| malicia witness 2階の目線2007 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| J1リーグ 07-08シーズン 5月20日 東京 日産スタジアム 後半に入りスタジアムは表情をなくす。 インターバルから淡々とした雰囲気でゲームは始まり、そのままに90分を終える。試合の状況に合わせてスタンドが力を結集することもない。選手たちも力を発揮することはなく試合は終わる。選手たちは申し訳なさそうにうなだれてスタンド前にやってくるが、私たちは、そのようなパフォーマンスを求めてスタンドに来ているのではない。試合に求めているのは単なる勝ち負けではないし、もちろんお詫びではない。今年のトリコロールがリーグ戦を勝ち続ける実力までを兼ね備えていないことは多くのサポーターが自覚している。大量得点で勝利を重ねていても、それが続くと考えることは困難だった。だからこそ、今年のスタンドは試合内容や試合に臨む選手たちの姿勢を評価してきた。ところが残念ながら、今日の試合には見るべきものがあまりに乏しかった。それが試合後のブーイングに現れている。 「勝てた試合なのに。」 「なんだかなぁ。」 「自分たちで考えろ!!」 「2割くらいは自分で考えろよ!!」 この試合に来て良かった、と思える人が、どれだけいたことか。聞くまでもないが。 「勝手に負けてるんだもんな。」 「ガスが良いわけでもなんでもないんだよ。」 「あの展開で、な〜んで右に手を打たないんだろうな。」 「乾なんてずっと消えてたじゃんか。」 「そりゃそうだよ。大島とマイクに向かってロングボールが行くだけなんだから。」 「選手も疲れて脚が止まってるんじゃなくて、戦術的な問題で動けなくなってるんだもの。」 「ど〜しようもないよね。」 「それにしても、やってる選手もなんとかしろよな。」 前半はトリコロールの試合だった。 「惜しい!」 「なんで決められないんだよ。」 「そこで、そのへなちょこシュートかよぉ〜。」 「一応は枠内シュートだ。」 坂田の2度の決定機は力ないシュートで消える。決めさえすれば勝てる。そう誰もが思う前半の序盤戦の展開だ。いまや攻撃の要となっている小宮山は、見る者を驚かせる脅威のドリブルでスタンドを沸かせる。 「いいぞ日本代表!」 「素晴らしい!!」 「ほんとすげぇな、小宮山。」 この大卒ルーキーが、最も金を払うにふさわしいプロとしてのプレーを見せてくれる。 左サイドの攻撃がゲームを支配する。しかし、ガスは、徐々に、その対応策を作り上げていく。一方の右サイドは攻撃面では機能しない。今日の布陣は小宮山を前に出した変則のスリーバック。柏戦と同じ守備の布陣だ。サイドをワイドに攻撃してくる柏と同様に、リチェーリとノリオの2枚でサイド攻撃をしてくる右サイドを最終ラインで凌ごうと考えたのか、とにかくセンターバック2枚ではなく那須を加えた3人のストッパータイプの選手でガスの攻撃を跳ね返すことを早野監督は選択した。 「やっぱ、右は我慢だよなぁ。」 「那須に上がれって言ったって、ナビスコで上がれないのは実証済みだしな。」 「表面的には4バックのままだけれど、実際には3バックにシステムチェンジして右の攻撃を1枚減らしてるんだもんな。」 「とにかく、前半は失点しないで0−0で折り返せば良い。勝負に出るのは、右サイドを代えた後半からだ。」 失点もなく、決定機もあり、前半終了時は、後半の攻撃的なサッカーを楽しみに待つ気分となった。 「あ〜誰も交代しないね。」 ハーフタイムを終え、選手たちが出てくる。 「後半頭から代えてくると思ったんだけど。」 「途中から右サイドに乾を入れると思うな。」 「なんでハユマじゃないんだろう。」 「とりあえず、那須の右は我慢だろ。」 これまでの試合展開、そして左サイドからしか攻撃の糸口が掴めない現布陣においては、遅ればせながらの先制点は重要だ。目の前に大きな問題を抱えたチーム状態でありながら、ベンチは動かず、選手も動かず、そしてスタンドもゆったりとしたムードで後半を迎える。 「なんか、これってヤバくないか。」 「す〜っと後半に入り過ぎてる。」 「いつの間にか始まって、なんとなく試合が進んでる。」 先制点を獲るという強固な意志の感じられない「慎重な立ち上がり」で後半は進む。しかし、前半とは大きく違って小宮山が封じ込まれている。さらには、先手を打たれる。 「まずい、石川が出てきた。」 「これで、左サイドは押さえられちまうぞ。」 誰が監督であっても打つであろう手を、原監督は当たり前のごとく選択する。 「先に動きたかったな。」 「今からでも、すぐに右サイドは手を打った方が良い。」 そこですぐに早野監督が打った手は 「狩野かぁ。」 「これは、ますます守備が機能しなくなるぞ。」 右サイドの守備は吉田が奔走していた前半。