| malicia witness 2階の目線2007 | |||||||||||||||||||
| J1リーグ 07-08シーズン 10月06日 東京 味の素スタジアム 優勝も降格もないリーグ戦の終盤。少しでも順位が上の方が良いのは当然で、得点が獲れないチーム状況を改善して連敗を止めたいのももちろんだ。 「でも、今日のゲームで大切なのは怪我と退場を出さないことだね。それがテーマ。」 「勝ち負けはどうでもいいから、まず、良い形でゴールを奪えることが重要。本番は水曜日だから。」 味スタの、芝生は相変わらず緩く切り返しは難しいコンディション。だが、女子ワールドカップが行なわれていた上海虹口球技場と比べれば遥かにマシだ。それでも、プレーが慎重になったのか、ゲームの動きは緩慢になる。 「今日はトヨタデーだから足下が悪いんじゃないのか。」 「なんか、ずっとペースカーが入ってるみたいな試合じゃん。」 先週にトヨタ系の富士スピードウェーで開催されて散々なオペレーションが話題になった豪雨のF1日本グランプリを思わせる序盤の展開。見所は少なく、チャンスもない。ガスも福西がゴール前で決定的なシュートを放つが、その他はノーチャンス。いや、チャンスはあったのだが、リチェーリのプレーが、あまりに雑で精度を欠いていたために、ゴール裏から見る限りでは失点の脅威を感じることがなかったのだ。 「とりあえず35番に渡しとけ。安全だから。」 「あれで外人ってのが凄いな。」 後半開始早々にゴールに向けて山瀬兄がドリブル。左サイドに2枚が走り込んで来るのが見える。 「サイド!」 「サイドだ!!」 叫ぶ私たちが考えていたよりも、ずっとレベルの高い位置に、絶妙のパスが出る。サイドに渡してクロスを入れる場所ではなく、すぐにシュートを放てる絶好のポイントだ。 「撃て!!」 「シュート!」 「撃て!!」 ボールはゴールに向かって飛んできて、ゴールネットに当たって、ストンと落ちる。 「すげぇ!」 「ウォー!!」 山瀬弟のゴールは、予想を超えたプレーの連続で生まれ、喜びを、いつものゴール以上に増幅させる。 「すっごいわ。」 この一撃で、トリコロールはペースを握る。 前からの守備が機能しはじめペースを握る。 「よし!行け。」 「押さえろ!」 坂田と大島が守備の最初の防波堤となり、ガスの攻撃を押さえる。前からボールを奪うことが出来れば、ゴールに向かう距離は短い。そして、攻撃に携わる人数も多い。だから、チャンスは増える。かけにかけた人数で、ゴールに向かって圧力をかける。 中沢のオーバーヘッドシュート。 「うあ!!」 大歓声が上がる。だが、一瞬の後に笑みが漏れる。 「いや、あり得ないだろう。」 「そりゃ、入ったら大変だよ。」 「あんなの入ったら、この後で、どんな罰が当たるかわからない。」 入った方が嬉しいけれど、みんなが、思わず笑ってしまうのは、中沢の真面目で正統派のプレーブルとのギャップだろうか。堅実なプレーに、派手なアクションが加わっては、出来過ぎに思えてしまうのだ。 平山の登場。それはスタンドに嫌悪感を弾けさせる。 中沢とは対照的に、何もしなくても嫌な感じを与えてしまうのが平山だ。選手のキャラクターとは不思議なものだ。偉大な選手に贈られるブーイングとはちょっと違ったブーイングが起きる。ガスは、平山を入れることでゲームの組み立てを変えようとしている。しかしトリコロールは、それに構わずに追加点が獲れると思えた。 何度目のチャンスだっただろう。山瀬が右へコンパクトな振りで好パスを渡し、ハユマは逆サイドへクロス。大島は余裕を持ってこのボールを受ける。 「撃て!」 「シュート!!」 叫ぶ私たちの期待に反して大島は胸トラップ。ボールを奪われてしまう。 「なんで撃たないんだよ!」 「ヘッドだろ!!」 ガックリと来たのはスタンドだけではなくて、ピッチ上の選手たちも同じようだ。カウンターアタックを食うが、守備に戻る足取りが重い。あっという間にリチェーリにサイドを破られて、送り込んだクロスを平山に決められる。 「リチェーリから平山って、よりによってってやつじゃないか。」 「なんで、平山なんかに、やられちゃうのかなぁ。」 対照的に、ガスのゴール裏は東京ブギウギのリズムに乗せて大きく揺れる。 ガスのサポーターたちは、些細な判定にもナーバスに反応をする。レフリーが福西のドリブルコースを塞ぎ、焦った福西がトリコロールのユニフォームを掴みファール。 「ナイス・ディフェンス!!」 さすがに、その身のこなしぶりはガスサポーターにとっては腹立たしいシーンだっただろうが、それ以外には、さしたる判定の問題があるように見えない。だが、梶山と馬場を欠き、定まらないセンターラインの戦力で闘い続けたガスのサポーターたちにとっては、一つ一つの判定も、自らの尊厳に係る大きな問題だったようだ。 「4枚ならば、直接行けるぞ。」 「来た!!」 山瀬のフリーキックは惜しくもゴールキーパーによって阻まれる。これが、最後の好機だった。 試合の結末は、あまりに早かった。ここ数試合、相手チームの選手の頭の上を越すチップキックを繰り出したり、ゴールキーパーらしからぬ余裕と遊び心を見せてプレーしていた哲也が、通常では考えられないような(しかし、いつかはやりそうだった)軽率なミスをして失点。 「また、よりによって石川かよ。」 「平山の次は石川って、どういうことなんだよ。」 逆転という結果を招く。 「まぁ、いつかはやるとは思ってたけれどね。」 「最近、調子に乗り過ぎてたからな、あいつ。」 試合が終わり、うつむいたままで選手たちはゴール裏へやってくる。沈黙したゴール裏の中で、極々少数が、選手に声をかける。 「次が勝負だぞ!」 「哲也、次は同じことをするなよ!!」 「本番は水曜日だぞ!!」 だが、ゴール裏は最大級のブーイング。視線をスタンドに向けぬままに、多くの選手たちはピッチから去っていく。 「大島のアレがなぁ。」 「ま、でも、いつかやりそうだったミスも、今日出たし、本番ではしっかりとやってくれるんじゃないか。」 「優勝するわけでも降格するわけでもないのだから、今日は、それほど悪い結果だとは思わないよ。」 「両サイドも半分ずつ休ませて温存したし、良い采配だったよ。ボロボロになって負けたのだったらヤバいけれど、今日は、やることやって、うまく調整しながらの結果だからOKでしょ。」 「贅沢いえば、リードしたままで、中沢に替えて松田を使って、中沢を休ませたかったよね。」 見据えるのは水曜日の決戦。今日は負けたとはいえ、タイトル獲得への小さな一歩を踏み出したはずだ。まさか、同じ過ちを犯すほど、選手たちは愚かではない。 今日のポイント ● ハユマと小宮山を温存。 ● ボールのないところで長い距離を走ってチャンスを生んだ鈴木規夫。 ● 清水と那須のナビスコ先発はないということか。 ● 哲也は試合後に松永から半殺しか。 ● 「俺たちが横浜。連敗を誰にも止められない。」 今日の査定
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