malicia witness 2階の目線2005
J1リーグ 05-06シーズン

4月10日 ヴィッセル神戸  日産スタジアム

試合開始早々に左サイドでボールをドゥトラが持つと、その外を猛然と河合が追い抜かして行く。
「チョン!」
「河合!!!」
思わず声が飛ぶ。前節の良いイメージを誰もが持ってスタジアムへやって来ている。だが、少数ながら、このスタジアムには、バンコクの猛暑を経験して、選手の疲労を肌感覚で心配するものも含まれている。温かな日差しに強い風。神戸戦といえば、昨年のアウエーで魅せたジョンファンのビューティフルゴールと、ホームでのくだらない自滅。心地よさと不安が同居する90分と3分が、日曜日の昼下がりに始まった。

Jリーグの選手や監督達はJリーグの試合をテレビで見ないのだろうか。

西村主審は、前節には浦和のアルパイを退場させている。あのときの決め手は警告判定の後にペットボトルを蹴ったこと。今回の三浦アツは、警告判定の後にボールを蹴ったこと。西村主審は、はっきりとした笛を吹くレフリーだ。Jリーグでは安易に反則が起き、両者が反則を掛け合うと、どちらが悪いか解らないために判断が付かずに笛を吹かずに流したままにする場合が多い。じつは日本のサッカースタイルの特徴の一つに「中盤でのつまらない反則が多い」ということがある。フランスワールドカップではデータがそれを顕著に表していた。それは、Jリーグでの、あいまいな判定の傾向が影響を及ぼしているから起きている現象ともいえる。たまに、Jリーグで、ハッキリとした審判が笛を吹いたからといって戸惑っていては、この悪い特徴は改善されない。そして、西村主審が審判を欺くようなプレー、倒れ方には厳しく、笛を吹かないことは、前節も今節も同じ。一貫していた。序盤は戸惑いをみせた奥もドゥトラも、途中からは順応した。しかし神戸の松永監督は最後までクレームをつけていた。

鮮やかな芸術は天使を超えた。

ドゥトラがボールを奪い、逆サイドに走るジョンファンへ素早くロングパス。ボールを受けたジョンファンは、見事にコントロールして右45度でディフェンダーを翻弄。左脚で撃つコースが開けた。しかし、ゴールとジョンファンの間には、目の前のディフェンダーに加えて2名のディフェンダーとGKがいる。しかし、左脚で放ったシュートは、その4人の障害を気にも留めずに、ゴール左上隅に正確にコントロールされて突き刺さった。
「なんじゃぁ〜!?」
「マジか?」
「すっごい!!」
「きまったよぉ!!」
喜びと驚きが同居し、飛び跳ねながら驚きを削ぎ落としていく。かつて、あのJリーグ初代得点王、ラモン・アンヘル・ディアスは、カシマスタジアムでの試合開始早々に、深い切り返しで目の前のディフェンダーを無力化し、もう一人のディフェンダーとGkの横を巻き込むようにゴールを奪い取った。その時の美しさを上回る芸術弾が、ついにジョンファンから放たれたのだ。

とはいうものの、試合は劣勢。再三、ピンチを招く。大島と大橋にボールが収まらないので中央を避けてサイドに逃げた攻めが多くなる。すると、当然、待ち構えたディフェンスの網にかかる。たまらずドゥトラが中央に移動してボールを受けて神戸の選手を引き付けてサイドのスペースを創り出す。

後半にはいると、清水の投入で前線に動きが出て、幾分は攻めのカタチができてくる。ジョンファンの不運なバウンドでシュートをミスした決定的場面。惜しくもオフサイド判定だった完全に崩した場面。イイ時間だった。だが、その後は、再び劣勢に。
「さっきから数的優位をまったく感じさせない試合展開だな。」

神戸はホルヴィと和多田を投入。
「さぁ、ここからが厳しい勝負だ。」
「しっかり勝負しろ。」
時間が進むにつれて、しっくりこないフィールド上の選手達に声援が飛ぶ。今季の試合では、最も手拍子もコールもまとまって一体感のあるスタンドが作り出せていたサポートの状態だったが、危険な時間の近づきを予感して声援や野次が増える。

