| malicia witness 2階の目線2007 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| J1リーグ 07-08シーズン 4月22日 大分トリニータ 日産スタジアム 聞こえてくる音。強い風に乗せて、力強く響く。メインスタンド外の当日券売り場には、もう、選手入場だというのに50メートル近い列ができる。昨日の試合を終えて暫定順位は降格圏に落ちた。この一戦は、とてつもなく大切だ。急遽、スタジアムへ駆けつけたトリコロールの仲間たちが多いのは、この試合の重要性を共有しているからに他ならない。 熱心なサポーターならば、このような経験はないかもしれない。今日の、この瞬間は貴重な体験だった。ちょうど試合が始まるタイミングでゲートから観客席に入る。その瞬間の気分の高揚。目の前に飛び込んでくる巨大スタジアムの客席の景色と、一斉に打ち鳴らされる手拍子。降格圏が視界に入り、応援の熱が増したのか、それは、いつもよりも、ずっとずっと大きなものに感じられた。このスタジアムこそがホームだ。 いきなりワンツーが決まり小宮山がディフェンダーを巻いてクロスを入れる。注目のプロ初先発は上々の滑り出し。吉田もミドルレンジからのシュートを連発。積極的な攻撃姿勢を見せる。この様子ならば、気持ちのよいサッカーが見られそうだ。 フリーの坂田がヘッドでシュートをファーサイドに。 「やった!」 「入った!!!」 ゴールライン寸前でクリアされる。飛び跳ねた携帯電話は地面に墜落し、蓋が飛び電池が外れminiSDカードが行方不明になる。 「惜しい!!」 「おい、なんかガシャンって音がしたぞ。」 突然放った山瀬弟のシュートでネットが揺れる。驚きの間を空けて、スタンドが揺れる。 「凄い!!!」 思いがけない鮮やかな先制点でテンションがぐっと上がる。いや、元々かなり高かったテンションが一段と上がる。 主導権を握れる要因は前線からの守備。大島、坂田、吉田らが本気で奪いにいく。プレッシャーに正確性を欠いた大分のパスをカットする。楔のボールにも的確なプレッシャーで、簡単には前を向かせない。高い位置でボールを奪えばゴールまでは手数をかけずにまっしぐら。大島もディフェンダーを背負う体勢だけでなく半身の体勢やウエーブの動きで前を向いてボールを受けることが多い。だからボールが停滞しない。ボールを奪えば、それを追い越してスペースに走り込んでいく選手が必ずいる。 これが「攻撃サッカー」。 前線に人数を置いたシステムを取り入れることを「攻撃的」と考える人がいる。しかし、「攻撃サッカー」は攻撃に繋がる積極的な守備から始まる。今、目の前に繰り広げられている激しく積極的な守備からゴール前に人数をかけてゴールを奪いにいく、このサッカーこそが「真の攻撃サッカー」だ。 互角なのは1−0の30分ほど。 残り5分。追いかけた大島がパスをカットし素早くワンタッチで坂田へ。ここが早い。坂田のシュートを止めようとする深谷はエビぞりのまま横に飛び、ボールと交差しながらゴールの中に飛び込んでいく。スタンドはボールが坂田に渡った時点で総立ち。シュートの方向を見つめながら一斉に宙に浮く。 「よーし!!」 「決まった!!」 「やった!」 またしても美しい弾道のゴール。その美しさは、深谷のエビぞりが更なるアクセントになって感動を大きくする。 ここからは一方的な展開に。守備が攻撃を創り出す。もう誰にも止められない。 後半開始直後の次から次への大分ボールへ襲いかかるトリコロール。機先は制した。ここから大分の中盤はバックパスを連発する。いままでできなかった迫力あるパフォーマンス。はったりでも良い。まずは試合の主導権を奪うためのアグレッシブなアクションが、このチームには必要だったのだ。それが、ついに実践された。 このスタジアムが素晴らしいのは、そんな守備の成果にスタンドが即座に反応することだ。