malicia witness 2階の目線2007
J1リーグ 07-08シーズン

5月27日 浦和レッズ  埼玉スタジアム

ある人は言う。
「勝てる試合だった。」
また、ある人は言う。
「浦和に助けられた。」
日本唯一のビッグクラブ・浦和レッズに引分け。それは、苦しい今シーズンのトリコロールの現状からずれば上々の結果と言えよう。止まることを知らないゲーム展開は、今季初の「激戦」とも表現できる。見事な勝ち点1の獲得。いつもよりも狭い(しかしガスの試合よりは広いらしい)ビジターエリアでトリコロールのサポーターは、試合を終えた選手を讃えて拍手で迎える。河合だけは自らの両足で立つことができず、私たちの前に姿を見せることができない。ボロボロになるまで全力を尽くして、スタンドに感動を与えるゲームをしてくれたのはいつ以来だろう。今日、ここには勝ち負けを超えたプロフェッショナルのパフォーマンスととともに、スタンドとフィールドとの共感が存在している。そして、同時に課題も。

「暑い。」
「これは選手がもつかということも問題だが、それ以前に、俺たちがもつかという問題もある。」
トリコロールのサポーターは、狭いビジターエリアに閉じ込められて、直射日光を浴びている。赤いスタンドの中で、いつもより一層、トリコロールは輝きを増して見える。

慎重な展開で試合は始まる。

気温のせいもあって、序盤は低調な動き。特に浦和は、ボールだけを動かして、なかなか選手が動いてこない。トリコロールも、前からの守備は自重している。いつもよりもラインを下げてワシントンとポンテを迎え撃つ。全体にポジションが深い位置なので、コンパクトと言えばコンパクトだ。左サイドバックは守備的な那須。右サイドバックは、最近、的確なオーバーラップが目立たなくなりつつあるハユマ。ダブルボランチにしたために前線に人数は少ない。ボールを奪う位置も中盤から最終ラインにかけてだ。いつもの河合に加えて中盤の底を務める上野だが、彼の魅力の大きな展開のパスは鳴りを潜めている。といっても後ろに下げるパスは少ない。中盤でのショートパスとドリブルが目立つ。上野単独の問題というよりは,両サイドを始めとしてトップも浦和に押し込まれていることの影響で大きなパスの出しどころが見つからないのだろう。そのぶん、中央でのポストプレーを大島に任せて、坂田がサイドのスペースに頻繁に飛び出そうとする。

「もっと前からいけよ!」
「当れよ!!」
そんな声もコールの合間に飛ぶ。
「でもさぁ、今日は前から行くなって言われてるんじゃないか。」
「オレもそう思う。いい方法かどうかはわからないけれど、早野的には、選手はそうとう巧くやれてるんじゃないか。」
「早野は前に出てきていないし。」
「そうかなぁ。」
とにかく、今日の試合は、早野監督が、これまで成功を収めてきた前線からのプレッシングを試みる戦術を変更してきていることだけは間違えない。その指示はスタンドの私たちにまでは伝わってこないので、今は声援をおくるしかない。

「行け!那須!!」
「何やってんだ!!」
「いや出るな!!」
左サイドの突破を仕掛けてきた前半終了間際の浦和の攻撃。それまでの守備は那須が我慢に我慢を重ねて、ボランチもしくは山瀬か吉田が助太刀に入るやり方で数的不利を作らずに成功してきた(浦和が攻撃の枚数をかけてこなかったことも守り切れている一因だった)。しかしドリブルする山田への中途半端なアプローチをして小野に裏を取られワシントンのシュートにまで至った。
「ダメだ那須!色気を出して前から行く必要なんてない!!」
前半に那須のサイドが崩されたのはたったの一度。つまりここまでは浦和の仕掛けに、ほとんど乗ることもなく、安定した試合運びでスコアレス(ワシントンから浦和への中央突破のパスで崩されたことはなかったことにしたい)。
「早野的にはしてやったりの前半なんじゃないか。」
「かなり巧くやってると思うよ。」
「でも、これならばトリプルボランチで良いんじゃないか?」
「まぁ、この布陣でやるならば0−0は狙い通りでしょ。」
「問題は、このまま0−0で行ったときに、どこでワンボランチにしてマルケスを入れるか、その勇気があるかでしょ。」
「そのへんは難しいよなぁ。」

