、試合後、そして2日後のニュースでまでそのシーンがテレビで何度も繰り返し放映されたからだ。番組によっては、その手の動きをスロー再生でまで見せた、繰り返し。プレー以外を、こんなにスローで繰り返し見せられたのはスペインリーグでクライファートが相手DFを殴るシーンを延々繰り返して見せたスペインの局の中継以来だ。だが、イタリアの各局は、これを番組中で何度も何度も見せるのだ。たぶん、私は、あの動きの真似ができる。
50,000人収容のコロッセオ
このゲームはリバプールで行われたためほとんどのローマファンはテレビでこの試合を見て、試合後のサッカー番組で何度もビデオを見て、翌日には新聞で詳しく読むことになった。ほとんどの新聞が、このレフリーの顔写真を大きく扱い、なかには「これがリプレーだ!」というタイトルで、連続写真を掲載してペナルティーマークを指すところをご丁寧に見せているものもあった。
さて、翌日、私はローマからポンペイに日帰りで出かけるのだが、ローマファンのガイドとユベントスファンの運転手は、行きも帰りも、ず〜っとこの試合の話をしていた。内容は詳しくは分からないが、この試合だけで往復6時間のうちの大半がもってしまったわけで、それだけ、いろいろな切り口でゲームを観察していたことがうかがえる。ガイドに新聞のレフリー評を訳してもらうと
「彼はペナルティーキックを指示したが、一人だけバティステュータがそれに気がつかずコーナーキックを蹴りに行ったのを見て判定を翻した・・・。」のだそうだ。事実かどうかは分からない。運転手は高速道路を運転しているというのに、いつの間にか太マジックで「グラッチェ・リバプール(ありがとうリバプール)」と書いて私に見せた。さっきまでは、
「中田はよくやっていた。採点が悪いのは、この記者がトッティーファンだからだよ。」
なんて言っていたのに。
さて、ゲームがある日の夜は各局ともサッカー番組ばかりだ。「ビデオ再生」というコーナーがある番組がある。この番組は、先ほどのような判定やオフサイド臭いポジション、PKの時のキーパーの動きだし、ファールかダイビングか、など、試合中の様々な微妙なシーンを何度も再生して、何名かの評論家がそれぞれの解釈でコメントする。時に議論は白熱することもあるが、司会者は、どうやら結論は出さないようである。飽きるくらいに何度も再生するので「しつこい!」とも思ってしまうのだが、これほど何度も繰り返し見て、それをそれぞれの解釈で解説するのを見れば、サポーターも、本当の良質のプレーを自然に知ることができるのではないかと思った。
新ローマの王様バティの靴を磨くラツィオのクレスポのTシャツ
さて、ローマから成田へ帰る飛行機の中で読んだスポーツニッポンの裏一面は予想通り「監督絶賛中田主将」だった。ちなみに、イタリア各局のニュースやサッカー番組の大半は試合のダイジェストの最後に、トッティーの名前の入ったマフラーを悲しげに頭上に掲げる女性の映像を紹介していた。
石井和裕

   
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