| malicia witness 2階の目線2007 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| J1リーグ 07-08シーズン 6月20日 ガンバ大阪 三ツ沢球技場 試合前にタッチライン際に現れ水を飲む。立ち上がって叫ぶバックスタンドに向けて、頭上で手を叩く。それに反応するバックスタンド。試合が始まれば存在感十分のプレーぶり。全ての選手が引き締まる。試合を無失点で終えると、シャツを脱ぐ。露になったアンダーシャツには、出場機会に恵まれない選手達(外国人選手を含む)の名前が書かれていた。若干、フラストレーションの溜まる試合であったし、ホームでの無得点。だが、その姿を見て、バックスタンドから松田直樹のチャントが始まる。太鼓不要。手拍子と生声による力強い歌声がスタンド全体に徐々に広がっていく。 帰ってきた将軍。 日本屈指の肉体派ディフェンダー、松田直樹がフィールドに帰ってきた。どのチームもが手を焼いているバレーとマグノアウベスを完封。常に余裕を持って対応するフィジカルコンタクト。それは、松田直樹にしか披露できないものだった。長い目で見て松田の起用に是非を問う者ですら、試合中には声援を、試合後には賞賛をフィールドに放射するよりほかない納得のプレーぶり。彼は、超攻撃的なガンバ大阪を完封した。 トリコロールは得点を多く望める布陣ではない。非常に守備的だ。そして、出場機会を奪われていた選手複数が起用されている。西野監督は、いつもとは逆に播戸を先発に起用し、序盤にトリコロールの混乱を図った。それは、ほんの少し成果を見せそうではあったが、些細な混乱を起こしたに過ぎなかった。トリコロールには、慌てる者はいなかったのだ。 「まずい!」 「ヤバい!」 「やられた!!」 さすがに、播戸が哲也と一対一になったときは観念した。ペナルティエリア至近からの遠藤のフリーキッックには祈るしかなかった。最後の二川のシュートがゴールポストに当たったのは幸運以外に理由がない。それでも、ほとんどの時間帯の試合運びは肝を冷やすほどではなく、「守って守ってカウンター」の、かつての堅守の日産を思わせるほどだ。 ガンバの強さは確認できた。 中央の守備は堅い。油断すれば、遠藤が、明神がボールをかすめ取る。楔のパスはシジクレイと山口が押さえ込む。考えてはならない。考える前に瞬時の判断で攻撃の選択肢から適切な者をチョイスし、一気に隙をついてガンバゴールに向かわなければならない。しかし、それはできなかった。考えるひと呼吸がパスコースを塞ぎ、前を向くことを困難にする。 対するガンバの攻撃はスピーディーだ。ボールは止まらない。ワンタッチをした瞬間に、次のプレーは選択されている。そして、両サイドのオートマチズム。大外から追い抜きをかけるサイドバックやボランチ。そこに単純にパスが出る。スピードを緩めることなく、難無くトリコロールの両サイドは蹂躙されていく。だが、クロスの入るその先には、松田直樹と中澤佑二がいる。 後半になると、ガンバは播戸と安田を下げてマグノアウベスと家長を投入。結果的には助かったが、この西野采配は、週末のゲームも見据えての戦略的なものだろう。彼らは優勝を狙っている。 トリコロールは持ち味を出し切れなかった山瀬弟をマイクに交代。吉田が本来の二列目に下がる。これで、シジクレイの動きが止まる。大きなターゲットがゴール前にいるためにシジクレイがマークで張り付くことになる。これにより、 「またシジクレイが止めるのかよ!」 というシーンは激減。坂田や吉田が、やや緩いマークでボールを受け得るシーンが増える。そして、両サイドを使った攻撃もトリコロールが主導権を握る時間帯も。しかし、マイクの見せ場がない。 「早くマイクが何かやらないと意味ないぞ。」 「このまま何もしないと、そのうち『意外と使えない』とバレるぞ。」 そのあたりを察知したのか松田が、バウンドボールを一見無造作に(だが、実は丁寧に)ゴールエリアの境界線付近に蹴り込む。これは、マイクが高さを活かしてシジクレイに競り合いに行けというメッセージが込められたボールだ。これをヘディングしてもシュートが枠に行く可能性は低いルーズボールだが、ハッタリで高さを見せつけるにはもってこいの弾道だ。 「行け!マイク!!」 多くのサポーターは声を張り上げた。だが、マイクの両足の裏は落下地点から遥か遠くの芝生の上にぴったりと密着したままだった。 「行けよ!マイク!!」 「勝負しろ!!」 次第に、状況を見切ったシジクレイはマイクから離れて自由に守備をするようになり、トリコロール優勢の時間は終了。試合終了間際には、シジクレイがゴール前にまで出現して決定機を迎えるほどの押し込まれた戦況となる。 苦しい中で、このJリーグ随一の攻撃力を保持するガンバ大阪を相手に絶望的な苦しさを感じなかったのは、やはり最終ラインの強さだ。河合はバランスを崩すシーンも多く、かなり体力を消耗しているように見える。それでも最終ラインは「きっと守り切れる」という安心感が漂っている。 得点は難しい布陣だ。 坂田を下げて斉藤を入れる。早野監督からすれば、予定通りのゲームプランで、予定通りの選手交代だろう。だが、大島不在の穴を、これほどまでに大きく感じるとは、試合前には予想し得なかった。攻撃は吉田と山瀬のコンビネーションに頼るしかない。ちょっと小粒だ。 ディフェンスラインの層の厚さを他チームは羨むだろう。実際は、得点するための守備という観点で言えば右サイドは問題点が大きいし、ボランチも、このまま河合が活躍し続けることが可能かどうかの不安も大きい。それでも、今のところはサイドが崩れても失点はしていない。 アタッカー陣の層の薄さは心配事だ。だが、無い物ねだりをしても仕方ない。今は、このトリコロールの戦士達に、見る者を惹き付けるプレーを全力で披露してもらうしかない。そして、その力を十分に持っている。ガンバ大阪と比べれば、熟成度は安物の白ワインとスパートスカーナくらいに大きな差がある。それでも、私たちはスタジアムに脚を運ぶ。その価値を感じている。 最後に、マイクは、これまで大きな声援を受けてピッチに立ってきた。昨年から今年まで、サポーターが彼の何に声援をおくってきたのか、今一度、自分自身で考え直してみた方がよい。ユース時代からの向上心を信じて声援をおくってきたサポーターを裏切ってはならない。張り子の寅が通用する時間は長くはない。 今日のポイント ●中沢不在のナビスコを前に、今後の選手起用を監督が迷いそうな 松田の好プレー。 ●ファーサイドに飛ぶとターゲットがいないセットプレー。 ●円熟のダブルボランチ。 ●奪われまくったマイボールのスローイン。 ●松田のハンドよりもオフサイドが先だ、と、 みんなで叫び続けてみたが、やっぱり副審はちゃんと見ていた。 今日の査定
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