さて後半。試合の流れは劇的に変化する。

開始2分で坂田のシュート。さらには大島のヘッド。機先を制する。浦和の動きはますます遅く,ペースを握るのはトリコロール。自然と前へ出ることになったのか、ベンチからの指示なのかはわからないが、前線でボールを奪いにいくことも多くなる。

山瀬のボールは、予想外の弾道を描いてゴールに向かって飛んでくる。

ふわっとしたボールがネットを揺らすようには見えなかった。しかし、魔法のようにゴールマウスに吸い込まれていく。ゴールネットが揺れても、その目の前の出来事は半信半疑。ボールが緑の芝生に落ちたとき、その場所がゴールラインの内側であることを確認して驚きが喜びに劇的に変化する。激しく揺れるトリコロールのスタンド。隣の女性2名は抱き合っている。逆の男性は面識のない前列の男性を掴んでいる。それを下から見上げた。つまり、私は倒れていた。

「よし!!」
「行け!!!」
「おい、脚が止まっているのはウチじゃなくて浦和のディフェンダーだぞ!!」
「どんどん仕掛けていけ!!」
美しきボールゲームではなく激しく熱い肉弾戦を挑む。トリコロールも浦和も、理想のプレーができているわけではない。ポンテとワシントンは審判の判定にナーバスになっている。上野は味方のプレーにいらついている。ギリギリの精神状態の中での闘いだ。ここは怯むことなく勝負するしかない。

オジェックは、この局面を打開すべく選手交代を行なう。相馬を下げて、相馬の位置に阿部を移動。阿部の位置にはドリブルと展開力に優れた長谷部を配置。ワントップのワシントンの下にポンテ。長谷部と阿部が連携してサイドに起点を作る。逆に山田は那須の前の位置に、完全に張ってボールを待つ。縦に一気に突破するタイプの相馬を下げることで縦への脅威は弱まる。しかし、テクニックと状況判断に優れた選手のパス交換は手強い。しかも、オジェクは明確に攻撃方法を授けている。
「また来た。」
「そうだよなぁ、そうくるよなぁ。」
「さぁ那須、頑張れ!!」
阿部、長谷部、ポンテでボールをキープしトリコロールの守備陣をサイドに寄せる。逆サイドの山田をフォローする選手が手薄になると、的確なコントロールでスピーディーにサイドチェンジする。最終的な狙いは那須から崩すことだ。

その流れで与えた2つ目のフリーキック。そこから失点。

ところが、那須が、この時間帯から脅威の粘りを見せる。山田の突破を許さない。逆に山田の後ろのスペースを那須や上野や坂田が突いていく。オジェックの策は実らず1−1の引分け。どちらもゴール前のシーンを多く作ったが、追加点への壁は高かった。

この試合で勝ち点を得ることができたポイントは両チームにある。一つは早野采配。大切なジェフ戦を前にして、どうしても引分け以上の結果がほしく守備重点・攻撃はある程度は捨てる戦術を選んだ。那須の起用も守備面では成功。ダブルボランチもワシントンとポンテを封じた。

そして、もう一つは浦和側の問題。那須は山田との一対一を耐え切った。山田へサイドチェンジすることはオジェックの狙い通りだっただろう。だが75分以降の一対一の勝負は狙い通りだったのだろうか。もし、中盤の選手が山田のフォローに加わっていたら、那須のサイドは破綻していただろう。ポンテや小野が加わって連携していた時間帯は劣勢だった。だが、そのような連携による崩しは試合が進むにつれて目立たなくなっていく。誰が山田のフォローに行くべきかは多くの選択肢をもたない、というよりも明白だ。しかし、彼は動かなかった。そしてオジェックも彼を代えることができなかった。オジェクが切った交代のカードは、わずかに一枚。なぜ切らなかったのか。いや切れなかったのではないのか。

浦和レッズは日本で唯一のビッグクラブだ。ビッグクラブならではのサポーターやスポンサーからのプレッシャーがある。スター選手と外様監督が衝突した場合、多くはスター選手の勝ちとなる。スター選手を支持するサポーターやスポンサーからのプレッシャーは厳しい。残留の心配をしながら勝つことだけを求める中小クラブにおいては単純に勝つことが優先される。だが、優勝まで常に手が届く戦力を保持しているビッグクラブは、大多数のファンの意見を尊重していかなければならない。そこが難しいところだ。

