| malicia witness 2階の目線2007 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| J1リーグ 07-08シーズン 5月3日 川崎フロンターレ 日産スタジアム 疲れの見えてきたトリコロール。あまりにハードな前線からの守備。そして、奪ってから即座にゴール前にボールを運ぶダイレクトプレー。トリコロールの攻撃サッカーは、相手チームとのギリギリの勝負であり、自分との闘いでもある。その柱は、言うまでもなく大島。今や、替えの効かない大黒柱だ。動きが落ちてきたとはいえ、実力十分のフロンターレに対して1点差のリードで大島を交代するのは、守備の面でもリスクが高すぎる。清水や鈴木といった日本屈指のディフェンシブフォワードを欠く布陣では、それは仕方のないことだ。そして相棒の坂田は、ギリギリの決断で斉藤との交代。その斉藤が長い長い拍手で賞賛を浴びる。 ディフェンスラインからボールを前に運ぼうとするフロンターレに猛然とダッシュしてプレッシャーをかける斉藤。パスが渡されれば、そのままの勢いで、その選手にまで走り込む。疲れの見えてきたトリコロールは、最後の危険な時間帯を迎える前に、この献身的な守備で魂の高まりを取り返す。 そのとき、2階席は万雷の拍手をフィールドに降らせる。そして、それは、次のプレーが始まり、しばらく経つまで鳴り止まない。この守備が「ビッグプレー」であることを、誰もが評価し、フィールドの選手に拍手で伝える。 「最後まで気を抜かずに頑張り通してくれ。」 そのスタンドの私たちの想いの強さは、誰もがフィールドにメッセージとして伝えたかったのか、どうしても隣の誰かよりも早く拍手をやめることができない雰囲気になっていた。とにかく、この1点差を守り通して3連勝の歓喜を分かち合いたかった。 このスタジアムは、日本で最も守備を評価する、格調高いスタジアムになりつつある。 私にとっては初めてのことだ、試合途中に守備で涙をこぼしたのは。前線で、中盤で、坂田が、大島が、吉田が、山瀬兄弟が、さらには河合や中沢が、フロンターレのボールに圧力をかけて、次から次へと追い回す。ボールを奪えなくとも、フロンターレの選手たちが横や後ろにパスをする瞬間に歓声が上がる。パスが動いている間に「行け!!」「そうだ!!!」とかけ声がかかり、パスを受けた瞬間に、次のトリコロールの選手が脚を伸ばして、また歓声が上がる。その繰り返しを、大きな声を発しながら見ているうちに涙がこぼれてきてしまったのだ。 このスタジアムに駆けつけたサポーターたちは「攻撃サッカー」の意味を知っている。フィールドで躍動する選手たちと同じ考えで、この前線からのチェイシングに心を躍らせて、その直後に現れる、ペナルティエリア内に4名以上が飛び込んでいくゴール前のシーンを想像してワクワクしている。フィールドとスタンドが、まったく想いを一つにして、敵のゴールに向かって飛びかかってくような、まさにホームスタジアムが実現している。そんな理想的な空間に身を置くことができている感動に涙してしまったのだ。 中沢は、ついに持ち味を発揮し始めた。 今シーズンの中沢は、松田のポジションを奪って、守備を統率してきた。しかし、ついに待ちに待った時代がやってきた。中沢は、数年前に見せていたプレーを、今、目の前でプレーしている。縦に入ろうとする敵の選手の勢いがつく前に、高い位置でチェックして前を向かせず、圧力をかけて押し戻して行く前からの守備だ。この持ち味が帰ってきた。 「よし!いいぞ!!」 「前を向かせるな!!」 「押し出せ!押し出せ!!」 フロンターレは有効な楔のパスが入れられない。つまり、何が起きたかというと、中沢は中沢のポジションに戻ってきたのだ。いや、回りくどい言い方を排していえば、ついに、栗原が松田の役割を取って代わることができたのだ。この日は、次の5年間のための記念日になったかもしれない。 そして、感動的なのは小宮山だ。 ヒーローインタビューは大島だったが、貢献度でいえば、小宮山も負けてはいない。もはや「ドゥトラの穴」などと言う者はいないだろう。ドゥトラの時代の後には小宮山と田中裕介の時代が到来した。特に小宮山は試合の流れを読むことが上手い。右サイドで細かなパスを繋いでいる間に、広がった左前方のスペースに、するするするっと小宮山が上がっていく。 「サイドを変えろ!!」 「小宮山だ!!」 そう叫ぶ瞬間には、右サイドの選手たちは、もう、それを察している。ロングボールが小宮山に渡り、フロンターレディフェンスが慌てて守備陣形を作り直す。このサイドチェンジはとても効果的だ。 そして、また、素晴らしいのはハーフタイムだ。 ハーフタイムに、突然、仲間が叫ぶ。 「たいへんです、鹿が倒れています!!!」 「え?何?」 「おっ、鹿島メルダ!!!」 見れば、大画面には日産CUBEのCMが上映されている。倒れている鹿。それだけでも嬉しい映像だが、その鹿はCUBEに乗り込むと、後部座席で悠々と過ごしている。倒れていたのは演技だった!!! 「鹿島メルダ!!!」 そして、前半のハイライトを上映。大島のヘディングがゴールに吸い込まれて行くと歓声と拍手。別の角度から、もう一度。また歓声と拍手。 しかも 「おっ、早野がガッツポーズをしたぞ!」 「小さいけど、やっと喜んだな。」 「そう来なくっちゃ。ストラカンみたいに喜ばないと。」 「何回も見せろよ。」 「もっとやれば良いんだよ。」 「何回でもゴールを見せ続けろ。」 「まだまだ時間はあるぞ。」 すると、ハイライトは再び2回、大島のゴールをフロンターレサポーターの前に上映した。今度は早野監督の小さなガッツポーズに、みんなで小さくアクションを合わせた。 素晴らしい。全てにおいて素晴らしい。大分戦の5ゴールよりも、密度の高い1点差勝利。優勝を狙うフロンターレを倒しての3連勝は大きい。 「いやぁ、良い試合だった。」 「あの守備は凄いなぁ。」 弾む会話は途切れることなく、新横浜駅まで歩を進める。 ホームに入ると、もう、線路にこぼれ落ちるほどの大混雑だ。横浜アリーナでは関ジャニ∞の関東初進出コンサートが行われていたようだ。 「こりゃぁ、凄い混みだな。」 「でも、今日は無理して乗らずに、一本待っても良いですよ。」 「余裕だね。」 「大人ですから。」 快勝ならば、みんな調子がいい。次は国際試合だ。期待が膨らむ。 今日のポイント ● シュートを入れるべきだった坂田と吉田。 ●見事だったアジア大会決勝戦の主審・高山さん。 ●なんだったんだろう中沢の相談。 ● 兄に頭をはたかれた弟。目立たなかった松橋弟。 ● ぬるぬるドリブルが名物になりつつある山瀬弟。 ● オシムも納得の運動量。 今日の査定
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