「えっ、まだ5分、ロスタイムを足せば7分以上もあるの?」

ズルズル下がる。ロングボールを入れられる。中盤で厳しくプレッシャーをかけて大きな展開を防がなければならないのだが、まったく後手を踏んでいる。
「原は、何処にいるんだよ。」
「那須は下がりすぎ!!」
ガックリと動きが落ちて、神戸の単調な攻めを跳ね返すだけのプレーが続く。そこで、時計を見たときにこぼれた言葉がそれだ。もう、ロスタイム突入前のような、いっぱいいっぱいのボーダーラインでの守りに選手達が見える。
「このままで7分も持ちこたえるのかよ。」
「ヤバイだろ。」
「しっかりプレッシャーをかけろ!!」

失点の予感は、これまで12年間の記憶と目の前の映像のマッチングで生まれる。

きっと、どこかで見たことがあるデジャブーなのだ。ロスタイム終了が近づく、あの時間に栗原は肘打ち。ワザとしたものではないのかもしれない。だが、コーナーに追い込んで時間を使わせればいい場面で、あの守り方は、あまりに工夫がなかった。そして、播戸の背も低かった。
神戸は、残り時間が少なくなればロングボールでの勝負。和多田の爆発力での勝負。播戸の一発。もしくは播戸はセットプレ獲得を狙って細工してくる。解っていながら、その全てを許す、寛容な試合運びを、トリコロールは自ら選んだ。
「まずい!」
「マーク確認しろ!!」
「絶対に競り負けるな!!」
声援が飛び、ゴール裏も、多くの記憶とのマッチングを一瞬で済ませ、大切な一瞬が来ることを教えるかのようなコールを巻き起こす。

だが、あまりに情けない幕切れだった。松田はジャンプすることもなく目の前でヘディングシュートを眺め、シュートがネットに刺さると、松田を含めた何人かのトリコロールの選手達は緑の芝に背中を着けた。
「まだ、終わっていない!」
「まだ、時間はある!!」
「急げ!!」
スタンドからの必死の声は、当然のこと耳に入らず、誰もボールを持ってセンターサークルへ走ろうとする者はいなかった。



今日のポイント

●シュートは素晴らしかったが、
 競り合いへの恐怖とトラップミスが目立ったジョンファン。
●開幕時の不振が嘘のような、運動量いっぱいのドゥトラ。
●前節に続いてエノテツとディフェンスラインの連携は悪い。
●後半は中盤の守備も攻撃も任されてしまった清水と奥。
●これまでの試合でもコーナーでのキープしかやらないから、

 パスを回してキープが必要なときにできない。
●試合前の練習で、子供でも捕れるほど緩いスピードの正面のボールを、

 少なくとも4度はキャッチできずにこぼした榎本達也。
 これほどの気の緩みは、ベンチ入りするだけでも悪影響があるので、
 即刻、メンバーから外すべき。


今日の査定

石井和裕
みっともないし情けない。こんな酷い試合運びは久々だ。
美しいドゥトラのサイドチェンジ
300
ドゥトラの変幻自在の足技
300
ジョンファンの芸術弾
1600
三浦アツの素晴らしい退場
500
誰が三浦アツか解りにくいユニフォーム
100
スローモーすぎて、あっさり河合に獲られたカズのまたぎフェイント
200
今年もかよ最後に栗原
-500
そんなの見たくないからフィールドから姿を消してくれ榎本達也
-800
それだから最終予選は怖くて使えないんだよ松田
-1000
合  計
700

今野隆之
弛緩した空気が漂う危険な一戦は、やはりそのまま終わってはくれなかった。サッカーの神様なんて信じないが、これでは罰の一つも与えたくなるだろう。体が重いなら重いなりの、試合の進め方があるはずだ。
安の国内復活弾
1000
課題は課題として切り替えろ
500
合  計
1500



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