malicia witness 2階の目線2007
Jリーグヤマザキナビスコカップ 07-08シーズン

10月13日 川崎フロンターレ  等々力陸上競技場

「入れろ!」
快速を飛ばして右サイドを駆け抜け、入れるクロスは低くて早いボール。走り込んでくる大島が軽く合わせてゴールネットを揺らす。試合開始早々に決まったゴールは、選手たちとサポーターを大いに勇気づける。

バイクの故障で先制点の直後にスタジアム入りしたK林さんは、激しいタックルに選手が倒れないのを見て、こう聞いた。
「あれでホイッスルが鳴らないってことは、今日は岡田?」

前線からの素早いプレッシングが蘇ることで、ゴールまでの距離は近くなる。攻撃にかける人数も多い。縦に早い攻撃がフロンターレゴールを脅かす。
「よし、このままやりきれ。」
「どんどん撃っていけ!」
主導権を握り、ゴールを得て、必要なのは、あと1つのゴールのみ。今、目の前で行なわれている、このやり方は熟成済みの戦術だ。それをやり通せば良い。必ずゴールを奪うことが出来るはずだ。

ただし、1カ所だけ違うところがあったのだ。

1stレグと同様に、この日も、那須、中沢、松田を併用する。ただし、那須のポジションは右でスタート。左には小宮山を起用している。フロンターレの攻撃力を警戒して3枚のディフェンダーで中央を固める作戦で試合に入っている。何が何でも失点をせずに、2点のビハインドを跳ね返そうという狙いだろう。そして、わずか7分で1点をゲット。早野監督の狙い通りの展開だ。

ところが、またしても、その戦術が裏目に出る。

発表では4バックとなっているが、実際には左に小宮山を高い位置において、中央を那須、松田、中沢で固める変則の3バックだ。ただ、変則の3バッルといっても、中央だけを見れば、トルシエ時代の3バックのように那須の位置が中に絞られている。わかりやすく言えば、右ウイングが不在のフラット3のようになっている。思い出してみれば、1stレグでも、左に入った那須の、その左の広大なスペースを突いてフロンターレは攻撃を仕掛けてきた。左右が逆となったとはいえ、フロンターレの立場になれば、同じ方法で攻撃を仕掛ければチャンスが生まれるのは明白なことだ。そして、1stレグよりも那須の位置が低い位置のままの時間が多かったため、フロンターレは再三再四、那須の外の誰もいないスペースにボールを入れて来ることになる。あっという間に、そこから、同じようなパターンで攻め込まれ3つの失点をする。特に3点目は、右の大外に走り込んでくる選手を誰も認識していなかったことが問題。何故、右サイドをやすやすと突破されるポジション取りのままで試合を進めたのか、それは、誰に聞いてもわからない。監督が続けるように指示をしたのか、監督の指示がないから、選手は特に修正をしなかったのか。答えを知りたければ、監督に直接聞きに行くしかない。

スタンドは、何度もオフサイドを叫ぶが、オフサイドラインが見えるわけがない。特に皆が騒いだ2失点目は、再生されるビデオに、最も後ろにポジションを取っていたと思われる小宮山が映っていない。問題点の解決をすることもなく、切り替えて攻めに出ることもなく、ただ失点を嘆くことは愚かだ。オフサイドであってもオフサイドでなくても、最後までボールを追えば結果は少しは違った可能性を秘めている。だが、現実は、それを、ピッチ上の選手もスタンドのサポーターの多くも放棄したのだから。
「オフサイドだろ!」
「バカ副審!」
多くのサポーターが極めて薄い根拠を理由に叫ぶ。
「セルフジャッッジしてんじゃぁねぇ!」
「最後までプレーしろ!」
「審判のせいにしだして勝てた試合なんてねぇだろ!」
危うく口論になりそうなところをギリギリで自重する。
オフサイドだけでない。ボディコンタクトについても同じだ。岡田主審の判定はバランス感覚に優れていて、どちらのコンタクトに対しても「緩い」。だから公平だ。
「ガタガタ言ってんじゃんぇよ。だいたい岡田と何年付合ってんだ!?」
最初からわかり切ったことではないか。

まったく記憶にないのだが坂田が1点を返す。
「さぁ行け!」
「まだやれるぞ!」
2点を奪えばアウエーゴールで上回り決勝への進出の権利を得る。3失点をしたものの、これで試合は振り出しに戻った。ただ、ゴールを奪えば良いだけのことだ。