大分の中盤が後ろにパスをするたびに、トリコロールの守備を褒め讃えて拍手が起きる。私たちは、この「攻撃サッカー」を待っていたのだ。それを素直に表現する。 ハーフウェーライン付近でボールを奪いゴール前に殺到する。西川が気の毒なくらいに大分のディフェンスは切裂かれ、ノープレッシャーで吉田がクロスを入れ、大外の坂田がワントラップして狙いすましたシュート。このときペナルティエリアにはトリコロールの選手は5名もいた。実に素晴らしい。 西川にプレッシャーをかけてボールを奪う。大島の絶妙のポストプレーを経て河合に渡されたボールを・・・なんと表現したら良いのか分からない。試合の数日後にこのシーンをビデオで見たとき、ドリブルで河合が大分ディフェンダーをストイコビッチ張りに崩し始めた瞬間から笑いが止まらなくなってしまった。まさか武骨な河合が妖精になるとは予想もできなかった。 「おいおいおいおいおいおい!うわぁー。」 「河合かよぉ!!」 ここからはバックパスどころかラフプレーで大分が対抗する。 坂田と大島が交代する。大きな拍手が起きる。一斉に声を揃えたコールよりも、一人一人がプレーを賞賛する拍手は、その評価を強く伝える。2階席のバックスタンドは、拍手をしながら次々に立ち上がる。すばらしいプレーへのスタンディングオベーションだ。 「坂田、よくやったぞ!!」 「素晴らしいプレーだったぞ!!」 「なんか、ゆっくり交代するうちの選手って久しぶりじゃないか?」 「そりゃ勝ってないからですよ。」 「そっか。」 斉藤とマイクが持ち味(マイクの場合は良い持ち味も悪い持ち味も)見せて有意義な時間を過ごす。もう1人、素晴らしい働きだった吉田も交代で天野が登場。三ツ沢でみるよりも、かなり小さく見える。マイクは深谷に後ろから狙い撃ちされる。かなり大分ディフェンス陣はイライラしている様子だ。 その深谷から山瀬弟がボールをかっさらい中央の兄にパス。どうみてもトラップミスのはずだが、踏み込んで左脚でズドンと踏み込んで弾丸シュート。 「よっしー!」 「うぉー!」 力強いボールは西川の手を弾き、スタンドに傘を花開かせる。 深谷にカードが出される。ロスタイムのことだ。 「お前、1枚目だったのかよ。」 「退場だと思ってたよ。」 「もう3枚くらいもらっててもおかしくなかったよ。」 バックチャージとレイトタックルに甘い扇谷さんの判定に対してもトリコロールは冷静に対処しゲームを進めて来た。この90分から得たものはとてつもなく大きい。 ホイッスルが鳴り試合が終わる。大歓声が沸き起こり歓喜に笑顔が弾ける。 今日のダイジェストをビデオで見る。 ボールがゴールネットを揺らすたびに歓声を上げる。そして映し出される早野の顔。 「なんで、そんなしかめっ面してるんだよ。」 「ちっとは喜べよ。」 「ホントは、心の中ではひゃ〜ほ〜って喜んでるくせに、わざとらしいんだよ。」 5つのゴールをいくつかのアングルで振り返り、しかめっ面の早野の顔を眺めてビデオは終わる。あまりにいつもより長いビデオを終えると、フィールドには芝生を整備する車輛が、すでに3台も出現していた。この日、あの50メートル近く続いた列で当日券を購入して入場したトリコロールの支持者たちは好運だ。いや、彼らも含め、皆で勝利を願って掴んだ5点差勝利だった。 新横浜駅へ向かう路上で電話が鳴る。 「今日、試合どうでした?」 「5−0だよ。」 「えっ?5−0。」 「そう5−0。」 「それってウチ?」 目の前で目撃しなければ、信じがたいこともある。 今日のポイント ● 大分だけど高松から市原。 ● 兄に頭をはたかれた弟。目立たなかった松橋弟。 ● 流れに乗ってポジションを動かしていた小宮山。 ● やっと持ち味が出たドリブルシュートのマイク。 今日の査定
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