malicia witness 2階の目線2007
Jリーグヤマザキナビスコカップ 07-08シーズン Bグループ

3月25日 清水エスパルス  日本平スタジアム

朝、最寄り駅から東海道線に乗り、清水を目指す。車中にはトリコロールの装いがちらほらと見受けられる。しかし、そこに華やいだ笑顔はない。なにがしかの決意を胸に秘め、口を一文字に結んだ顔が並んでいる。こんな時でも、いや、こんな時だからこそ、選手たちとともに戦うために、清水まで駆けつけるのだ。その、決意。

北陸で起きた地震とどんよりした空模様に気をもみながら、清水駅で仲間たちと落ち合い、河岸の市で気勢を上げる。試合を抜きにしても、清水に行った際にはぜひ訪れたいスポット。その中でも評判高い「みやもと」でランチを食す。厚切りのマグロに舌鼓を打ちながら、ついつい顔もほころぶ。

「ここで満ち足りちゃってる感じもしますよね〜。」
「ダメですよ〜試合に勝って満足しなきゃ。」
「みやもと、って名前でどうかと思ったけどなあ。」
「良いみやもともいるんですよ、きっと。」

バスで清水の町を抜けて日本平へ。ちょうど開門時間。

アウェー応援席の2階ゴール裏に上がると、雨はないもののすさまじい風に身を切られる。トリパラ広げたら吹き飛ばされそうな勢い。席を確保し、試合開始を待つ。スタメンを聞くと、坂田と大島の2トップに、吉田・幸宏が今季初スタメン。両サイドバックには隼磨と裕介の両田中が入った。「鍵となるベテラン」といわれていた上野・松田はベンチ入りすらせず。開幕から5試合目にもなるのに、固定できないメンバー構成にチームの混迷が感じられる。
「いよいよ諦めたか!?3トップ」
「やっと本職のサイドバック使ってくれるよ」
「でもこれで中澤戻ってきたら、また那須が左になったり…」
「うーん」

すでに何試合かでベンチ入りしていた吉田はともかく、起用実績が皆無の幸宏の起用には驚かされた。
「どうなんだろうね、幸宏」
「デレオもろくにデータは持ってないだろうけど」

開始までまだ時間があるので、スタジアムを散策する。入場口は隔離されているが、いったん入ってしまえばホームとアウェーを分ける柵などはほとんどなく、日本平は実に和やかな空気が満ちているスタジアムだ。デレオのグッズの横で横浜のグッズを売っていたりと、どこか毒気を抜かれる。そしてパルちゃんショー。細かいネタのオンパレードにまたも毒気を抜かれる。「ウチのカモメさん2羽にも見習って欲しいよね」などと、軽口も出てきてしまう。

選手紹介。不安と期待が入り混じる中、「オーレ!」の掛け声が上がる。しかし、監督の紹介の際には沈黙が入り混じる。向かいのデレオのゴール裏は失笑していたらしい。

そして選手入場。ほとんどのサポーターが選手を立って迎え、そして手を叩き、歌う。絶対に勝って欲しい。俺たちはここにいる。最後まで戦おう、トリコロール。

キックオフ直後から試合が動く。フィードで大島にボールを渡すと、左サイドをフリーで駆け上がる幸宏に展開。そこから低いグラウンダーの折り返しに功治が詰める。惜しくもボールに触れずゴールを逃すが、いきなり可能性を感じさせる攻撃。

序盤は完全にトリコロールのペース。フォーメーションとしては4−1−3−2か。河合をアンカーに残し、吉田と功治と幸宏で攻めを担う。右は吉田と隼磨が、左は幸宏と裕介が連動し、功治が中でアクセントになり、ボールの支配が続く。時折吉田と幸宏がポジションを入れ替え、相手のマークのずれが生まれる。大島と坂田のコンビネーションも悪くなく、相手陣でプレーする時間が多くなる。先制点への期待は嫌が上でも高まる。

しかし、坂田も大島もシュートへの意識が低い。無理でも打てば良さそうなところを功治に預け、結果功治が3、4人に囲まれてボールを奪われるというシーンが3度ほどあった。また、ボールを支配している時間が増えていたため前がかりになり、逆にカウンターを受ける場面も出てきた。フェルナンジーニョに対しては河合ががっちり鍵をかけていたため事なきを得ていたが、攻めてはいるものの安心できない時間が過ぎる。

やはり小さなミスが明暗を分ける。

トリコロールの攻めをしのいだ清水が自陣右サイドでボールを繋ぐ。幸宏のフォアチェックが遅れ、左サイドに張り出した高木純平に大きなサイドチェンジが渡る。そこには隼磨がいたものの、一瞬のマークのずれから突破を許して哲也と1対1。このシュートは懸命にはじき出したものの、そこに走り込んだ杉山を誰も抑えきれずに詰められ、先制を許す。