今まではハユマが高い位置でチェクしたり、中に絞ってプレッシャーをかけたりもしていたわけだが、那須の位置が最終ラインにとどまったままということもあって、吉田は中盤から終盤の守備もケアすることになり前線からのプレッシングにいつも通り参加することができなかった。それによって、大島や坂田の守備も機能しなくなる悪循環に陥っていた。全体が統一した意思のもとで働かなければ、前線からのプレッシングは機能しない。守備面では「走らない」というよりも「走り方がわからない」という印象で60分を過ごしてきたトリコロール。 「どうすんのかなぁ。」 狩野への期待と不安が入り交じる中で、狩野のポジションを注目。 「狩野のポジションは中のようだ。」 「右じゃないのか。」 これによって、前半からより一層、大きなスペースが吉田の抜けた右側にできることなる。 ボールを奪う位置が「攻撃サッカー」の生命線だったはずだ。トリコロールの生命線は断たれ兼ねない展開だ。ボールを奪う位置は深く、河合から素早くグランダーのボールが前線に出ることはない。最終ラインから大島への山なりのボールが連続する。大島は見事なポストプレーで起点となるが、ゴールヘ一直線のダイレクトプレーで積み重ねてきたこれまでのトリコロールの魅力溢れる攻撃の迫力にはほど遠い。ゴールまでの距離は文字通り遠い。 「あ〜。」 「う〜ん。」 「いないのかよ。」 そんな声が口々に漏れるようになる。 「もう、右はいないものと思って捨ててくれよ!」 とはいっても、これまでの試合の積み重ねで身に付いてきたトリコロールの攻撃サッカーだ。山瀬が、河合が、中沢が、ボールをドリブルしながら右をチラっと見る。しかし、そこにはいるべき味方の姿はなく、広大なスペースが広がるだけなのだ。 次第に那須への風当たりが強くなる。特に福西に先制ゴールを決められてからは野次が激しくなる。 「行けよ!那須!!」 「那須!お前、どこ行ってんだ!!」 一方で、そんな那須を責めることができない者も多い。 「しょうがないだろ、那須に臨機応変なプレーを求めたって無理だって。」 「監督があのポジションに使ってるんだからしょうがない。」 「とにかく早くハユマを入れるか那須の前に誰か張らせるしかない。」 「まだ時間は十分あるんだから、ちゃんと試合を立て直そうよ。」 「やっぱ、那須は上がるなって言われてるのかなぁ。」 「右に手を打つまでは、右は捨てるしかないだろ。」 そこでマイクの投入。 「えっ、弟下げちゃうの?」 「これ、どうするんだよ。」 右サイドの中盤には誰もおらず、左サイドは複数の守備陣で徹底封じをされている。数的優位を作って崩すための重要な戦力を割いてツインタワーを選択。つまりは、後ろから放り込めよ、という早野監督からのメッセージだ。放り込むといっても比較的確率の高くなるサイドからではなく、確率の低い後ろからだ。 次の交代は乾。ただし退くのは坂田。 「えっ、坂田下げちゃうのかよ。」 「乾は右か?」 「でも、乾が入ってもスルーパスからゴールするタイプの選手がないぞ。」 乾は混乱のフィールドに狩野とともに埋もれたまま。 「これじゃ乾を入れた意味ないだろ。」 「いや、早野は乾のミドルシュートを買ってるんじゃないか。ダービーのあともドリブルの評価が低かったし。」 「ドリブルの評価が低かったっていったって、あのときは、周りがぜんぜん何もしなかったから一人でドリブルしてただけだろ。」 フィールド上は那須を筆頭に悩みが充満しているように見える。得点差はわずかに1点だというのに、ゴールを力づくで奪い取ろうという迫力が見えない。何か悩み遠慮しながら、時間だけが規則通りに刻まれていく。 もっと涼しい春に、大島は体力の限界で脚が止まるまで前線の守備をし、何度も急ターンでゴール前に殺到してきた。しかし、この試合で体力的な問題で脚を止めた選手がいたであろうか。迷い、悩み、その結果,余力を残したままで試合を終えたのではないだろうか。選手にとっては気の毒な采配だっただろう。けれども、これがプロの試合である以上は、結果の勝ち負けよりも大切なものがあるはずだ。だから、footballは万国共通でホームゲームを大切にする。 次の試合は浦和。 「今日みたいに引いて凌ごうなんて思ったら、こてんぱんにやられるぞ。」 「今は、ストロングポイントだけで押し切るしかないだろ。」 「ただ、それよりも、大事なのはジェフ戦だ。」 「ちゃんとホームで勝たないと。」 駅までの道のりで、語られたのは、どのように闘えばいいのか、そればかり。悩んでいる暇はないはずだ。 今日のポイント ● 迷いに迷った那須。終盤は攻撃参加するがカウンターを食らう。 ● 胸トラップからの素早いパスで組み立てた大島。 ● 前半にもぽっかりと中盤が場面があり、福西のゴールは必然。 ● たまに本気を出すワンチョペ。 ● 家本さんの脚を引っ張る副審。 今日の査定
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