ハーフタイムにピッチ上にはハユマがいないことがわかる。

「ハユマいないぞ。ってことは出てくるね。」
「これで、那須を下げて4バックにして両サイドを攻撃的にするだろう。」
「まさか、那須を左に回して小宮山を引っ込めるなんてことはないよね。」
「今日は、ないんじゃないか。」
そんな会話をしていると、第4の審判の穴沢さん(J1が開催されていないため豪華な審判団だった)が「13」を表示する。
「え〜。」
「マジかよ?」
「弱気だなぁ。そんなにジュニーニョが怖いのかなぁ。」
「どうしても3バックじゃないと守れないっていうのかよ。」
「リーグのときは4バックで勝ったのに、なんでビビってんだよ。」
「そんなにリーグで連敗したことで自信がなくなっちゃうのかなぁ。」
「まぁ、しょうがねぇ。やってもらうしかない。」
「采配が間違ってるかどうかは、結果見てから言おうじゃないか。」

後半開始早々に、那須から見事なクロスが入りコーナーキックを得る。
「いいぞ那須!!」
「良いプレーだ!!」
守備を固める役の那須が果敢に攻撃に参加してチャンスを創りだす。しかし、その前で、本来は起点となるべき山瀬弟がボールに絡むことが出来なく、すぐに交代。
「ってことは、最初からマルケスを入れるつもりで那須を左に回したってことだね。」
「左でプレーするマルケスの後ろを那須にケアさせるのだろう。」
「であれば、まぁ、わからないこともない布陣だ。」

山瀬が、清水が、ハユマが惜しいシュートを放ちゴールに迫る。

何が何でもゴールネットを2回揺らさなければならないトリコロールは1stレグよりもかなり早くマイクを投入する。しかし、岡田主審の判定基準に慣れずマイクは苦戦。身体を寄せられると諦めが早く、なかなかシュートを放てない。やっと慣れてきたマイクが競り合いに負けなくなってくるが、シュートが撃てない。それは、全てをマイクと大島にお任せしているからだ。山瀬や坂田は、サイドからクロスを入れることと、こぼれ玉を狙うことに関心を示すが、ディフェンスラインの位置を揺さぶることには、まったく関心がないように思える。ディフェンスラインの裏に抜ける気配は皆無。だから、フロンターレのディフェンダー達は、単調なクロスにしっかりと備えることが出来る。これでは、いくら長身でも一発でゴールを奪うことは困難だ。

そんな焦りの中で、哲也が飛び出してくる。
「出るな!」
「無理だ!!」
一瞬にして、ワンバウンドが頭上を越えるタイミングなのがわかる。だが、哲也は前へ走ってくる。そして、高く弾んだボールは頭上を越えてゴールヘ吸い込まれていく、ように見えたが、それを防ぐために哲也が目一杯に腕を伸ばして止める。
「やっちまった。」
「馬鹿野郎、またか。」
失点にはならなかったものの、ペナルティエリア外の故意のハンドなので当然のレッドカード。言葉を失い天を仰ぐ。
「交代枠がないじゃないか。」
「どうするんだ。誰がやるんだ。」
「那須じゃないか?」
予想に反して、黄色いウエアを手にしたのは松田。自ら名乗り出たのだろうか。動揺するトリコロールは、フリーキックの壁の両外にフロンターレの選手がいるのにも係らずノーマーク。残念ながら、遠く反対側のゾーンで守る選手たちに、それを指摘する私たちの声は届かない。幸い、フロンターレのシュートミスに救われたが、この浮き足立った守備が、試合にとどめを刺さしてもおかしくなかった。

この後は、クロスを入れるが跳ね返されることの繰り返し。松田はフットサルの全員攻撃のようなポジションでボールを配給する。フロンターレのサポーターにとっては楽しい松田のプレー見学だっただろう。だが、私たちにとっては辛い時間となった。

試合が終わり、沸き立つスタンドに囲まれながらビジター席は沈黙の時を過ごす。スタジアムナビゲーターが「決勝戦の対戦相手はガンバ大阪になりました!」と叫んだとき、頬を涙が伝って落ちた。


今日のポイント

●弱気な采配に振り回された2試合。
●下がり過ぎて早野監督から修正指示を受けた大島。
●中盤は、もっとボールを引き出す動きが必要。
●立ち上がりの10分間の攻撃と守備を続ければゴールは近かった。
●ハンドにボールは当たったが、
 ハンドリングをしていないので反則にはならない。






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