多くのサポーターは勝ちきれないことにフラストレーションを溜めている。オジェックも同様だろう。オジェックは、昨年とは違うディフェンスラインの人数やツートップの採用など、適切な方法をシーズン序盤から探していた。結果、小野が弾き出された。しかし、小野はスタメン外しに反発。多くのメディアは小野の発言を大きく報じ、多くのサポーターは小野発言を支持。引分けの多いオジェックは浦和サポーターからの厳しい視線を浴びている。結局、小野はスタメンに復帰。

この試合の終盤で那須のサイドから崩そうとするならば選手起用には2つの選択肢が簡単に考えられる。一つは、フレッシュでドリブルに優れた永井を投入して山田と永井の連携で崩す方法。もう一つは、山田を昨年起用のトップ下のポジションに移動させ、山田のいたサイドのポジションにスピードのある岡野を起用する方法。この2つの方法のどちらかを選べば、いくら那須が頑張るといっても。持ちこたえることができる可能性は低くなる。しかし、オジェックはできなかった。なぜか。それには小野を交代させる必要があるからだ。小野は同点となるフリーキックを獲得する裏への飛び出しをはじめ、良いランニングを再三見せていた。だが、次第に運動量を失っていく。そうであっても今のオジェックに小野交代という選択肢は酷すぎる。スタンドが小野交代を許さないだろう。つまり、浦和サポーターによって私たちは助けてもらったともいえる。ビッグクラブのサポーターはときに采配の足かせとなる。浦和サポーターが悪いのではない。これはビッグクラブの宿命なのだ。

さて、そのような事情は別として、この日の早野監督の選手起用は、今日の勝ち点1獲得においては成功だったといえよう。だが、それが、新たなトリコロールの一歩を踏み出したかというと、そうとは言えまい。象徴的な那須のサイドバック。「得点を獲る」ための守備方法という立ち位置で考えれば、やはり前節同様に問題点が多すぎる。シュートが多いとはいえディフェンダーと競り合いながらではゴールの確率は下がる。また、守備においてもマッチアップの相手が山田一人だったから持ちこたえることができた幸運もある。もし次節、ジェフ戦で仮に水野(と走り込んでくる他の選手)を相手に同じことをやる自信があるのか。ジュビロ戦で太田を相手に同じことをやる自信があるのか。家長、本田、大久保・・・。そこには大きな不安を隠せない。だから、大切なホームのジェフ戦は、この浦和戦の結果を奇麗さっぱり忘れてリセットして、あらためて望む必要があるのだ。
「Nice gameではなかったけれどgood jobだったな。」
トリコロールが得たのは、アウエーでの勝ち点1だけにすぎない。


今日のポイント

● アドバンテージをとらず、両チームに公平に不利な判定をした扇谷さん。

● 阿部に吹き飛ばされ、靴脱げ、散々のマイク。
● コーナーキックでは戻る方法ばかりを気にしていた那須。
● 脚が止まった浦和。つまりSAVASは効かない。
● 美しかったマルケスが入ってからのカウンター。


今日の査定

石井和裕

シュートが多く、積極的で良い試合。ただし,シーズンを続けていくカタチ作りとしては何とも評価が難しい。

榎本2つのビッグプレー

400

頑張れ那須

200

孤立しても頑張る坂田

300

とにかくシュートの坂田

500

相馬の突破

200

マルケスのドリブルと嫌なクロス

200

大島の胸トラップ

100

前後に吉田

400
入るとい思わなかった山瀬のゴール
1200
3500

stan

小宮山出場停止を受けて満を持して裕介、ではなく那須。何故五輪代表候補に選ばれた本職を使わないのか。ハンデを背負っての勝ち点1はよくやったとも思うが実に勿体無い。

広大な山田の前のスペース

-500

耐え凌いだ前半

1000

榎本好セーブ

500

山瀬ゴラッソ

1000

前線のチェイス

300

ネネどフリーで失点

-500

負けてないと交代がまとも

200

でもちょっとずつ遅い

-200
マルケスやっぱり上手い
200
当たりに行って跳ね返されるマイク
-100
隼磨4枚目で次節那須右サイド決定か
-500
双方が不満に思っただろう扇谷主審
-200
勝ち点1
500
1700








とにかく暑い。


真っ赤なスタンドに青い帯。

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