1点取られると悪いトリコロールが頭をもたげる。パスは足元に終始し、大きな展開がまるで見られなくなる。運動量もガクッと落ち、突破を仕掛けるのは功治と裕介くらい。相手の攻撃をしのいではいるものの、得点の匂いがまるで感じられないままに時間だけが過ぎ、前半が終了。ブーイングも拍手もまばらなスタンド。

「途中から完全にダメになっちゃったね…」
「攻めてもいたんだけどなあ」

複雑な気分の中後半開始。

しかし、ハーフタイムに闘志を再注入したのか気迫あるプレーがまた見られだす。坂田も大島も相手のボールを全力で追い、中盤の選手のチェックも激しくなっていく。ファウルを取られる場面も増えるが、ボールに喰らいつこうという意思が明確に見られる。

泥臭く。

敵陣でコーナーキックを得て、キッカーは幸宏。大島の頭を狙ったボールは一旦はじかれるものの、再び幸宏が中央に折り返し、こぼれたボールに右足を振りぬく。ネットを破らんばかりのゴールが決まり、同点!フィールドプレーヤー全員が駆け寄りゴールを祝う。スタンドも飢えていた一点に酔いしれている。

喜びは続く。

前半から裏を狙って走っていた坂田。同点になったことで清水のディフェンスラインが上がり、スペースが生まれる。そこを見逃さず大島から坂田へボールが入る。西部が飛び出してきたところを交わし、左足で無人のゴールに流しこむ。同点ゴールから3分と経たない逆転劇に、スタンドの興奮は最高潮に。

その後も坂田は執拗に相手ボールを追い、大島も謎のトラップでボールをキープしポストプレー。得点こそ奪えないものの、トリコロールの攻勢が続く。オフサイドながらもネットを揺らすシーンなど、追加点への期待が高まる。

流れを変えられるか、否か。

劣勢を見て取った清水の長谷川監督は、スピード突破が持ち味の矢島と、昨日代表戦に出場しながらもベンチ入りしていた藤本を投入。前半から走っていた幸宏や坂田のチェックが追いつかなくなり、隼磨も矢島・藤本を抑えきれずファウルでピンチを招くシーンが続く。特に幸宏は完全に足が止まり、イエローでやっと相手を止めるシーンもあった。しかし、横浜のベンチに動きは見られず。

あまりにももったいない失点。

試合も残り10分を切る。清水が攻め込み、横浜がなんとかしのぐ展開が続く。横浜ゴール前の攻防、もつれながらラインを割ったボールにコーナーの判定。これに横浜の選手が抗議するが、判定が変わるはずもなく。右コーナーからのキッカーは藤本。なんとかしのいでくれ、というスタンドの思いもむなしく、左サイドを駆け上がってきていた市川にフリーでドンピシャノヘディングを決められ、同点。声を失うスタンド。しかし、「アモーレ トリコロール」の歌がまた響き始める。

終盤は清水の攻勢。試合序盤から走っていた坂田・功治・幸宏は完全に足が止まり、相手のパスの出しどころを抑えられなくなっていた。しかし切った交代のカードは坂田からジローへの1枚のみ。終了間際、またも藤本のコーナーキック。これを栗原と幸宏が交錯しながらクリアー。そして同時にタイムアップ。その際に頭を打った幸宏が倒れこんだ。功治もピッチに仰向けになる。今日の選手たちは戦っていた。スタンドからは拍手が送られ、ブーイングはほとんど聞かれなかった。

選手は走った。一時は逆転もした。それでも勝ちきれないあたりが、今のチーム力なのだろうか。

帰宅後確認したところ、2点目の失点シーンで市川を見ていたのは幸宏だった。完全に捕まえきれずフリーで打たれてしまっていた。しかしその前にも遅れてファウルするシーンがあったことを思うと、このシーン1つで責めるのは酷というものだろう。疲れていたのはわかっていたのだから、ベンチが打つ手はあったはずだ。

今日のデレオは決して良くはなかった。出場停止や世代別代表でかなりメンバーは限られていた上に、チョ・ジェジンも不在だった。そんなデレオにすら勝てなかった…とも言えるだろう
しかし、振り返って思う。水曜日の大宮戦、トリコロールはそもそもサッカーができていなかった。90分間相手の良いようにボールを回され、チャンスもほとんど作れず、走れていたのは功治と裕介くらいだった。

それに比べれば、今日トリコロールは曲がりなりにもサッカーを見せてくれた。試合後の割り切れない思いは、勝てた試合を勝ちきれなかったことに対してのものであり、それは、大宮戦で感じた思いとはまったく別のものだった。

厳しい戦いはまだこれからも続くだろう。それでも、この形をベースにできれば、まだ戦える。そう思わせてくれただけでも収穫だったと思う。


今日のポイント

キャプテンマークは功治
●幸宏は普通に使える目処が立ったと思う。存在感あるプレー振り。
●フォワードの得点
●90分やむことのなかった歌と手拍子
●「闘魂シーチキン」
●今のままでは松田の使いどころがない

                              <白火>






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