malicia witness 2階の目線2007
J1リーグ 07-08シーズン

8月26日 サンフレッチェ広島  日産スタジアム

満員の日産スタジアムに潜むトリコロールの天使は大きなパワーを人々に授ける。心の奥の自制心の鍵を、軽い気持ちで、そっと隠すのは、天使にとっては小さな悪戯にすぎないのだが、鍵のかからない小さな扉からは、勢いを留めることなくパッションが溢れ出して止まらなくなってしまうのだ。あのステージ優勝の神戸戦、そして、河合のヘッドが決まったチャンピオンシップ、その試合を契機に弾けるパッションの渦は、それまでのスタジアムとはまったく違った空気を創りだした。しばらくの間、日産スタジアムの手拍子と歓声は、まさにホームを感じさせるハイテンションのゲームを創り続けた。

しかし、最高潮は、その瞬間から思い出として風化し始める。その後、試合を重ねるごとにトリコロールの成績が凋落していくのと比例して、いつの間にか人々は心の奥の自制心の鍵を、再びトリコロールの天使に預けた。そして、なかなか鍵が空けられることはなかった。そんな日々が続き、観客動員にもかげりが見えてきた2007年夏「8.11」、練りに練った計画を元に準備し、その準備を大きく上回る盛大な祭りが満員のスタジアムで繰り広げられた横浜ダービーで、再び天使たちは一斉に鍵を空け、人々の心を自由へと導いた。そして今日、この日はダービーの次のホームゲーム。特にその熱狂は劣勢のゲーム終盤に再現される。私たちは、まだ心の自由の心地よさを忘れることができない。横浜ダービーをで味わった最高潮は、まだ身体の隅々に色濃く名残を残している。コーナーキックの連続ともなると、歌声と手拍子を天井に突き刺すように、闘いの意識をトランス状態に持ち上げる。2週間がたっても冷めることのない、こんなスタジアムを創りだしてくれたダービーという舞台が永遠に消えてしまうことは残念だが、それは自然の摂理に任せるしかないことだ。ただ、今、私たちがこのスタジアムを守り続けるために必要なのは、自由であることと勝ち続けることだ。

「うわっ!来た!!」
「またか!!」
繰り返される左サイドからの突破。それは、スピードによるものでも、カウンターで攻守の逆を取られたのでもなく、ごくごく自然なボール回しの中で完璧に崩された守備の崩壊だ。

「いい加減にしろ!!」
「何回繰り返すんだ!!」
始まりは、中沢と松田のミスキック2連発。中沢の疲れのせいか、統制の取れないラインコントロールに松田が苦労するうちに、ゴールを奪われたばかりか、ゲーム運びの自身すら根こそぎ強奪されかねない惨状に、スタンドからは悲鳴が上がる。フィールドの上でも選手同士が相談する。思うように行かずに首をかしげる。そして、また突破される。

序盤、相手合わせから始まった緩やかなサッカーは、中沢のミスで失ったゴールで我に帰ることもなく、前節と同じように不安の中で進む。誰もが、右足のインパクトの瞬間に身体がつられて動いた大島の見事なゴールで、試合の主導権を握りなおす。今や「大島」の名は、歓喜の絶叫のためにあると言っても過言ではない。

「まだ振り出しに戻ったばかりだ!」
「ここから一気に行け!!」
ところが、試合は、そうは簡単には進まない。劣勢を立て直し、一気に逆転へのギアチェンジを、その期待に包まれたスタジアムを再び悲鳴が襲う。同じパターンで左サイドを崩される。それを合図にするように、慎重な試合運びは守備重点。しかも、それは消極的であってトリコロールのサッカーではない。
「柏木のマークの受け渡しに手を焼いているように見えるなぁ。」
「なんで、弟が下がってきちゃうんだよ。」
「弟が下がらないで、中で縦を切って、小宮山がサイドを見なきゃダメなんじゃないか。」
「なんで、小宮山が絞ってきちゃうんだよ。」
「それは、中沢と松田のポジションにも問題があるからじゃないのか。」
プレーが切れるたびに、大量の疑問が噴出する。その疑問の答えが見えることもなく再び失点でリードを許す。

ハーフタイムに入ると、やりきれない表情での意見が交錯。

「弟のところにマルケスで勝負だ。」
「それはけっこうギャンブルじゃないか。」
「弟を外して那須を入れてダブルボランチにしたら良いんじゃないか。」
「それは、安定するだろうけれど、早野の選択しに、それはないだろう。」
「いや、相手に合わせて守ろうとするなんてしちゃだめだよ。だいたい、そんなこと関係なしに、自分たちのカタチをやり切ろうってサッカーをやってきたんだからさぁ。」
「なるほど、それはそうだよね。」
後半の頭に投入されたのは清水。吉田との交代だった。
「最終ラインで工夫なんてするよりも、前からプレッシャーをかけて、その前にボールを奪って攻めるしかないんだからさぁ。」
この交代で、やるべきことははっきりと見えた。

後半は、見違えるように攻撃が活性化される。

まず、スタンドに火をつけるのは清水の守備・・・ではなくてドリブル突破。これを戸田が倒す。その瞬間に2階席はうわっと立ち上がりブーイングと抗議の野次の嵐。さぁ、ここから反撃だ。そして試合展開は狙い通りだ。高い位置からの守備が功を奏してボールを奪う。広島の攻撃のスピードを殺す。ゲームの主導権を握り、いよいよ反撃だ。

しかし、試合の流れは一本のパスで変わる。

またしても左サイドをしっかりとスルーパスで崩される。この瞬間から主導権は広島の手中に落ちる。試合は小さなキッカケで右にも左にも動く生き物だ。続く劣勢。しかし、スタンドのテンションは上がり続ける。セットプレーでの歌声と手拍子の音量は、ダービーが生み出した産物。繰り返される攻撃を跳ね返され続けて60分を回りマルケスを投入。
「リスクは高いけどなぁ。」
「この時間になったら攻め切るしかない。守りは、ある程度、目をつぶらなきゃ。」
「とにかく攻め切るしかないぞ!!」
残り時間は少なくなっていく。マルケスの投入で、両サイドは縦への突破を積極的にしかける。ゴール前に迫るトリコロール。広島守備陣の奮闘もあって、ゴールを割ることが出来ない。しかし、広島は脚が止まり始めている。

突然の同点ゴール。

ハユマが縦に勝負するのではなく、ドリブルで中に入ってくる。しかし、それは斜め前の角度でゴールに向かってドリブルをするのではなく、ゴールラインと平行に進むドリブル。
「そっちじゃないだろっ!」
と言う瞬間にハユマの左脚はボールを叩き、ニアサイドのギリギリを打ち破って同点ゴールをゲットする。嬉しさよりも驚きが先行し、叫びの直後に固まる。そして、驚きを喜びが超特急で追い抜かし、飛び跳ねながら仲間と手のひらを合わせる。
「逆転しろ!!」
アウエーでの試合であり、勝ち点計算上では残留も見据える広島は引分けで十分。トリコロールはホームで勝つことが目標だ。この試合は勝たなければならない。そして、同点後の流れでいえば、勝てる試合になっていた。

残念ながら、マイクの投入で、攻撃の流れは崩壊し、勝ち点は1を獲得するにとどまってしまった。「勝てる試合を取りこぼした」と考える人は、マイクの投入を悔やんだ。「よく追いついて勝ち点1をゲットした」と考える人は、ハユマのゴールで追いつくまでの守備の崩壊を重く受け止めている。どちらが正しいとも言えない。ただ、一つ共通している理解は、「中沢の疲れは深刻であり、松田の怪我はチーム作りを難しくする」ということだ。そして、もう一つ・・・。

「柏木が動き過ぎてコンビネーションが合わなくて攻撃のカタチが創れなかったって五輪代表はダメだろ。柏木の動きと噛み合ないくらい、みんな動いていないってことなんじゃないか?」


今日のポイント

● ぽろぽろ落として危うくハンドだった哲也。

● ウエズレイがいたほうが守りやすかった。
● 中盤の守備に重宝する清水。
● 見事だった大島の数々のポストプレー。


今日の査定
石井和裕

勝てる勢いを削いでしまったのはもったいなかった。

見事だった広島の崩し

400

ポストから必要以上に蹴り込んだ大島ゴール

600

ごめん!入ると思わなかったハユマのゴール

700

巧い!と声が出てしまう大島のボールの受け方

300

試合を立て直した清水の動き

100

セットプレーでボリュームアップの手拍子

300

柏木

500
止めるなよ木寺 
200
3100

stan

この結果は厳しい。相手の出方が読めなかったか後手に廻った前半が悔やまれる。前へ向かう強い意志を持て。

吉田と山瀬弟

-200

大島の懐の深さ

300

大島2桁ゴール到達

500

代表組精細無し

-200

2失点

-400

マルケスは上手い

200

でも連携が…

-100
後半の隼磨の積極性
500
此方も虚を突かれた同点ゴール
500
3人目の交代でどん詰まり
-200
20000人に届かず
-100
イエロー無し
100
一貫してはいた穴沢主審
100
勝ち点1
500
1500







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